ニヴァウドは湘南には贅沢な選手だったのか
2006年の湘南ベルマーレがうまく回るためのキーマンはニヴァウドだったはずだ。もちろん彼はポイントゲッターではないし、攻撃のタクトを振るうのでもないし、守備の要というのもちょっと違う。そういった表立った役割を他の選手が果たすために、あらゆる分野に少しずつ顔を出して手助けをしては、また別の局面へと向かっていく、そういう存在だと思われたのだ。2度目の3連覇を果たしたときのシカゴ・ブルズが、得点を取りまくるマイケル・ジョーダン、リバウンドを取りまくるデニス・ロッドマンといったスペシャルな選手を擁しながら「ピッペンのチーム」と呼ばれたことを想起していたのだ。もちろん、スコッティ・ピッペンはスペシャルなオールラウンダーであり、ニヴァウドをそれになぞらえていたのだ(褒めすぎだが)。
開幕当初、ボランチに入ったニヴァウドを見た私は舌を巻いた。必要な場面に顔を出してチェックし、危険度が高ければファール覚悟で体をぶつけていくディフェンスが見事だったからだ。彼のおかげでDFライン(サポーターでさえ補強が不十分だと感じていた)にかかる負荷が軽減されただけでなく、攻撃面でも大きな寄与があり、ワンボランチでも賄えそうな彼のプレーのおかげで佐藤悠介のポジションが高くなって、アジエルが自由に中央に進出できた。また、前線に飛び出すプレーは回数こそ多くないもののタイミングがよく、相手に脅威を与えていたと思う。
書き上げてみるとベタ褒めになっているが、実際、その時点ではイエローカードの累積が一番の心配事で、2番目の心配は「長丁場のJ2でもつのだろうか」ということだった。それほど、プレーそのものに関しては信頼して見ていたのだ。
開幕からフル出場が続いていたが、上田栄治監督の辞任で風向きが変わり、菅野将晃監督の就任初戦(21節)で途中交代したのを皮切りにだんだんと出場時間が短くなり、最後の先発フル出場は26節の草津戦、最後の先発出場は40節の山形戦で、シーズン末の11試合では3試合・16分の出場にとどまった。
このようなニヴァウドの起用状況には納得できない(いや、コンディション不良だったと言われれば返す言葉がないが)。ニヴァウドに代わって出場機会を得た北島義生が魂の入ったプレーを見せ続けたから声を小にして言うが、実際のところ、ニヴァウドを追いやるほどだったのだろうか? 北島が献身的に働いていたことは確かだし、切り替え早く前線へのパスを成功させるなど、攻撃面でも見るべきところがあったのは認める。しかし、「危険を察知して潰す」という面ではニヴァウドに一日の長があると思う。北島は忠実なチェッカーではあるが、相手を倒すというタイプではない。その点ニヴァウドは、必要と思ったときは確実に仕留めていたように思う。
こういう議論は水掛け論にしかならないのでデータを見る。
ニヴァウド先発:30試合9勝7分14敗 勝ち点34
それ以外 :18試合4勝3分11敗 勝ち点15
ニヴァウドが全試合に先発したとすると勝ち点54.4になり、全試合で先発から外れたとすると勝ち点40.0。あまり説得力がない数字だ。1試合当たりの平均得失点を見ると、
ニヴァウド先発:1.25得点・1.65失点
それ以外 :1.28得点・2.11失点
これまた微妙。このほかにニヴァウドの出場時間帯の得失点を90分当たりに換算したりもしたが、強い数字は出てこない(ちなみに、出場時は1.30得点・1.77失点、欠場時は1.29得点・1.88失点)。なにしろ、ニヴァウドが出ていた時期はチームが好調だったので数字がよいのは当たり前だし、それに対するニヴァウドの寄与度を測定するのも困難だ。
もとより、「チーム全体に好影響を与える」という長所は、数字で現しにくいからこその言い回しであるから、当然の結果でもある。
ベルマーレのようなチームにとっては、貴重な外国人枠を「数字には表れないけど良い選手」で埋めるのは贅沢な話なのかもしれない。得点を稼げるストライカーや、相手DFにプレッシャーをかけ続けるドリブラー、パラシオスのような空中要塞、ドゥンガのような強烈なキャプテンシー、そういった「わかりやすい長所」のある選手を要所に配するのが先決だと言われれば、肯くほかない。
シーズン終盤の起用状況や、アジエルの契約延長だけが発表されたこと、北島義生の貢献度などを鑑みると、ニヴァウドとの契約は今季限りだろう。非常に残念ではあるが、ニヴァウドのようなタイプの外国人選手はベルマーレには時期尚早なのだろう。代わりになる渋い日本人選手が育つことを強く望む。
« 柏レイソルの昇格を見送る加藤望の消えない闘志 | トップページ | ジャーンと佐藤悠介がベルマーレのセットプレイを立て直す »
« 柏レイソルの昇格を見送る加藤望の消えない闘志 | トップページ | ジャーンと佐藤悠介がベルマーレのセットプレイを立て直す »
コメント