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古代への情熱/シュリーマン

 自伝だと思って読むと肩透かしを食らうので注意。
 シュリーマン自身が書いた「自伝」は、生い立ちから商人として成功し、いよいよこれから研究・発掘に専念するぞ、というところまでで、それ以後の記述は編者が地の文を書いて要所にシュリーマンの文章(日記とか)を引用するスタイルなので、総合すると「自伝」というよりは「伝記」だ。
 これを知らずに読んだ私は(無知ですみません)、ひどくガッカリした。

 いやね、第1章の純然たる自伝部分がなかなか生き生きとした記述で、面白いのだ。初恋の幼馴染との結婚を思い描いて商人として成功をつかみ、求婚の手紙を出したらその数日前に彼女は結婚していたとか、数か国語をマスターするための勉強法とか、商人として成功するまでのドラマチックな幸運(商品を預けた倉庫のある街が大火に巻き込まれて落胆していたら、実はシュリーマンの商品は倉庫に入りきらなかったので数メートル離れた仮倉庫に置いてあって、風向きの関係で無事だった)といったあたりは、なかなかよいのだ。
 ところが第2章の冒頭「とうとう生涯の夢を実現できる時機が来た」はカギカッコでくくられているし、地の文では「ハインリヒ・シュリーマンがここを最初の発掘地と決めたいきさつ…は、その著書『イタケー、ペロポネーソス、そしてトロイヤ』の中に次のように報告されている」と来るのだ。第1章の出来がよいだけにガッカリ度は高まる(私が読んだのは新潮文庫版)。
 編者が事情を整理しながら記述を進めるので、シュリーマンの行動が容易に理解できるのも確かだし、後記で触れているシュリーマンの発掘方法への異論も理解しやすい(本人の自画自賛の記述に終始していないから)。でも、記述は平板な印象を受ける。本人ならではの昂揚とか落胆といった感情の起伏が欲しいと思った。それが自伝の醍醐味の一つであろうし、それを期待して読み始めたのだから。

ガッカリ度:★★★★★
(いや、最初から伝記だと思って読めばよかったのだろうけど)
おススメ度:★★★
(学者の世界の固定観念を打破した爽快な話で楽しめるんじゃないかなあ。本来ならば)

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