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2005年11月25日 (金)

ロイ・キーン退団に物申す

 ロイ・キーンがマンチェスターユナイテッドを退団した。直接の原因と噂されるのは、MUTV(マンUがスポンサーの番組)におけるインタビュー。若手選手を批判して相変わらずの問題児ぶりを示したようだが、その程度のことで何を今さら・・・である。

 問題のインタビューは、チームの若手選手を名指しで批判したもので、実際にはファーガソン監督によって放送を差し止められたという。しかし、差し止められたはずのVTRの内容が、どうして海を渡ってまで知れ渡るのか不思議だ。世界一ゴシップを愛する国だから、と言ってしまえばそれまでなのだが、是が非でもキーンを悪役にしたい誰かの意図が見えるような気がしてならない。一時代を築いた主将がシーズン途中にチームを去るのは尋常ではないわけで、なんとか「輪を乱した挙げ句、本人が好んで出て行った」という構図をつくりたい誰かが居るのでは?
 たとえばマンUには、バイエルンミュンヘンのバラックを獲得し、主将として迎え入れるという噂がある。所属チームとの契約延長を拒否したこのドイツ代表を獲得するのに、現主将でポジションまで重なるキーンが邪魔になるのは、当然の話だ。もちろん、決して安くない彼のサラリーの負担が減れば、バラック獲得の資金も増える。どうせ今年いっぱいでクビにする人材なら、いっそ早めに悪者に仕立てあげて出て行ってもらう・・・ということなのかもしれない。

 それにしても、同じ強豪チームの老主将でも、パオロ・マルディーニとの扱いの違いは極端だ。オーナーは自ら「彼は好きなだけ現役でいてくれればいい」と公言し、チームメートはこぞって「パオロにバロンドールを」と口にする。マンUの選手が「キーンにバロンドールを」と言ったなんて話は聞いたこともない。確かに、父親もミランの選手だった生え抜き中の生え抜きのマルディーニとは、事情は大きく異なる。アイルランド人であるキーンは、マンUにとってはあくまで助っ人である。約15年の在籍で7度のリーグ優勝、栄光のトリプルクラウンに貢献したとしも、ただの異教徒に変わりないのかもしれない。

 今回の退団において、監督との不仲説がささやかれるが、どうしてもそうは思えない。ファーガソンは、あのカントナを最後まで守り抜いた男である。観客に跳び蹴りを食らわしたあのカンフーキック事件のときでさえ、彼をかばい通したものだ。キーンに対しても、これまでずっとそうだった。自伝事件の折にも、チーム内での明確なおとがめはなかったはずである。かつての復讐のため、試合中に相手選手をわざと負傷させた、と自伝に書かれていたにもかかわらずだ(いやまあ、自伝でマンUの先物買いをばらしちゃったスタムは、追い出されたけど)。
 実際は、コーチ陣に加えたいと考えたファーガソンと、あくまで現役にこだわったキーンとの行き違いがあるのではないか。34歳の選手を不動のレギュラーに据え続けるためには、マンUが一年間にこなす試合数は多すぎる。その意味で、キーンがレギュラーポジションを失っていった辺りから、退団というエンディングはみえていたのかもしれない。
 しかし、キーンの退団の直接の原因は、彼の商品価値なのではないか。かつて世界一の金持ちだったマンUは、今や「他人の持ち物」になってしまった。サッカー選手としての価値ではなく、商品としての価値に見切りをつけられたのが、真実ではないのか。だからこそ彼は、「若手をこきおろす悪者」としてチームを去らねばならないのではないか。もちろん、メディアに情報をリークしたのは、ファーガソンではなかろう。キーンの今までのクラブへの貢献を無視できる立場の人間に違いない。それは、ファーガソンではあり得ない。

 結局のところ、三者三様の思惑が今回の退団につながったのだろう。キーンはコンスタントに試合に出ることを望むが、ファーガソンとしてはそれを認めるわけにはいかない。そして誰かさんたちにしてみれば、自らの商品価値が低いばかりか、これからどんどん価値の上がる商品=若手選手を貶めかねない老将を、さっさと厄介払いしたかったのだろう。それはそれで、納得に行く物語ではあるまいか。
 しかし、であったならば、キーンがひとり、悪者になるのはいかがなものか。退団発表の直後、イタリアの各クラブが獲得を狙っているとの噂が飛び交ったが、名前の挙がった各クラブは、すぐさまこぞって「興味がない」との声明を出した。メディアはそれをまた、口さがない問題児ゆえに敬遠されたかのように書き立てた。
 率直に言って、ダメな奴をダメだと言って何が悪い? キーンの主張は以前から一貫している。「相手をぶっ倒すぐらいの気持ちがあれば、俺たちは誰にも負けない」。プロである以上は当たり前の心構えで、あのベッカムだって、かつて同じように彼にこき下ろされたのだ。まったく、どこかの国の選手たちも怒鳴りつけてもらいたいもんである。
 そうした彼のスピリットだからこそ、やはり今後はセルティックに行ってほしい。かの地ならば、彼も異教徒にはならない。まあ、スピリットがない奴もいるけど。

 というか、なぜエリックは黙っている。こういう時こそ、オマエの出番じゃないのか! キーンはいつだって「彼のやり方が大好きなのさ」って言ってたろうが。なあ、カントナよ。

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  • 荒木又三郎
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