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長谷川潾二郎画文集 静かな奇譚

 平塚市美術館で開催された長谷川潾二郎(「潾」は正しくは「憐」のヘンをサンズイにしたもの)の回顧展(平明・静謐・孤高-長谷川潾二郎展)を機にまとめられた画文集。彼の作品を120点以上集めた展覧会で、画文集にもそれがすべて掲載されている。3150円と、この分野の書籍にしては安価なのですかさず購入。

 画集ではなく画文集であるところがミソ。探偵小説作家でもあっただけあって、文章も面白い。
 有名な猫の絵(エピソードは有名なのでここでは省く)のモデルについて書いた「タローの思い出」もそうだが、もう1つの「写生を見る人々」がとりわけよい。写生をしているときや写生をする場所への往復の途中で出会った人々の思い出を綴った文章だが、なんともいえぬおかし味がある。
 
 今回の回顧展を企画し、本書の編集も行った土方氏は長谷川潾二郎の日記(というかメモというか)を読み込んだらしく、展覧会の中で日記からの抜粋文をピックアップしている。「りんごは書き直そう→(翌日)書き直したけどダメだった→(翌日)元に戻した→(翌日)やっぱり気に入らない。でも書き直してうまくいった試しなんかないじゃないか→(翌日)書き直す」のような、本人は至って真面目なんだろうけど冗談にしか見えないような記述とか。

 それと同様にして、
「○月○日 アネモネを描く。
 ○月○日 アネモネ。
 ○月○日 アネモネ。
 ○月○日 アネモネはしばらく時間を置こう。」
というような日記も抜粋されているのだが、この時に描かれていたアネモネの絵は出品されていない(本書にも載っていない)。
 先日読んだ洲之内徹の『芸術随想 おいてけぼり』のカラー口絵にその絵が載せられていたが、この絵のサイズは「15.0×28.0(センチ)」と、横長になっている。そのキャプションによると、「『アネモネ』のサイズが変形なのも、業を煮やした画商が途中で絵を取り上げた結果だという」とのこと。日記を抜粋するならこの絵も展示してほしかった(事情があるんでしょうけど)。

 私は平塚市美術館で観たが、この展覧会は以下のように開催される。
・2010年7月1日(木)~8月15日(日)下関市立美術館
・2010年8月28日(土)~10月17日(日)北海道立函館美術館
・2010年10月23日(土)~12月23日(祝)宮城県美術館
 平塚では開催期間末期には本書は品切れになっていたので、早めの入手をお勧めする。

おススメ度:★★★★
(ちょっとでも関心があれば急げ! 逃したら次はないかも)
文章面白度:★★★★
(本人の文章が面白すぎて他の寄稿者には気の毒)

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