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ある人生の記録(森嶋通夫の自伝3部作)

 ノーベル経済学賞に最も近い日本人といわれた著者の自伝3部作。1冊目の『血にコクリコの花咲けば』が旧制高校→大学→学徒動員→終戦を、2冊目の『智にはたらけば角が立つ』が戦後の京大・阪大での教員時代、3冊目の『終わりよければすべてよし』が渡英した後の主にLSE=ロンドン・スクール・オブ・エコノミー=の教授としての生活を書いている。

 著者は自らを日本の共同体社会に不適合な者と規定しているが、だからって軋轢起こしすぎ。まあその頻繁な軋轢・紛争・苛立ちがこの自伝に起伏をもたらして面白いのだが、身近にこういう人がいると周囲の人は苦労するだろう。戦中の職業軍人との対峙などは感心して読んでいられるが、大学教員時代の記述はちょっと周囲が気の毒になる。渡英後は平和が訪れたかと思いきや日本大使館の書記官とやりあったりしている。そこまで日本人嫌いか、という気にもなる。ただ、筆致は感情的なものではなく、業績と人間性を区別し、論理的であろうとしているので、私の世代(1970年代生まれ)ではそれほど不快には感じない。加えて、奥さんの意見を紹介することで、自分が周囲の人間のことをかえりみない自分勝手な人間であると白状もしているので、バランスを保てている。ただし、青山秀夫氏に対しての記述はちょっとアンフェアじゃないかという気がしたが。
 本書は巻によって読者層が変わるのだろう。1冊目は文庫にもなっているように、学徒兵の体験談という捉え方もできるので幅広い層に読める。2冊目は学者の生態に関心がないと苦しい。3冊目はさらに経済学の研究方法についての記述が増えているのでさらに読者を限るだろう。

おススメ度:★★★★
(そもそも戦いの連続というのは自伝を盛り上げるからね)
ひとごと度:★★★★★
(遠巻きに見ているからこそ面白い。当事者が読むと不愉快なんだろう)

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