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自動車と私 カール・ベンツ自伝/カール・ベンツ

 自動車が曲がるとき、外側のタイヤと内側のタイヤの回転数は同じではない。横一列の行進で曲がるとき、内側の人はその場で足踏みをし、外側の人は必死に前に進まなければならないことを想起すればわかる。
 これを実現するための工夫が差動装置(ディファレンシャル・ギア)で、カール・ベンツの発明なのだ。そのほかベンツは、乗り物に搭載できる小型のガソリンエンジン、電気式の点火装置、効率的な気化器、エンジンの水冷機構、クラッチといった装置を発明し、改良することで「実用的な自動車」の製造に成功したのだ。つまり、現在の自動車に必要な機能の大半は彼が発明したということなのだ。

 そんなベンツが齢80にして初めて著した本書の中心をなすのは、自動車の、各装置の開発史だ。我々にとってブラックボックスとなっている自動車の仕組みを基礎から説明する内容ともなっている。
 自動車の歴史というと、どうしてもヘンリー・フォードの存在感が大きく、ベンツやダイムラーの功績は広く知られてはいないようだ。ドイツ語というハンデもあるだろうし、フォードが経営的にも広報的にも優れているから割を食っているのかもしれない。その意味で、本書の意義は大きい。
 問題は、本書の日本での出版元である草思社が民事再生を申し立てたということ。今後、本書の入手は難しくなるだろう。版権がどこかに移る見込みは薄いが、その場合は書名が変わるだろう。今の書名は出版社がつけたもので、原題は『あるドイツ人発明家の人生行路』だという。

自動車のことがわかる度:★★★★
(差動装置の仕組みは初めて知った。うかつにも)
入手困難度;★★★
(遅くなるほど苦しくなる)
おススメ度:★★★
(ヘルマン・ヘッセ好きにもお勧め。学校時代の記述とか、文体とか)

 

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