« 日本対オーストラリア〜W杯千字戦記(3) | トップページ | メキシコ対アルゼンチン〜W杯千字戦記(4) »

2006年6月24日 (土)

ジーコジャパンの必然的敗北

 よくやった、選手たちは頑張ったなどとは、とても思えない。そんな言葉を口にするなど、まっぴらごめんだ。3試合で1分け2敗、得点2失点7という成績は必然である。運が良ければ1勝1分けはあり得たかもしれないが、運が悪かったからこうなったのでは決してない。それを認めなければ、日本にとって今大会はまったくの無駄になってしまう。だから、これまでも散々繰り返してきたジーコのチームの欠点について、よせばいいのに再び書く。そして、今度こそ「日本人を知る監督」を望む。

 第1の欠点は、やはり三都主のサイドバック起用なんである。
 守備力がどうこう言う以前に、あの男はロングボールに対してヘディングで競らない。何を考えているのか本当にわからないのだが、脚で処理できる範囲に飛んでくるボールに対して、当然のように脚を伸ばす。そして、脚も頭も届かないとみるや、今度は驚くことに何もせずに見過ごしてしまう。ジーコジャパンだけでなく、エスパルスでもレッズでも何度となく見せられてきた光景で、そのたびにワタクシはブラウン管に「バカ!」と叫んだきたものである。
 確かに、日本人にはこういうバカなサイドハーフ(3バックのサイドの選手)が他にもいるわけだが、サイドバックで起用するとなると、事情が異なる。それこそヨーロッパでは絶対に許されない話で、最終ラインを構成する者である以上、たとえボールに触れることができない場合でも、マークすべき敵の選手を妨害するべきなのだ。DFたる者、ジャンプしながら相手に体をぶつけたり、ユニフォームを引っ張ったりして、最低限、相手の大勢を崩さなくてはならない。そういう光景がまったくない試合など、今や小学校のグランドの上にしかないはずである。
 しかしまあ、それほどに珍しく貴重なプレーを、世界一の代表を決める大会の、それも優勝の最有力候補といわれる相手との一戦で見せてくれるのだから、やってくれる。同点に追いつかれたロナウドのゴールは、右サイドからのクロスがヘディングで折り返されたものだった。本来なら、三都主がマークしているべき相手だったのだが、彼がポジショニングを誤まったのである。その結果、ボールはジャンプしても頭が届かないところに来たわけ。で、例によって例のごとく、彼はボールを見送った。そりゃあ、ゴール前で続けて2人の選手にヘディングされたら、点も入るよ。
 そもそも、あの状況でフリーにしてしまう選手にDFの資格はない。鹿島の神様ときたら、そんな選手にサイドバックのレギュラーを与え、しかもプレーの矯正をしないというのだから、泣けてくる。
 そう。これは三都主が悪いのではなく、監督が悪い。

 続く第2の欠点は、ボールを奪う戦術を最後までつくらなかったことにある。
 これまで、メディアはさんざん「守備のルールがない」というような指摘をしてきたが、正確に言えばそうではない。例えば、「サイドバックは必ず片方残る」とか、「ボランチはサイドに流れない」とか、不十分ながらも守備のルールは存在する。失点を防ぐためのルールではなく、速攻を仕掛けるためにボールを奪うルールがないのである。
 何度も言ってきたが、このルールを持たないことは、日本にとっては致命的である。なぜなら、日本人選手には展開を読んでパスカットをするセンスがないから。次に出るパスの軌道を読み、先回りするようなことはできない。
 ところが、ブラジル人にはこれができてしまう。あのずさんな守備にもかかわらず彼らが強豪であり続けるのは、個々の選手がボールを奪う術を知っているからに他ならない。ほとんど集まって一緒にプレーする機会がなくても強さを維持できるのは、まさにそのためである。
 一方、ヨーロッパでは、こうしたセンスの不足をルール=戦術によって補ってきた。例えば、カテナチオを捨てて以後のイタリアはこのルールを最も重視してきた国であり、代表レベルで最も完成された形をみせたのがW杯とユーロを優勝した頃のフランス。反面、このルールを無視してきたスペインなどは、強い強いといわれながら国際大会では奮わない。付け加えるまでもないが、ライカールトのバルサが世界一になれたのは、彼がサッキとカペッロのミランを知るからだ。
 このことを踏まえて、後半の日本を思い返してもらいたい。同点に追いつき、無理をしてまで得点する必要のないブラジルは、優雅にボールを回してきた。そこで日本はどうしたか? 2点差以上で勝たなければならないのだから、とにかくボールを奪って攻めるしかない。しかし、FWがボールを追い、中田がボールを追っても、なかなか奪えない。当たり前だ。ジーコのチームには、ボールを受ける相手を見定め、複数人で襲いかかるようなルールはないのだから。結局、ボランチがハーフライン手前にまでプレスに行かざるを得なくなるが、ブラジルにしてみればそれを待っている。向かってきた相手をあっさりかわし、空いたスペースに選手が飛び込んで、チャンスをつくり出す・・・。3点目の失点がまさにそれで、稲本が果敢にボールを奪いに行ったものの、彼の空けたスペースを使われ、失点した。 こうならないための対処法は、一つしかない。つまり、ボールがどの地点に来たらプレスに行くのかをルールとして共有し、常に2人以上でプレスに行くようにするのだ。そう。これこそまさに、フィリップ・トルシエが喜々として繰り返したことなのだが、ジーコはまったく手をつけなかったのである。
 つまり、後半の日本は、どうしようもなく無力だった。ボールを奪いにいけばピンチを迎えるのがわかっていながら、彼らはそうせざるを得ない。なにせ、2点以上、とらなければならないのだから。しかし、そのとき、ジーコが誇る日本人のパサーたちに何ができたろう? 彼が最後まで背番号10を与え続けた来た中村は、何をしていたろう? あるいは、ボールポゼッションで上回るために小野や遠藤を入れたのだろうか? そうじゃない。彼の選択は中田浩二だった。つまり、より守備力のあるボランチ尾入れて、中田をトップ下に上げることしかできなかったのである。
 思い出すまでもないが、これまでの日本の試合で、ただ1人、前線からプレスをかけ続けてきたのが中田である。結果的に、それでピンチを招いた場面も多い。そりゃあ、1人でプレスに行くのだから、かわされればチームがピンチを迎えることなど、彼もわかっている。わかっていて繰り返してきたのは、それこそ「どうしても点を奪わなければならないとき」のためである。W杯を戦うのであれば、対等以上の相手に対してどうしても点を取らなければならない場面は必ず出てくる。それをきちんとわかっていたのは中田だけで、無知だったのはジーコと他の選手の方だ。あるいは、「決定力不足」をやり玉に挙げてきたメディアと我々の方なのだ。

