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2006年9月 2日 (土)

残り10秒、ジノビリの選択は

 これぞバスケの醍醐味。こういう試合を見たくて大枚をはたいたのだ。
 試合終了20秒前に、アルゼンチンはチームの大黒柱であるルイス・スコラ(#4)が2本Argesp1のフリースローを決め、同点に追いついた。スペイン・ベンチはすかさずタイム・アウト。1点でも挙げて、時間を使い切れば勝利である。
(2006年9月1日 世界選手権準決勝 スペインーアルゼンチン さいたまスーパーアリーナ)

 試合再開後、ボールを運ぶスペインの選手に対してファン・サンチェス(#6)が痛恨のファウルでフリースローを与える。
 このフリースローで試合が決するのかと思われたが、1本目を失敗。続く2本目を成功させてスペインが1点リード。しかし、残り時間約10秒でアルゼンチンのスローインとなる。
 会場の注目はアルゼンチンのエース、エマニュエル・ジノビリ(#5)に集まる。勝つも負けるも、この選手のプレイにかかっている。誰もがそれを知っている状態。
 ジノビリはドリブルしながらフロントコートに入り、ペネトレートを図る。そしてやや苦しい体勢で跳び上がると、、、、エンドライン沿いにいたスコラへのパス。スコラのミドルショットはリングにはねられる。アンドレス・ノシオニ(#13)がリバウンドに跳ぶが、ボールはルーズに。それをスペインがつかむ。タイムアップ。

スペイン75ー74アルゼンチン

 エースならあそこはシュートだろう、私もそう言いたい。スコラもパスが来るとは思っていなかったのではないだろうか。
 とはいえ、ジノビリを弁護する要素もある。この日の審判は、ジノビリがペネトレイトして相手選手に身体をぶつけられても、ファールの笛をなかなか吹かなかった。そして難しい体勢のシュートはあまり入っていなかった(皮肉というべきか、同点に追いつく直前にはやや崩れた体勢でシュートを決めていたのだが)。
 最後のプレーでも笛は吹かれなかった。体勢は崩れている。長年のチームメイトの姿が見える…。パスという選択肢も、ありえなくはない。

 どうしても最後のプレーに注目してしまうが、ゲーム全体ではアルゼンチンは劣勢で、追いついただけでも大したものといえる。
 スペインのエース、パウ・ガソル(#4)の存在感は抜群だった。ゲーム序盤、アルゼンチンはファブリシオ・オベルト(#7)などが激しい当たりでガソルを消していたものの、その代償としてファール・トラブルに見舞われた。
 しかも、ガソルの存在感はオフェンスだけではない。ディフェンスでは、ガソルと1対1になったアルゼンチンの選手は、ガソルが距離を置いているのにシュートする素振りが見られなかった(ジノビリがガソルに向かっていってファールをゲットする場面もあったが、ノーファールでシュートが外れる場面もまた多かった)。
 そのうえ、アルゼンチンお得意のパス回しも、インサイドにボールが入らないため行き詰まり、アウトサイドでの苦しいパス回しとなった。スペイン・チームのディフェンスが非常に効果的になったのは、これが理由であろう。

 スコラやオベルトの得点が伸びなかった一方で、徐々にペースつかんだガソルがローポストの1対1で得点を稼いだことから明らかなように、ペイント・エリアでの勝負が試合を分けたと言えるであろう。
 いや、もちろんスペインのバックコート陣も奮闘していて、セルヒオ・ロドリゲス(#11)などが素晴らしいプレイを見せたし、アルゼンチンの主力選手を軒並みファール・トラブル(ジノビリ、ノシオニ、サンチェス、オベルトが4ファール。カルロス・デルフィノ(#10)は5ファール)に追い込んだのには、彼らの働きも影響していただろう。

 そんな劣勢の中で追いついたアルゼンチンの底力も見事だったのだが、気になるのはパウ・ガソルだ。第4クオーターのかなり長い時間をベンチで過ごしたのだが、てっきりこArgesp2れは4ファールになったからだと思っていた。ところが、土壇場で同点に追いつかれ、残り20秒で得点しにいくという場面で出てこなかった。おかしい。同じタイミングでアルゼンチンは、ジノビリとノシオニをベンチに下げたが、これはわかる。アルゼンチンがディフェンスに回る時間帯に、すでに4ファールになったポイント・ゲッターを下げるのは常道だ。しかし、スペインが攻めようというときにエースを出さないのは、故障以外に考えられない。
 事実、試合終了後にガソルは、エースなのにインタビューも受けず、味方選手に抱えられ(見方によっては「これが、ウチらの大将だ」という、凱旋風でもあったが)、さっさとコートを後にした。決勝は大丈夫だろうか。

 盛り上がったゲームが見られれば、どのチームが勝っても構わないと思っていたが(あ、日本については別の話)、いざアルゼンチンが負けてみると、すごく残念。ジノビリというエースを擁しながらも、他の選手が持ち味を発揮してエース頼みにならない試合運びはバランスがよくて好感度が高かったから。
 スペインについては、正直なところ、「パウ・ガソルがいなければ成り立たないんじゃないの」という疑いがぬぐえないのですよ(2005年のヨーロッパ選手権はガソル抜きで4位だというのは知っているけどさ)。

【追記】
 最後にジノビリがパスを出した相手はノシオニだったらしいですね。それならば、なおのこと納得。ある意味、今回のアルゼンチン・チームの中心は、彼だったから。ジノビリが攻めている場面でも常にセカンド・オプションとしてポジションをとっていたし、リバウンドにも飛び込むし、ディフェンスでもハードチェックを見せていた(この日も、終盤にスペインからボールを奪ったプレーは特筆ものだった)。ジノビリに2人、3人のディフェンスが付いてくることも想定していたはずだから、ノシオニへのパスは予定通りなのかもしれない。
 もう1つ、土壇場でのファールは、「最後にボールを持つための」作戦通りだったとのこと。それでフリースローを2本決められることを考えたら「ハイリスクな作戦」ということになるが、スカウティングに自信があったんだろうな。まあ、パウ・ガソルの故障に気づいた上での作戦だったのかどうかも、気になるところではあります。

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高スポ執筆者

  • 荒木又三郎
    高スポ創刊者にして主筆。ACミランを愛する後天性フランス人。高スポ編集雑記に本音をぶちまける。
  • 三鷹牛蔵
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