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2006年8月29日 (火)

教育者としての宣戦布告〜オシムの船出(2)

 オシムは、代表チームを取り巻く何もかもを見据えたうえで、教育者たらんと振る舞っているのではないか。彼が教え子としているのは、選手ばかりではなく、協会、マスコミ、ファンのすべてなのだろう。恐らく彼には、この三者すべてが成熟しなければ代表チームは強くならないという信念があるに違いない。何とも頼もしいことだが、事なかれ主義のサッカー界を見る限り、いささか心配ではあるのだが・・・。

 宣戦布告は、トリニダードトバゴ戦を控えた代表メンバーの発表で行われた。A3他の日程等により、協会側がメンバー召集に大幅な制約を課したため、GK2人を含む13人しか選手を呼ばなかったのである。度肝を抜かれた所行には違いないが、まさに英断である。

 これまでも、代表の試合と国外のカップ戦などの日程が重なり、代表監督に制約が課されることは度々あった。結果、明らかな人数合わせで選手が呼ばれ、試合にも出られないまま、二度とお呼びがかからないケースが散見されてきた。多くの監督は、紅白戦をやるためだけにメンバーを目一杯呼んできたわけだが、これでは代表のプライオリティーが薄れるばかり。 しかも、ジーコ体制以降、事がさらにおかしなことになったのは今さら語るまでもない。横浜マリノスの松田は、メンバーに招集されたにもかかわらず出場機会が与えられなかったことに腹を立て、許可なくチームを去った。以後、ジーコが彼を二度と呼ばなかったことは、ご存じのとおり。Jリーグの各クラブにしても、「海外組は召集を免除されるのに、使う気もないのにウチの選手を呼びつけるのはおかしい」と思っていたはずである。そのくせ、招集を辞退した久保がマリノスのベンチに入ると、烈火のごとく、怒り出す。協会と一緒になって代表の価値をおとしめながら、「代表収集は何よりも優先する」という態度は度し難い。さすが、イタリアでは全く成功しなかった男のやることは違う・・・などと言いたくなったものだが。
 メンバー発表時のオシムの発言「こんなことは二度とないようにしてもらいたい」というのは、協会への宣戦布告以外の何ものでもない。彼は協会に対し、自らが招集するための障害を取り除けと言っているだけではなく、代表の価値そのものを上げろと言っているのだ。だから、登録枠が余っているからといって、あえて使う気もない選手を呼ぶことはない。これぞ、アジアの端っこの国の代表監督にもとめられる深謀遠慮ではなかろうか。ワタクシが彼を「教育者」と呼ぶゆえんである。
 ただし、うちのボスが指摘しているように、オシムにはジェフ時代からベンチ要員を余らせた前科があることを付記しておきたい。

 いずれにせよ、合流ぎりぎりになって選手を発表するオシムのやり方は、一つの指針を示す。それは、すべての選手には最後までチャンスがあり、立場が安泰といえる選手は誰もいないのだというメッセージだ。ケガさえなければ間違いなく呼ばれるという安心感は、ジーコ御大が選手たちに与えた約束手形だった。しかし、所属チームでろくに出場していない海外組が当然のように選ばれる状態は、明らかに不健全だったといえる。マスコミは、メンバーの発表が近づくと、相も変わらず「最後のアピール」とはやし立てるが、その意識はすべての選手が持ってしかるべきということなのだろう。

 ところで、呼んだメンツもなかなかに興味深いものだった。ジーコ時代からのチョイスが少なく、驚きをもって報道されたが、アテネ五輪世代(今野、山瀬、田中隼磨、キャプテンながら残念組となった鈴木啓太など)が名前を連ね、4年後を見据えるならむしろ順当に思えるものだったといえる。むしろ様々な想像を掻き立てたのは、浦和レッズの面々を主体にしながら、小野がNGだったこと。さらに、4バックを試すのが明らかな構成だったものの、三都主をサイドバックで使うのか、中盤で使うのかが判然としなかったことである。この点についての仮説は後段に譲りたい。

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高スポ執筆者

  • 荒木又三郎
    高スポ創刊者にして主筆。ACミランを愛する後天性フランス人。高スポ編集雑記に本音をぶちまける。
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