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霞が関半生記―5人の総理を支えて―/古川貞二郎

 官僚のトップといわれる内閣官房副長官(事務)を史上最長の8年7か月務めた著者の回顧録である。その任期は村山・橋本・小渕・森・小泉の各内閣にまたがる。
 地方国立大学を卒業していったんは長崎県庁に勤めつつ国家公務員上級試験に再挑戦し、厚生省に入省したという異色の経歴ながら官僚のトップにまでなったということを並べるだけで興味深いが、期待にたがわず面白かった。

 まず、地方の農家の息子が家業を手伝いつつ進学していくというところで私のツボ。自伝はこうでなくちゃ。厚生省に入るために人事課長に直談判するくだりも面白い。現在のいわゆる「官庁訪問」にそのまま適用できるのかはわからないが、官僚志望者は読んでおいて損はない(この後の記述も含めて)。
 入省後の仕事は、短期間で次々と異動してさまざまな仕事に携わっていくので、読んでいても目まぐるしい。ただ、「霞が関の公務員の実像はほとんど知られないまま」批判されていることに対するリアクションとして見れば、その意図を実現して、キャリア官僚の仕事の大変さと達成感がよく伝わっている。

 ただし、官僚機構の中のインサイダー、しかもその成功者である立場上、現状肯定に傾いていると思われる。
 「官僚支配」という批判に対してはスムーズな行政の運営という視点で反論しているのだが、それでは議論は噛み合わない。失政の責任を追及される(べき)政治家、国会が政策に深く関与せず、責任追及からは縁遠い官僚が主導権を握っていることが批判されるのだから、スムーズさが損なわれることは2次的な問題ではないかと、私は思う。

 あと、メモ。昭和35年の国民年金の支給開始のところの記述によると、「老齢福祉年金は月額で千円。…僕の月給が当時一万二千円ぐらいだったから、今に直すと一回の支給額は六、七万円くらいだろうか」。制度開始前に負担をしていない人々への支給額としては大きすぎるのではないか? 当時は右肩上がりの時代だったからといって、それで合理化できるのだろうか。

おススメ度:★★★★★
入手困難度:★★★
(書店の店頭にはない。佐賀新聞社に問い合わせるか図書館利用でしょう)

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