 最後の第3の欠点は、先ほどすでに言ってしまった。ジーコのチームには、戦術的なバリエーションがないのである。かろうじてあるのは、FWを変えること、中田のポジションを上げること、3バックと4バックを変えることの3つ。23人という枠がありながら、タイプの違う人材を擁して状況によって使い分けるという考えがない。選手に自由を与え、個人の能力に依存するにもかかわらず、ジーコは同じような人材しか選ばなかったのだ。
 例えば、ジーコのチームの中でサイドアタッカーと呼べるのは、三都主のみだ。左サイドが行き詰まった時に右サイドに基点をつくろうという発想はないし、もう1人の左サイドアタッカーとして松井を呼ぶこともなかった。また、オーバーラップのできるボランチである福西、稲本に守備の負担を課し、似たタイプでよりダイナミズムを持ち合わせる長谷部には置いてけぼりを食わした。そして、スピードで裏を狙う佐藤には目もくれず、得点力のない玉田のスピードとドリブルを愛し続ける。メンバー発表の前に23人中22人までの予想を当てておいて言うのもなんだが(「代表入り23人の予想」参照)、ハッキリ言ってわけがわからない。どんな状況、どんな相手にも同じやり方で勝てるとでもいうのだろうか?
 そんなロマンを未だに追っているのは、ベンゲルのアーセナルぐらいのもんだと思う。しかしご存じのように、ベンゲルにはセンスある人材を先物買いし、時間をかけて育てあげる器量がある。ところがジーコのやったことといえば、プライドばかり高くて精神年齢の低い奴らを放任してきただけ。あの23人の中に、部下や上司として一緒に仕事をしたいと思える人間が何人いるだろう? ワタクシはせいぜい5人だ。まったく、情けない話である。

 ジーコは負けるべくして負けたと思う。相対的にみれば、日本人選手のレベルは決して低くないだろう。短所もあるかもしれないが、長所もあるのだ。ジーコはその短所を打ち消すことを怠り、長所を生かす手立ても怠ったのだから、仕方がない。
 同じ轍を繰り返さないためには、今度こそ「日本人を知る監督」を望む。

関連記事一覧
日本対オーストラリア〜W杯千字戦記(3)
代表入り23人の予想
小笠原、小野、村井のトリオはこれっきり?
うらやましいアメリカと情けない日本
柳沢はジーコの欠かせない「切換器」ーー日本代表を考える・その2
大黒の移籍は安売りかーー日本代表を考える・その1
アンゴラ戦での松井投入の効果
バーレーン戦にみた日本の理想型
目標管理制度にみるジーコジャパン
ジーコから日本代表を取り戻したい

« 日本対オーストラリア〜W杯千字戦記(3) | トップページ | メキシコ対アルゼンチン〜W杯千字戦記(4) »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ジーコジャパンの必然的敗北:

» 次の中田を育てられる監督を [高スポ編集雑記]
 恐らくは最後のジーコ批判を高スポ★オンラインへ。思えば、4年間で何が変わったのかと聞きたくなるようなブラジル戦のひどさだった。あれが中田英寿の最後だというのなら、何とも口惜しい。... [続きを読む]

« 日本対オーストラリア〜W杯千字戦記(3) | トップページ | メキシコ対アルゼンチン〜W杯千字戦記(4) »

高スポ執筆者

  • 荒木又三郎
    高スポ創刊者にして主筆。ACミランを愛する後天性フランス人。高スポ編集雑記に本音をぶちまける。
  • 三鷹牛蔵
    高スポの陰の支配者。湘南ベルマーレを愛する先天性ジャパニーズ。

姉妹ブログ


三鷹牛蔵twitter

無料ブログはココログ