アンゴラ戦での松井投入の効果
アンゴラ戦は、終了間際のゴールで1−0の辛勝。何とか面目を保った形だが、試合内容はお寒い限り。相変わらず攻守の切り替えは遅く、チームとしての意思統一は見えない。唯一の好材料は、わずか25分のプレーで結果を出した松井だろう。中村やアレックスにはない、彼の価値とは・・・。
アンゴラは、確かにきっちりしたチームだった。守備の戻りは早く、選手がボールを持ちすぎることはない。ゴール前で強引に抜きにかかるよりは、思い切ってミドルシュートを打ちに行く。無理をしない戦いぶりに徹するその姿には、ナイジェリアを抑えて初出場を勝ち取ったのもうなずけた。派手さはないが、嫌なチームには違いなかった。
しかし、だ。
「W杯出場国同士の一戦」などとメディアは煽ったものの、相手の守備は横の揺さぶりに弱いさんざんなものだった。それもそのはず、アンゴラの監督曰く、レギュラーのセンターバックが二人とも居なかったとか。日本でいえば、茂庭と坪井のコンビといったところだろう。何だか不安になるよねえ。二人してやる気が空回りするタイプというか・・・。
日本の得点シーンを思い起こしてもらいたい。右サイドにいた中村が逆サイドにロングボールを放り込み、柳沢がさらに逆サイドへと折り返す。呆れるほどフリーだった松井は、難なくヘディングでゴールを決める・・・。これこそアンゴラ守備陣のウィークポイントを突いた攻撃だったわけだが、思えばこれを決めるのに日本は約90分かかったことになる。いやまあ、相手の弱点を突こうという気があったと仮定してだけど。
日本の攻撃全般を見れば、高原の惜しいシュートもあったし、それなりだったようにも思えるかもしれない。しかし、結局は点を取れなかったし、高原と柳沢の関係はいつもどおり。自分でシュートすることしか考えない高原と、味方からボールを引き出すことを最優先する柳沢。運が良ければチャンスにはなるが、能動的に攻撃の形をつくっていたとは言い難い。
本当に何度も言っているけど、個人で状況を打開できる選手が居ない日本にとって、カウンターは最大の武器になる。だから、運に任せるのではなく、狙ってカウンターを仕掛けなければならない。ジーコは、カウンターが無理ならしっかりつないで攻めるのだと言うが、それが功を奏した試合がいくつあっただろう。彼が現役だった頃とは、守備の戦術が違うのだ。人数をかけて守られたら、そう簡単には点を取れない。そうでなければ、バルサやミランが弱小相手に攻めあぐねることなどあるはずがない。
まず第一に、ジーコにはボールを奪うための明確な指針がない。カウンターを狙うには、何よりも高い位置でボールを奪うのが一番なのだが、攻められている時は単純に両サイドが引く。中田1人が、高い位置でボールを奪わんと気を吐くが、周りはついてこない。
そして第二に、ボールを奪っても、FWとトップ下にはマークが付き、他に長いパスを出すところはない状況が何度も見られた。中田のボランチ起用によって、奪ったボールはまず彼のところへ回ることとなったが、結果的に、パスの出しどころがなくなっただけ。ジーコは、中田の攻撃参加を許す代わりに、稲本にオーバーラップを自粛させたのだろう。守備時にはべったり引く両サイドは上がりが遅く、攻守の切り換えに中田が戸惑うシーンが続いた。
トップ下に入った中村にしても、真ん中でボールを受けても、何もさせてもらえない。意味もなくドリブル突破を仕掛け、自滅するシーンが続いた。途中からは味方がボールを奪うとサイドへ流れていたが、それで薄くなった中央に稲本が飛び出すでもなく、チームとしてはなんともちぐはぐだった。相手のマークはアフリカ勢とは思えぬほど巧妙で、業を煮やした中澤がオーバーラップを仕掛け、ボールを奪われる危ないシーンもあった。率直に言って、カウンターを狙うなら、中村より小笠原、本山の鹿島勢の方が100倍うまい。カウンターサッカーで栄光を築き上げてきた鹿島がご自慢のジーコには、そんなことは百も承知だろうが。
結局のところ、試合中に何かが変わったとしたら、それは松井の投入だった。中村、アレックスに継ぐ第三のドリブラーが出てきたことで、アンゴラは明らかに戸惑った。それまでの彼らは、仮にドリブル突破を仕掛けられても、二人で対応することでいなしていた。たとえ一人目がかわされても、二人目が必ず止める。そもそも、中央でドリブル突破を仕掛けない日本に、彼らはほくそ笑んでいたはずである。仮にファウルを撮られても、再度なら直接FKで失点することもないからだ。
そんなところに、もう1人ドリブラーが現れたわけだ。しかも、この若造と来たら、体は細いくせに相手が二人だろうと、何も恐れずに突っかけてくる。ボールを奪われるとすぐにプレーをやめて主審にファウルをねだる誰かさんとは、大違いだ。フランスリーグでの経験は、早くから期待されていたこのテクニシャンを、着実に成長させていると感じた。一時は完全に伸び悩み、所属する京都サンガの降格にまで付き合ったというのに。最後のゴールは、思いも寄らぬプレゼントだったろうが。
ところで、4バックが3バックになったことには、あまり意味はない。あの時間帯、日本が圧倒的に攻められる流れではなく、守備時の是非が問われることはなかった。しかし、今後を考えると、中田、中村、松井を並べた上での4バックは、単純にリスクが大きい。少なくとも、アレックスの左サイドバックはありえないだろう。
恐れずに突破を仕掛けるサイドアタッカーは、今の日本に何よりも必要なパーツである。松井には、中村、アレックスにない思い切りの良さがある。
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