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2007年1月23日 (火)

ゼニになる走塁(run for the money)

「オレがもめごとに巻き込まれるのは、いつも攻撃的な走塁をしたときのようだ。野球のあるべき姿は、ともかくフルスピードというオレの信念がそうさせるのかもしれない。」
 内野ゴロを打って一塁へ全力疾走したのが「チャーリー・ハッスル」というニックネームの由来である。走塁はハッスル野球の中心的な要素なのだ。通算盗塁数198は決して多くないが、アグレッシブな走塁がピート・ローズの持ち味であり、本人も自負するところであったようだ。
(『ピート・ローズのハッスル野球教室』訳・土屋一重 報知新聞社 昭和54年3月31日初版発行)

 走塁について語るに当たり、初めに2つのプレーが示される。
●1970年のオールスター戦、延長10回に相手捕手に激突して得点したことで、「(相手であった)アメリカン・リーグのファンには暴れん坊といわれ、ナショナル・リーグのファンにはヒーローとして迎えられた」。
●1973年には併殺を阻止しようとして相手内野手に「すごいスライディングをやって悪者になってしまった」が、併殺は防げなかった。そのうえ「両チーム・ナインの乱闘にまで発展し、その後遺症はいまも消えていない」。
 この2つのプレーは、ピート・ローズの走塁哲学を語るものだという。
(1)常に全力を尽くすこと
(2)いつも頭を使うこと
(3)相手が完璧なプレーをしない限りアウトにならないという信念でともかく突っ込む
の3つだ。これを示したうえで走塁についてローズは語る。

 走塁はボールを打った瞬間から始まる。まず覚えておかなければならないことは、いったんボールを打ったら、そのボールをもうどうすることもできないことだ。だから打球の行方などみる必要はない。
 打球をみていれば、走るスピードが鈍る。特に内野ゴロだったら、走るスピードが勝負になる。もし打球が抜けていれば一塁コーチがベースを回れ、と指示するから、それからでも余裕は十分にある。
 内野ゴロでやることは一つ、一刻も早く一塁ベースへ達することだ。平凡なゴロを打ってしまったなんて嘆いたって始まらない。むしろ内野手がファンブルしてくれることを願って走るだけよ。全力で走れば野手の方だって、急がなきゃとあせってファンブルするかもしれないのだ。
 ベースへ到達したらどちらかの足で手前の半分を踏もう。なぜ手前半分を踏むかって? それだけ自分に近いじゃないか。それだけ時間も節約できる。それだけ有利ということよ。
 ヒットになりそうにない打球がヒットになれば、それだけ打率も上がるってものさ。これこそハッスルだ。――なにかをやってみるんだ。――成せば成る――。

 さらに、「オレが走塁の名手といわれる理由は、攻撃的だからだ」としたうえで、シングルヒットを二塁打にする心構え、一塁から三塁への走塁、リードのとり方、盗塁の心得、賭けをすべき場合とそうでない場合、ライナーの判断方法、などを説くが、細かなテクニックについては本稿では省く。

 野球をやるにあたって、忘れちゃいけないことといえばつぎのことだろう。「微妙なときはすべれ」だ。クロスプレーではいつもすべった方がいい。すべりもしないでタッチアウトなんてお粗末きわまりない。スライディングはもちろんオーバーランの防止にもなる。
 オレは草野球時代からずっとヘッドスライディングをやってきた。オレにとっては全く自然にやれることで、最高のスライディングと思っている。まずベースに向かって頭から突っ込むことで、勢いがついてより早くベースへ着ける。
 つぎにボールがそれたとき、ボールの行方をみることができるからすばやく起き上がってつぎの塁をねらうことができる。ボールがそれたぞ、とコーチが教えてくれるのを頼りにしていたら、貴重な時間をムダにし進塁もできないだろう。
 またヘッドスライディングは最も安全なスライディングということもできる。確かに指や手をスパイクされることはあるが、たいしたケガにはならない。むしろ足からすべれば足首をスパイクされる恐れがある。足首は体重を支えているからケガをすると治りにくいし、時間もかかるものさ。
 
 ダンスは接触の競技だが、野球は違う。衝突のスポーツだ。そして衝突が起こりやすいプレーは2つある。ひとつは併殺を阻止するプレーで、もうひとつは走者とボールが同時にホームをねらうときだ。
 最近は併殺を阻止しようとする場合、スライディングするより送球しようとする野手にぶつかっていく傾向が強い。送球させないことと、送球しても悪送球を余儀なくさせるのがねらいよ。
 この場合はヒザから突っ込むのがいい。スパイクを高く上げて突っ込むのはいけない。併殺を阻止することが目的で、相手を傷つけようというのじゃないんだからな。

 本塁へ突っ込むたいていの場合はスライディングするのだ。それが正しいやり方だからだ。微妙なときはすべれ、を忘れるな! 捕手が本塁をブロックして、スライディングがうまくいきそうもないときは、オレなら捕手を倒そうとする。あまりやりたくないことだが、相手が猛牛にちょっかいをかけようというのだから、ツノのお見舞いぐらい仕様がないだろう。
 フォッシーとのプレー(注:冒頭で挙げた1970年のオールスター戦でのプレー)でこれが現実に起こったのよ。
 2人ともケガをした。だからできることならやらなくてすむ方がいい。しかし仕方がない場合は衝突が起こることを相手に知らせてやるのも作戦だ。

 アグレッシブに次の塁をねらい、相手のミスを誘発するというのがピート・ローズのめざすものだ。走塁においてハッスルするというのは、非常にわかりやすい意見で、まったく頷くほかないのだが、ローズはあくまでも読者を鼓舞してこの章を締める。

 同点のときは、なんとしても内野ゴロをヒットにするのだ。そうすればみんなが喜んでくれる。ゴロを打ってもハッスルしないようじゃ、自分の妹にだってブーブーやじられるぞ。

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  • 荒木又三郎
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