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オーデュボンの祈り/伊坂幸太郎

 義姉が頭にきた本シリーズ第2弾。
 今をときめく伊坂幸太郎のデビュー作にもダメ出しですか。あ、でも思い当たる節はある。義姉の趣味じゃないってことには。

 義姉は村上春樹もあまり好きじゃないって言っていた。そうすると、本作に不満を持っても不思議はないか。現代日本のリアルな風景でありながら、風変わりな登場人物・世界観を導入することで、現実世界とは少しずれた独特の作品世界が作られている。こういう手法が村上春樹の主要作のいくつか(『世界の終りとハードボイルドワンダーランド』とか)に似ている。そういうのが好きじゃない人はいるだろう。
 私は本作のような作品世界の作り方は嫌いじゃない。というか、村上春樹のそういう手法の作品は好きだ。伊坂幸太郎も上手にそれを遂行していると思う。

 私にとっては、本作に問題があるとしたらもっと些細なところだ。過不足があってもったいないなあ、という印象を受けたのだ。
 未来を知り話をする、全知のカカシがいる外界と隔絶した島で、そのカカシが破壊される(殺される?)というのが本作における「事件」だ。主人公が、作品中に散りばめられた一見バラバラな数多くの出来事を繋げて、その「事件」の真相を見いだすというのがメインのストーリーだ。けっこう鮮やかに繋がるので爽快感がある。
 問題があるとしたら、「伏線」じみた出来事を沢山散りばめすぎて、すべてを回収し切れていないことだろうか。爽快感を感じつつも「そういえばあれはどうなったんだ?」「あれは関係ないの?」と思わせてしまうのは惜しい。メインストーリーと関係ないから切り捨てろ、というつもりはないのだけど、大して必然性のない記述が過剰なために折角の爽快感が曇ってしまうのでは惜しいだろう。

 その「事件」とは別に、作品世界に流れる大きな物語も同時進行していて、エンディングではその物語も終結する。しかしその終結については直前まで描いて、詳細は述べられない。そりゃ無理なのはわかる。大きな物語に区切りがついて作品世界が大きく変質するのだし、文芸作品と相性の悪い素材がキーになっているという事情もあるし。
 でも、もう少し上手に処理できないものか。これでは作者が逃げたように見えてしまう。記述「不足」という印象を受けてしまう。もったいない。
 この手のエンディングがスッキリしない作品は義姉は好きじゃなさそう。村上春樹的な世界観よりもこっちのほうが大きなポイントかもしれない。

おススメ度:★★★★
(伊坂ブームに納得がいった。だからこそ「もったいない」感じを受ける)
義姉共感度:★★
(不満な点があることには同意できるが、それを補う魅力があると思う)

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