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2006年8月 6日 (日)

バスケ最強国は本当にアメリカなのか

 2002年世界選手権6位、2004年アテネ五輪3位。こんな戦績でもアメリカは優勝候補の筆頭であり続けているのだが、2週間後に迫った今度の世界選手権だってわかったもんじゃない。「本気で優勝を狙っている」と口で言うのはたやすいが、そのために「本気で準備をしている」かどうかは怪しいものだ。

 たとえアメリカの選手層が世界一なのだとしても、12人のロスターを選ぶ際にその優位を生かしきっていない。初代ドリームチームでは、当初は参加に乗り気でなかったマイケル・ジョーダンをマジック・ジョンソンが説得したというエピソードが有名だし、その後のアメリカ代表でも、常に出場辞退の話題が取り沙汰されている。
 今回のチームではティム・ダンカン、ケビン・ガーネット、レイ・アレンといったところが、出場を辞退している。また、候補選手の中でもコービー・ブライアント、アマレ・スタウドマイヤー、ショーン・マリオンなどが故障によりメンバーに選ばれなかった。

 そうやってまた、今回のアメリカ代表もフロントコートに不安を抱えることになった。ブラッド・ミラー、エルトン・ブランド、ドワイト・ハワードといった面々は、ゴール下で相手を圧倒し切れるほどの迫力はないし、場合によっては劣勢を強いられる可能性もある。いや、ダンカン、スタウドマイヤー、マリオンを揃えたアテネ五輪で苦戦した以上、今回だって間違いなく苦しむ。
 ゴール下で相手を圧倒できないとして、外角からの3Pシュートで得点を重ねられるかというと、これにも疑問符が付く。レイ・アレンの出場辞退もあるが、アメリカ代表にはピュア・シューター、もっと言ってしまえばシュートだけを仕事にするような選手は選ばれにくい。インサイドに切れ込んでよし、3Pを打ってもよしのスター選手を多く連れて行く以上、シュート専任の選手は不要だという判断なのだろう。しかし、このところの世界大会でスター達の3Pが思うように決まっていただろうか? 彼らは内に外にと自由自在に動くことでペースを作るのであって、ゾーン・ディフェンスで固められた相手に対して外からのシュートのみを打ち続けるというようなプレーでは、ペースを作れないのではないだろうか。

 選手選考を見る限り、今回もアメリカは過去の敗因を直視せず、同じ過ちを繰り返そうとしているように見える。きっとこれはドリーム・チームの呪縛なのだろうな。
 初代ドリームチームが圧倒的な結果をもたらした力の源泉は、強力なフロントラインにあったと私は思う。パトリック・ユーイング、デビッド・ロビンソン、チャールズ・バークレー、カール・マローンの4人は、やっぱり強烈だった。もちろん名前で相手を萎縮させた面もあるが、カール・マローンとポジション争いでぶつかり合うのは怖いよ。そのうえバークレーは初戦で「やせっぽっち」のアンゴラ選手に肘打ちをお見舞いして本気であることをアピールしたし…。
 この真の勝因を見失い、「ドリーム・チーム」の名の由来であったジョーダン、マジック、ラリー・バードのそろい踏みに注目しすぎているのではないか? だからこそ、シューティング・ガードやスモール・フォワードを中心としたバックコートのスター選手がこれでもかとばかりに集められている。レブロン・ジェームズ、ドウェイン・ウェイド、ギルバート・アリーナスなどなど。

 本当のところ、冒頭に述べた「アメリカの選手層が世界一」という仮定も怪しいのだろう。コービーが辞退し、アレン・アイバーソンが見向きもされなくとも代わりの持ち駒が得られるバックコートのポイント・ゲッターに関しては確かに人材が豊富だけれど、それ以外のポジションはどうか? 特にセンターは、NBAでもアメリカ人選手が減っていることが話題になっている。
 でも、こんな疑問を持つ人間はまだ少数派だ。「アメリカ最強説」は強い。たとえ世界選手権やオリンピックで結果が出なくても「あの選手が出ていれば」「NBAの高給取りが無給の代表チームに行くリスクが大きすぎるしねえ」「選手層なら世界一」などといった様々なエクスキューズが「アメリカ最強説」を守ってくれるわけだ。試合に勝てなくても最強であり続けるという、この不愉快な事態を避けるために、アメリカ代表にはしっかりした結果を出してほしい。せめて、私がチケットを持っている準決勝までは勝ち上がってくれよ。

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高スポ執筆者

  • 荒木又三郎
    高スポ創刊者にして主筆。ACミランを愛する後天性フランス人。高スポ編集雑記に本音をぶちまける。
  • 三鷹牛蔵
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