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2006年8月22日 (火)

アルゼンチンの完璧な試合運びに満腹

 ジノビリの個人技云々は余興という趣であって、それ以前にチームのバランスがすばらしい。アルゼンチンは、今回の世界選手権における優勝候補の名にふさわしい、バスケットボールの教科書に載せてもいいようなゲームを見せてくれた。
(2006年8月19日 アルゼンチン80—70フランス 仙台市体育館)

 確かにエマニュエル・ジノビリ(#5)は素晴らしかった。ゲーム序盤には、流れを作る3ポイントシュートを連発したが、確率の高さもさることながら、シュートに持っていくまでの動きが秀逸。特に、ドリブルでの1対1から前後の動きでフェイントをかけてバックステップで距離を作ってシュートする動作は、左右の動きの速さも手伝って、止めるのが困難だ。
 ディフェンスでは厳しいチェックでマッチアップの相手に迫り(スクリーンで逃げた相手を追いかける気迫とスピードは他の場面で見られないほどのものだった)、5つのスチールを記録したが、その後の速攻でも闇雲にシュートするのではなく、相手がファールしてきても怪我しないように、ファールされてもシュートが決まるように、そしてファールを誘うようなやや緩めたスピードで、堅く得点につなげる(もちろん、ファールされればフリースローも決める)。
 ゲーム中盤には流したような格好でアンドレス・ノシオニ(#13)に花を持たせつつも、ここぞという場面で輝きを見せ、今大会のハイライトフィルムで使われること間違いなしの股抜きドリブルを披露して美味しいところをさらっていく。まったく千両役者とはこのことだ。

Argteam_2  しかし、アルゼンチンの強みはジノビリ頼みにならないことだ。チーム全体のパス回しは早くてスムーズであるし、得点源もジノビリやノシオニに限られない。
 ルイス・スコラ(#4)やファブリシオ・オベルト(#7)といったお馴染みのフロントラインは、リバウンドやディフェンス、スクリーン・プレーで貢献するのはもちろんだが、そのような王様ジノビリを生かすためのプレーだけでなく、パス回しにも参加するし、ポストプレーから得点もする。ルーベン・ウォルコウスキー(#15)はインサイドプレーヤーかと思わせておいて、積極的な3ポイントシューターでもある。

 いろいろと述べてきたが、各個人の能力が原動力なのではなく、チームとしての一体感・成熟度こそが、アルゼンチンを強豪にしている。最後に得点するのがジノビリであるとしても、それをお膳立てするためにチームが有機的に機能しているのであって、それゆえにジノビリは、独力で打開するのに比べて楽に得点している。
 はっきりいってジノビリは、リードして得点差が開くと「跳ねっ返り」な、リスペクトを欠いたプレーも見せた。1人でドリブルを続けてボールを奪われたりもしたし、股抜きドリブルだって必ずしも必然性のあるプレーではなく、彼の「遊び」である。南米選手特有のメンタリティとして一部で糾弾される要素だが、このナショナルチームの成熟度にあっては、それも「余興」「ファンサービス」と受け入れるだけの余裕があるのだ。

 対戦相手のフランスについて。
 トニー・パーカーはベンチに座っていたし、9番の選手が出場しなかったので、「メンバー登録されているが今日は欠場」なのかと思った。彼がロスターから外れたことは後で知った。
 ただ、(当日の速報記事で述べたように)パーカーの不在はフランスチームにとっては決定的な問題ではないと思われる。パーカーが見せるようなドリブルでインサイドに切れ込んでいくプレー(ペネトレイト)は他の選手も連発していたし、ヤニック・ボコロ(#10)という選手が穴を埋めているように見えた。
 フランスの問題点は、個人能力ばかりを前面に出すペネトレイト一辺倒になってしまい、チームプレイの形が見えなかった上に、その流れを変え、アクセントをつけられる選手がいないということだ。
Argfra_3  本来なら、218センチのセンター、フレデリック・ワイズ(#15)をもっと生かしたかったはずだが、あまりその意図は見えなかった。アルゼンチンのフロントラインにパワーで負けていたために信頼関係を作れなかったのかもしれないし、ペネトレイトのためにペイントエリアを空けておきたいという意図だったのかもしれない。ディフェンスでも、ワイズを中央に置いたゾーン・ディフェンスは面白かったが、ノシオニのミドルショットや飛び込みリバウンドで崩された印象。
 まあ、個々の選手の能力は凄まじいハイレベルであるから、散発的ながらビッグプレイも飛び出す。だから爆発力は秘めていると思うが、アルゼンチンにサラリとあしらわれたように、上位チームに対するにはもう一味欲しいところだ。

 それにしても、ゲームから3日経ったが未だに満腹感がある(だから記事を書く気が薄かった)。それほどアルゼンチンは素晴らしかった。で、アルゼンチンが1位で抜けると、グループBの4位との対戦になる。そうなのだ。日本がニュージーランドに勝つと、1回戦でアルゼンチンと戦えるのだ。なんとか実現してほしいものだ。そのためには、繰り返すが伊藤俊亮の力が必要なのだと思うのだけど、彼のプレイタイムの少なさはどうしたことだろう? 監督と喧嘩でもしたのか? なんで自国代表選手の動向がこんなに不透明なのだろう。

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高スポ執筆者

  • 荒木又三郎
    高スポ創刊者にして主筆。ACミランを愛する後天性フランス人。高スポ編集雑記に本音をぶちまける。
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