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2006年1月14日 (土)

柳沢はジーコの欠かせない「切換器」ーー日本代表を考える・その2

 柳沢敦が、岐路に立たされている。W杯イヤーを迎え、何の実りもなかったイタリア移籍を終えるため、鹿島アントラーズへの「出戻り」を直訴。しかし、所属クラブでは明らかに戦力外となっているにもかかわらず、クラブ会長は手放したくないご様子。今や日本代表のFWではなく、某モデルの「さげまん」ぶり裏付ける男として有名になってしまった気がしてならないが、それでも彼がジーコの秘蔵っ子であることに変わりない。今ここで、日本一ゴールへの執着心がないFW柳沢敦を、全面的にフォローする!!

 柳沢は、いわば攻守の切換器である。
 前線で積極的にマークを外し、自陣からのパスを受ける際の基点となる。そうすることで、守備に戻っていた味方の選手が上がってくる時間を稼ぐ・・・。ボールを支配し、中盤での組立てを重視するジーコの戦術において、その才能は欠かせないものだ。つまり、中盤の選手(MF)が中盤にいなければ、攻撃の組立てなどできはしない。ラインを上げて積極的にボールを奪いにいくのではなく、FW以外のみんなで守るジーコジャパンにとって、切換器は是が非でも必要な装置なのである。
 むろん、本来なら切換器は堂々とした体躯を持つ大型FWであるべきだ。せこせこと前線を動き回るのではなく、相手DFとの肉弾戦に勝利し、堂々とボールをキープすればいい。
 しかし、いうまでもないが、日本には堂々とポスト役を担えるような選手はいない。最も近いタイプは鈴木隆行だろうが、彼が世界で通用するレベルでないことは、すでに明らかだ。受けたボールを何とか保持できても、前を向くどころか中にさえ向けぬ間々、サイドへと押し立てられる。そんな状態でMFがこぞって上がっても、逆に相手のカウンターを食らう危険性が高い。DFからしてみれば、むしろ迷惑な話ですらある。(なお、中田・宮本による「3バック直訴事件」、「ボランチのポジショニングに対する中田と福西の口論」というのも、実際にはそこに理由があったと思われる。カウンター対策としては、そりゃあ、常にDFが3人残る方がいいし、守備のためにボランチがサイドに流れるのもよろしくないだろう)
 だからこそ、柳沢は欠かせない。敵のマークを外し、前でも横でもなく、下がってボールを受けてくれるFWは、味方に安心感を与える。カウンターをこよなく愛する鹿島アントラーズで培われたその技術は、他の追随を許さない。誰に何を言われようとも、「FWの仕事は、点を取ることだけだとは思わない」と彼が繰り返すのは、それ故である。いや、ワタクシはバカにしているのではなく、この技術に関しては柳沢は間違いなく天才だと思っている。
 しかし、この才能がいわば異形の才であるのは否めない。FWにいろんなタイプがあるといっても、それはやはり矛盾したものには違いない。FWとは本来、得点するのが仕事であり、パスを受けるためにあえてゴールから遠ざかる動きなど、彼らが身につけねばならないものではない。
 そんな柳沢だからこそ、イタリアで苦しむ。1−0での勝利を最高とするかの国では、彼をFWとは認めない。試合に出る機会は少なく、ピッチに登場しても、ポジションは中盤のサイド。思えば、赤鬼トルシエも彼をサイドで試したことがあった。過小評価されがちな彼の能力は、逆に評価する人間にとっても、使いどころに困るものだということかもしれない。
 ただし、ジーコのチームにとっては、事情は異なる。自らが現役時代に体現した「黄金の中盤」を夢見続けているのかもしれないが、我らが指揮官は頑なに中盤でのパス回しに固執する。高い位置でボールを奪い、そのままショートカウンターに持ち込む戦術は、彼の頭にはない。実際に、中盤での見事な組立てから点を取ったシーンなど、数えるほどもないというのに・・・。 ジーコがジーコである限り、我々は柳沢に期待するしかないのではないか。指揮官が望むように、中盤での華麗なパス回しを行うには、柳沢という「攻守の切換器」は欠かせない。チャンスメークを担うセカンドストライカーとして、彼以上にうってつけの人材が日本にいるだろうか。
 その意味で、自らチームに直訴したという鹿島への出戻りは、むしろ日本にとって有り難い選択かもしれない。彼のたぐいまれなる才能は、あのチームでなら存分に生かされるはず。なればこそ、恐らく小野伸二が浦和で温かく迎えられるように、彼にも同じ歓迎が受けられんことを祈るばかり。出戻りで周りに何を言われるかぐらいは、彼にも分かっている。つまらんCMに出て、「いじめ、かっこ悪いよ」とか言ってた奴とは違うのだ。くれぐれも、どこかのモデルの話など蒸し返されなければ良いのだが・・・って、だからワタクシはバカにしてるわけじゃないんだってば。

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