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2006年12月31日 (日)

サンキュー高橋大輔! もうヘタレとは言わないよ

 9時間を超える消耗戦は、最後の最後に高橋大輔のすばらしい演技で報われた。言っておくが、消耗戦を戦ったのは我々観客である。アイスダンスの開始12:40から男子シングル表彰式22:00過ぎまで、自ら望んでこの長丁場に挑んだのだから文句はないが、腰が痛いし、粗食だし、寒いし、見続けるのも大変なのよ。
(2006年12月28日 第75回全日本フィギュアスケート選手権大会2日目 名古屋レインボーアイスアリーナ)

 この大会は「ショー」ではなく「試合」なのだ。選手どうしが競う場であって、観客の存在は前提とされてはいない。だからホスティビリティのようなものを求めるのは筋違いであるし、その分チケットの値段も(比較的)安い。約10時間にわたって切れ目なく続き、選手や審判団は入れ替わっても、観客はひたすら見続ける。熱心なフィギュアスケートファンの根気には想像を絶するものがある。
 今回ワタクシは、チケットの入手できた2日目だけではあるが、熱心なフィギュアファンの行動をトレースすることを試みた。

 12:15会場到着。開場の11:40に間に合わない時点でマニアの域には遠く及ばず。男子シングル最終組の6人が、各自の使用曲を順次流してもらいながら練習中。彼らの出番は21時過ぎだからウォーミングアップとは違う。「氷の感触を確かめる」ってことなのか? あるいはナイトゲームを前にしたNBAチームが午前中に行うトレーニングのような意味合いなのか? ジャンプなどが決まると拍手が起こる。この時点で各選手の調子を見ておくのが通ってものらしい。
 12:30練習終了。製氷タイム。

 12:40アイスダンスの競技開始。まずは6分間練習があり、その後にオリジナルダンスの競技。
 感想。木戸さんはテレビで見るより実物のほうが断然カッコいい。リード組は現状ではフェートン号事件ぐらいの印象。黒船ぐらいの格になってほしい。アイスダンスやペアにいい選手が出て欲しいと切に願う。

 ここで製氷をして、女子シングル・ショートプログラムが始まる。出場選手が29人という大所帯で、13:20頃から始まって終了が17:00過ぎ。
 第1組は5人。最初は有名でない選手の登場だが、全然退屈だとは思わず、普通に見ていられる。ただし採点については理解の範囲外で、見た感じの好感度の高低と点数の高低がうまくマッチしない。たぶん私が素人だからなんでしょうよ。
 3人目にグランプリ出場組の澤田さんが登場するが、観客側もウォーミングアップ中な気配でノリノリとはいかず。でも本人がそれを気にしているようには見えない。自身の出来映えに関心が集中している感じがする。気のせいかなあ? ただ、会場からは「○○先輩がんばってくださーい」といった声が飛び交うので、ワタクシなぞは部外者だと自覚させられる。その辺も「試合」ならではなのだろうな。
 5人が終わり、次の組が6分間練習に入る。安藤美姫や浅田真央がいる組で、場内の空気が変わる。この2人はさすがというか、どの角度から見ても衣装がキラキラしている。浅田真央の衣装なんて、テレビでは普通のピンクに見えるが、実物は光もの三昧。
 すみません。演技ももちろん「さすが」でした。安藤美姫が途中で肩を痛めたなんて、露ほども感じませんでしたよ。浅田真央の無重力ぶりはコンビネーションジャンプだけでなく、普通に滑っているだけでも感じられて、音がしないのですよ。
 で、この組の6人が終わって製氷タイム。会場内は飲食禁止なのでロビーに出ると、同じように考えている人が多く、人ごみでごった返している。事前に調達していたパンを食べ、そそくさと席に戻る。製氷と6分間練習で20分ほどだろうか。
 次の組には恩田美栄がいて、テレビ局もフューチャーする太田由希奈さんがいて、そのほかにマニア達が注目する選手がいるらしい。が、客席の雰囲気は弛緩し始める。安藤、浅田の後で一息ついた気配の中で恩田さんは完全燃焼しきれず、曲とプログラムの恐ろしいミスマッチあり、期待の若手による将来性あふれるが安藤・浅田と比べては…という演技あり、とまあ一通りのパターンが出尽くしたのかなと思われた。
 第4組は著名選手が入っていない6人で、テレビでは見ることのできない「試合の雰囲気」を体感するのにもってこいだ。その証拠に、放送席のアナウンサー、解説者、ゲスト解説者、ゲストタレントの面々は中座した。奴らに一泡吹かせてやれ! と念を送り続けたが及ばず。事前にわかっている選手の格が、ほとんどそのまま得点に現れる採点方法には全然魅力を感じない。
 第4組が終わると製氷。最終組には浅田舞、中野友加里、村主章枝といった有力選手がいることもあり、ロビーに出る人も少なく緊張感が高まる。6分間練習が終わると、引っ掛けておいた上着をさっと羽織って氷から上がってくる中野さんが男前でカッコイイ。エッジカバーだけでなく上着もコーチが手渡す光景が男子でも女子でも一般的なので、中野さんの独立独歩を貫くど根性路線を勝手に読み取ってしびれてしまった。
 中野さんのスピンは確かに回転も早いしポジションチェンジも滑らかだった。テレビで言われてもピント来ないが、比較対象が多い中では際立っている。村主さんについては29人のトリでの登場だったが、かっちり締めてくれた。ガッデムポーズ(最初のジャンプの後で両腕を顔の前で閉じる動作。私の中ではあのとき「ガッデム」という声が聞こえるので)はシーズン当初に比べて軽くなった気がするが、なにしろボレロを使って文句を言わせない出来なのだから。点数についてはもう関心の埒外。
 というわけで女子シングルのショートプログラムが終了。ダラダラ書き付けたが、これでもザクザク端折っている。現場の長さときたら、再現不能だ。

