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2007年5月23日 (水)

改善図ったラモス=ヴェルディと中位クラブの処し方

 ラモスの続投を無条件に認めたヴェルディに対し、われらがベルマーレはあまりに無力だった。アジエルと加藤以外のプレーに得点の匂いは感じられず、微妙なジャッジで転がり込んできた数的優位も生かせない。一方、4-4-2を捨てて中盤の改善を図ったヴェルディは、最後まで攻撃の姿勢を貫き、ぎりぎりで勝利をもぎ取った。好天の国立競技場で真っ赤になった両腕を眺めながら、あえて苦言を呈したい。

 京都戦の大勝(4-1)で連敗をストップしたものの、チームが突然に生まれ変わるはずもない。守備面のひどさには目も当てられず、攻撃に関しても個人技頼みの中央突破に固執するばかり。こうした無為無策ぶりはまさしく監督の責任だと思うが……。これが、ワタクシが試合前に抱いていたヴェルディの印象だった。
 ところが、である。好天のピッチに並んだメンバーをみて、期待は半ば裏切られた。この日、ヴェルディベンチ(あえてラモスとは言うまい)が選択した布陣は、3-4-1-2。連敗街道を脱出した京都戦から用いてきた中盤をひし形に配する4-4-2をあっさりと捨ててきたのである。
 冒頭に挙げた印象はまさに、中盤が機能していないことを指摘したものに他ならなかった。結果こそ圧倒した京都戦では、守備への切換えが絶望的に拙く、サイドチェンジにまったく対応できなかった。攻撃は単調、というより外人2人がやりたい放題であるため、サイドから攻めるような器用さは皆無。そこにきての3-4-1-2のチョイスは、カスカスだった中盤を秩序立てようとの精一杯の試みに思えたのである。

 密かにベルマーレの勝利を願っていたワタクシにとって、それは一抹の不安を感じさせるに十分なものだった。そしてその不安は前半2分、ヴェルディのファーストチャンスで肥大する。
 自陣から前線に放り込まれたロングボールを、廣山が体を張ってルーズボールにする。その瞬間、なんとヴェルディの選手が4人も走り込んできたのである。そのうちの一人がダイレクトで右サイドの別の選手にはたき、さらに彼の前のスペースに走り込んだフッキへとボールがわたる。こうなれば、1対1でフッキを止められないベルマーレのディフェンス陣になすすべはない。ペナルティエリアまでドリブル突破したフッキは、ニアでフリーになっていたディエゴにパス。しかし、ダイレクトで狙ったシュートは、ベルマーレの選手が必死に伸ばした左脚に運よく当たって、事なきを得たのである。絶体絶命のピンチだったことはいうまでもないが、それ以上に、大胆なオーバーラップからあっけなく生まれたサイド攻撃だった。
 むろん、3-4-1-2の効果は攻撃のみにとどまらなかった。京都戦ではあれほど敵の選手を捕まえられなかった切換え時のディフェンスが、決定的に改善していた。このあたりは速攻を仕掛けられないベルマーレにも問題があるわけだが、個々の役割が明確になっていたのは間違いない。まさに3-4-1-2の魔力だ。古今東西、これ以上にインスタントに守備面を落ち着ける陣形はないと思う。身近な例でいえば、岡ちゃんやジーコの代表がそうであったように。
 ともあれ、1対1どころか2対1でも危ういフッキ、ディエゴに振り回され、ベルマーレは前半の段階でさんざんにチャンスを謙譲した。先制点は時間の問題かとも思われたが、そこはそこ。時折訪れる決定機は何とか回避し続けたのである。

 皮肉なことに、試合を面白くしたのは主審の滑稽なジャッジだった。前半32分の廣山から始まった警告ラッシュは、その後の10分間で計6枚にも達した。極めつけは38分で、2枚目となった福田が退場に――。しかし、そもそも最初の廣山のプレーがイエローなら、あれは福田ではなく、飛ばなかった村山にこそだされるべきではなかったか? 後半のベルマーレの反撃には期待が沸きつつも、相手に退場者が出て喜ぶベルマーレサポーターに閉口するワタクシであった……。
 そんな思いが通じてしまったのか、ベルマーレは人数面での優位をまったく生かせなかった。ヴェルディサイドにとって心強かったのは、廣山と服部の存在であろう。彼らに中途半端なポジションをとらせることで、思わぬ不利を跳ね返した。2人は各々のサイドで少々低めに構えており、必要に応じて本来のものとは異なる役目を果たす。当然、どこかに無理が出るはずなのだが、ベルマーレは最後までそこを突けなかった。むしろ、中里→鈴木の交代で中盤をひし形にしたことで、左サイドの加藤望の裏を突かれる始末。ヴェルディのほうも、こころなしか個々の役割がよりハッキリしたように思えたのは、気のせいか。シュートを数多く打たれながらも強気のラモスは、あえて低めに構えることなく、陣形はそのままにフレッシュな選手を次々と投入。試合中にはそんなことを思う余裕はなかったが、決勝点は必然だったのかもしれない。

