ナイジェリアはバスケでも鷲だった
「スーパーイーグルス」とはサッカーのナイジェリア代表チームの愛称で、驚異的な身体能力、爆発的な攻撃力、浮き沈みの激しい精神力、などといった言葉で語られることの多いチームである。今回、世界選手権のために来日したバスケットボールのナイジェリア代表チームも、同じようなキーワードで説明できそうだ。
(2006年8月19日 セルビア・モンテネグロ75—82ナイジェリア 仙台市体育館)
ナイジェリア人といえば大柄で高身長というイメージがある。サッカーでいえばヌワンコ・カヌ、バスケでもアキーム・オラジュワンといった例が挙げられよう。そのイメージとは裏腹に、今回のチームには飛び抜けたビッグマンがいない。もちろん2メートルを超える身長の選手はいるが、210センチ以上の選手がいない。バスケの場合、特にトップレベルでのゲームともなれば、これは少々苦しい。
ところがところが、ウォームアップのためにコートへと現れたナイジェリア代表チームは、濃緑のウェアに身を包んだその姿に威圧感や存在感があり、他のチームと比べコートが狭く感じられる。サカつくの選手エディットでしか見たことのないような髪型といい、まさに大迫力なのだ。
その迫力に加えて、アフリカ人のお約束、驚異の身体能力も健在。サッカーでは「予想しないところに足が伸びてくる」などというが、まさにそれだ。「予想しないところに手が伸びる」のだ。初戦の対戦相手セルビア・モンテネグロ(SCG)はこれに戸惑っていた。通るはずのパスが通らないことでターンオーバーを犯し、ペースを失っていた。
セルビア・モンテネグロは実績もあるし、アップの様子を見ても、ナイジェリアに負けるようなチームではないと思われた。NBAのオーランドでプレイするセンター、ダーコ・ミリチッチ(#11)がチームの中心なのだろうが、試合序盤はローポストのミリチッチへのパスがことごとくナイジェリア選手に引っ掛けられ、攻め手を失った形のSCGは、ガードのポポビッチ(#4)が1人でドリブルし、周囲の4人が動き方を見失うという悪循環に陥った。そうこうするうちにミリチッチはファールを重ねてベンチに下がるという危機的状況に。それでもSCGはポポビッチを下げることでパス回しを蘇らせ、ミリチッチもアウトサイドからのシュートを狙うようにして立て直しを図った。
これが奏功したかに見えたが、ナイジェリアは踏ん張った。SCGがペースを握りかけると、粘り強いリバウンドでボールを奪い、相手を挫けさせるブロックショットで失点を防ぎ、攻めては3ポイントシュートを「ここぞ」という場面でものにし、突き放した。
SCGはナイジェリアの見えない影に脅え続けていたように見えた。真っ当に競り合えばリバウンドもちゃんと取れるし、ジャンプショットでも相手より高く飛んでフリーになれているのに、「取られるんじゃないか」「ブロックされるんじゃないか」と、はっきりいえば、ビビッているようだった。だから、私の目にはこのゲームはSCGの自滅と映っている。
ナイジェリアには特に決め手となる選手がいるようには見えないし、ゲームプランも見えなかった。「リバウンドを制する者は試合を制す」を地で行くようなゲーム運びで、その実直な努力には敬意を払うけど、突き詰めると個人能力頼りであって、相手が冷静に対処したときに、それを突き崩すようなチームプレイが出来るチームとは思えない。
相手にとっては不気味なことこの上ない、謎のチームであるが(なにしろどういう攻め方をしたいのかが見えないのだから)、上位チームには通用しないのではないだろうか。
とかいっている間に、第2戦でナイジェリアはベネズエラに敗れた。私が格下と断じたベネズエラに(腐ってもアメリカ大陸3位ということなのかなあ。言い訳じゃないけど、第1戦ではリチャード・ルゴのポストプレイでしか活路を開けないチームだったんだ)。こういう不安定なところも、サッカーの代表チームに似ている。そういう国民性なんだろうな、やっぱり。←ナイジェリア好きな私の嘆きです。
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