 ここで、製氷を挟んで男子シングル・フリープログラムが17:40から始まるというアナウンスを背中に聞きながら、私は会場を後にした。トレース断念。いや、お腹がすいて寒いし、先はまだ長いし、ボクそんなに体力ないのです。
 18:50頃に戻ると、客席の入りは4~5割ほど減っているだろうか。リンクでは第2組の演技中。フリープログラムは1人当たり4分半なのだが、すいません、3分ぐらいで力尽きて眠くなってしまう。きっと食事をしたせいだ。そうに違いない。
 全24人のうち半数が終わる頃に放送席の皆様も、テレビカメラを操る方々も帰還。よーし、ボクも気合を入れるぞ! 製氷の間にテンションを上げる。

 第3組が始まるとまずは柴田嶺から。GP参戦者がSP11位ってそりゃないだろうと思うが、そういうお叱りは他の人に譲る。彼がトップに躍り出たほか、このグループはなかなか見応えがあった。男子らしいスピードと活気と元気がある選手もいたし、大柄で期待させる選手もいた(女子の武田奈也さんもそうだけど、身長が高いというだけで会場での印象がだいぶいい。日本人選手もライサチェックばりに回し蹴りをして欲しいものだ)。
 最終組が6分間練習に入ると会場はヒートアップ。客席の入りも回復し、放送席ではライトを当てて収録開始だ。
 神崎範之は「大柄組」で随一の演技。リンクの周囲に引退の気配が色濃く漂っていたが、もしそうだとしても有終を飾る出来映えだったのではないか。
 中庭健介は老若男女にわたる動員力を発揮。演技は不本意だったろうが、試合終了後にサポーター席に寄って行って挨拶するのが堂に入っていた。
 南里康晴は今までレーサーの人というイメージしかなかったが認識を改めた。今回は大人な演技であった。
 織田信成は今回もジャンプでミスがあり万事休す。彼の膝の柔らかさからすると失敗は想像しにくいのだけど、ここのところミスが続いている。あの柔らかさも先天的なものではなく、コンディションとテクニックの賜物なのだろうな。とはいえ彼にミスは似合わないので、今後はノーミスして(浅田真央口調)、「織田君のジャンプの失敗を見たことがある」と自慢させて欲しいものだ。
 小塚崇彦はジャンプがからっきし、その他は感心させられる出来。だから点数よりは印象がよいのだけど。

 そして大トリで高橋大輔の登場。
 まあ織田君が躓いたので勝負という意味では余裕があったのだけど、それにしても素晴らしかった。4回転をはじめとしてジャンプを次々と決め、これでもかとジャンプを飛びまくり(いや、予定回数どおりなのでしょうけど、あくまでも印象です)、終盤のステップもそのままの勢いで押し切り、ラストのスピンでもスピード十分。以前はフリープログラムの終盤に失速することがあり、私の中では「ヘタレ」「ガラスの心臓」「三杉君」といった位置づけをしていたが(最後のは嘘)、それらは全部撤回する。先日のNHK杯でもフリーでパーフェクトな演技だったのだけど、まだ信用していなかったわけで、それも含めてごめんなさい。もう2度と「ヘタレ」とは言いません。
 演技終了後は、この日ほとんど唯一のスタンディング・オベイションだったがそれも当然。最後の最後に良いものを見せてもらったという満足度は高く、大団円というにふさわしかった。

 表彰式は22:00から。遅っ! フラワーボーイズ&ガールズとモーニング娘。はもう仕事をしちゃだめだよ。
 ここではなぜか織田信成が貫禄を見せた。というか高橋大輔がヘナチョコなのが問題。1位の高橋が先に紹介されて表彰台の中央に上り、2位の織田が次に紹介される。表彰台に向かっていき1位の選手を祝福するのだが、このときの織田君の動作に妄想でセリフを当てると「やあ高橋君、おめでとう。でも次回はボクがいただくよ。HAHA」というもので、欧米人ふうに片手を差し出した堂々たるものだった。これを受ける高橋は台の上から両手を出して頭を下げながら「あ、織田さん、ありがとうございます」という風情だった。全然駄目。握手をするときにお辞儀を併用するのは日本人がよくやる間違いで、自分が下僕であることを示すボディランゲージだ。駄目な日本人政治家のステレオタイプだ。
 高橋大輔は世界で戦うのだからその辺は勉強して欲しい。まあ、髪型、しゃべり方が改善されたから次はそれが課題だな。

 というわけで、長い荒行は終わった。今日は幸いにも最終組が揃ってまずまずの演技だったし、最後の最後に高橋大輔のパーフェクトといってよいドラマチック演技があったから尻上がりの盛り上がりで報われた。私のようなトーシローにとってはほかに考えられない報われ方だが、いつでもこうだとは思えない。先日のグランプリファイナルのように、総倒れのサバイバルの末に消去法のように優勝者が決まる場合だってありそうだ。
 それでもマニア達はリンクに向かう。彼らの求めるものは何なのか。今日のような僥倖なのか、未知の選手の発見なのか、目をつけていた選手の成長に目を細めるのか、はたまた、これだけの長時間にわたる観戦によって得られるある種のトランス状態なのだろうか。謎は解けなかった。

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高スポ執筆者

  • 荒木又三郎
    高スポ創刊者にして主筆。ACミランを愛する後天性フランス人。高スポ編集雑記に本音をぶちまける。
  • 三鷹牛蔵
    高スポの陰の支配者。湘南ベルマーレを愛する先天性ジャパニーズ。

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