 試合全体を通して感じたのは、強者として振る舞うのは7位のヴェルディで、弱者として生真面目に守備に奔走するのは5位のベルマーレという図式である。むしろ、攻撃に対する姿勢が、そのまま結果につながったとも思えた。ヴェルディのホームであること、個々の能力に差があることを考慮すれば、一面では仕方がないともいえる。しかし、10対11になってからのプレーは、あまりにもいただけない。久しぶりのスタジアム観戦で思ったのは、ベルマーレのような中位レベルのクラブチームが、何を売りにすべきなのかということだ。
 例えば、まるで3バックのように4バックが絞り込む光景をみる限り、まさか守備の美学とは答えまい。そもそも、得点しなければ勝てない以上、観客はゴールシーンをみるためにスタジアムに足を運ぶのだ。しかし、ボールの収まらない2トップは、味方のオーバーラップを引き出せない(廣山ですら引き出せるのに?)。サイドバックはあまりにも役不足で、クロスをインサイドで上げようとする。唯一の期待はアジエルのドリブルと加藤のミドルシュートなのだが、周囲にはその武器を生かそうとする姿勢があまりみられない。
 J2に限らず、日本全体の問題でもあるのだが、サイドバックないしウイングバックの人材は極めて乏しい。監督の立場からすれば、ここに攻撃センスのある人材がいないと、戦術の選択肢は非常に狭まる。最も安易な解決方法は、守備を固めて攻撃の舵取りをFWと10番に預けてしまうことだが、それではあまりにも芸がなさ過ぎる。ヴェルディ戦をみる限り、ベルマーレの戦術はこれと五十歩百歩であろう。むしろ決定力のあるFWがいない分、もっと苦しい。
 ベルマーレの台所事情をよく知らずにいうのも申し訳ないのだが、1トップにしてその下にアジエルと加藤を並べるというのはダメなのだろうか。むろん、中盤は4人にして、サイドには多少なりともまともなクロスを上げられる人材を置く。少なくとも、ベルマーレには名良橋がいるはずでしょ。陣形を横に広げてポイントを増やせば、両エースが活躍する隙間もできてくる。
 むろん、これでうまくいくという自信があるわけではまったくない。そうではなくて、このかたちであれば、観客はより期待を持てるのではないかということ。少なくとも、名波のプレーを期待して行ったワタクシは、ベルマーレのファンにはなれなかったわけで。
 でも、22番の彼には、好印象を持ちました。サイドバックは無理ですが、あの思い切りが別の方向へ働けば、果敢なボランチにはなれるかも。偉そうなこと言ったって、技術やセンスのみが愛されるわけではないのです、ここでは。

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コメント

試合中に隣席の荒木様の反応を見ながら「松本昴聡(#22)についてはフォーローできないかなあ」と思っていたのですが、彼の思い切りは好印象でしたか。それはよかった。左前方に通した大きなサイドチェンジは今年の湘南では特筆もののプレーでしたし、後半は確かに積極的に攻め上がっていましたからね。まあ、及第点を与えたというわけではないことは分かっていますが。
台所事情という点では、前線でボールをキープするFW(梅田)も、SBに起用される攻撃的な選手(尾亦や財津など)も、SBの軽いディフェンスをフォーローするジャーンも故障中で、監督としても望む布陣を敷けていないのだと思います。その点では同情しますが、このゲームの采配は疑問でした。1対1で止められないフッキが前半から両サイドに進出していたので、そのフォローのためにボランチは2枚必要だったと思うのですが(ボランチとSBで対応)、そこを1枚にしてしまい、フッキについて行かなくなった。そのため、攻撃的にしたかったはずの加藤望、鈴木将太がフッキの前進に対応したり(しなかったり)とチグハグになっていた。
この日はヴェルディの3バックが湘南のスピード系小柄2トップとの相性抜群だったので、湘南としてはそこに手を入れる必要があったと思いますが、ヴェルディの選手達がこのぐらいのパフォーマンスを見せると、どのみち苦戦は必至でしょうけど。

それにしても、「われらがベルマーレ」とはありがたいお言葉。ミランは今晩勝てるとよいですね。

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高スポ執筆者

  • 荒木又三郎
    高スポ創刊者にして主筆。ACミランを愛する後天性フランス人。高スポ編集雑記に本音をぶちまける。
  • 三鷹牛蔵
    高スポの陰の支配者。湘南ベルマーレを愛する先天性ジャパニーズ。

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