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民俗学の旅/宮本常一

 庶民の生活を描く筆致の確かさは、彼の代表作『忘れられた日本人』に通じるものがあり、宮本家の先祖、祖父母、両親について述べている冒頭辺りはとても面白い。

 反面、成人後の宮本常一自身についての記述は、事務的というか、艶がないと思う。たぶん、自分語りにはあまり興味がないのだろう。自分について語るより、民俗学発展史を伝えておきたいという欲求が強いのだろうと感じられた。その手の民俗学史に関するような記述にはあまり関心を持てなかったから、私には味気なく感じたのだと分析しておく。
 そうはいっても、渋沢敬三に関する記述は興味深かった。日銀総裁や大蔵大臣を務める公人、財界人としての渋沢ではなく、私人、研究者、パトロンとしての渋沢の人間味が書かれている。なんというか、公職に就く以外の方法で世の中に貢献できる道筋があれば、そっちを選びたかった人なんだろうな。

【メモ1】大正12年に宮本が郷土(周防大島)から大阪へ旅立つに当たって、父親から言われたこと。
(1)汽車へ乗ったら窓から外をよく見よ(詳細略)
(2)新しく訪ねていったところはかならず高いところへ上ってみよ(詳細略)
(3)金があったら、その土地の名物や料理は食べておくのがよい。その土地の暮らしの高さがわかるものだ。
(4)時間のゆとりがあったら、できるだけ歩いてみることだ。いろいろのことを教えられる。
(5)金というものはもうけるのはそんなにむずかしくない。しかし使うのがむずかしい。それだけは忘れないように。
(6)私はおまえを思うように勉強させてやることができない。だからおまえには何も注文しない。すきなようにやってくれ。しかし身体は大切にせよ。三十歳まではおまえを勘当したつもりでいる。しかし三十すぎたら親のあることを思い出せ。
(7)ただし病気になったり、自分で解決のつかないようなことがあったら、郷里へ戻ってこい、親はいつでも待っている。
(8)これからさきは子が親に孝行する時代ではない。親が子に孝行する時代だ。そうしないと世の中はよくならぬ。
(9)自分でよいと思ったことはやってみよ、それで失敗したからといって、親は責めはしない。
(10)人の見のこしたものを見るようにせよ。その中にいつも大事なものがあるはずだ。あせることはない。自分の選んだ道をしっかり歩いていくことだ。

【メモ2】彼の名前は「じょういち」ではなく「つねいち」。

代替可能度:★★★★
(『忘れられた日本人』が未読ならそちらがお勧め)
おススメ度:★★★
(冒頭辺りは面白い。それ以外の部分は保証できません)

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