« 甲賀忍法帖/山田風太郎 | トップページ | 霞が関半生記―5人の総理を支えて―/古川貞二郎 »

やくざと日本人/猪野健治

 江戸時代から始まる「やくざ」の歴史をまとめた本。私は全然その世界には疎いのだけれど、するりと腑に落ちる説明になっている。歌舞伎町を中国マフィアが牛耳ることも、日雇い派遣が窮状にさらされるのも、1974年に刊行された本書の射程内の出来事と思える。

 著者の考えを端的にまとめたのが「やくざ集団の構成層は、いつの時代においても、社会から疎外された被差別階層であった」という一文。これを軸に歴史を見ると、時代によって生業が変遷し、呼び名も変わっていくとしても、アウトロー層が発生し、集団化するメカニズムが常に一定であることが伺える。
 幕政からあぶれた旗本の次男・三男、仕官の見込みのなくなった浪人、天領の厳しい年貢に逃亡した農民、自ら身を守る必要があった露天商、被差別部落出身者、在日朝鮮人などといった層がやくざを輩出する歴史を追っていく本書は、やくざについて否定的でありつつも同情的である。そして、社会に差別構造がある以上、やくざ(この語の定義には踏み込まないが、「暴力団」よりも広義)が消えることはないと警鐘を鳴らしている。
 冒頭に思わせぶりに書いた日雇い派遣について詳しくは書かないが、かつての「手配師」の生業を大資本が奪い取ったという見方もできるわけで、そこに回答があるのだろう。

|

« 甲賀忍法帖/山田風太郎 | トップページ | 霞が関半生記―5人の総理を支えて―/古川貞二郎 »

ノンフィクション」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: やくざと日本人/猪野健治:

« 甲賀忍法帖/山田風太郎 | トップページ | 霞が関半生記―5人の総理を支えて―/古川貞二郎 »