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2007年8月14日 (火)

日本バスケの敗因と新リーグの欠陥

 北京五輪の出場権を云々する資格なんかまるでなかった。アジア男子バスケットーボール選手権で日本は史上最低の8位という結果に終わった。中国が本気だったら9位ということだぜ、おい。

●桜木ジェイアールは間に合わなかった
 大会前に鈴木貴美一ヘッドコーチは「1人で35分間出るとか、誰か1人に頼るとかそういう戦いはしない」と言ったらしいが、それは願望であり、またHCに求められる当然の「嘘」である。桜木ジェイアールがチームに欠かせない柱であることはメンバー構成を見れば一目瞭然だったが、それを認めるわけにはいかなかった。桜木を中心選手と認めてしまっては、4月から行ってきた8回の強化合宿の意義が根底から崩れ去ってしまうのだから。HCの立場では「桜木も歯車のひとつ」と言うしかなかったのだ。
 そうはいっても日本である。オールスター選手が集まればチームとして成り立つアメリカとは違う。いや、アメリカですら最近は即興の寄せ集めでは勝てなくなっているのだ。まして日本は、即興などでは通用しない。代表チームとして連携を高め、有機的な組織を作り上げる必要がある。だからこそトータルで10次にわたる強化合宿を組んだはずなのだ。
 ここに矛盾があり、それは克服できなかった。
 桜木ジェイアールは誰よりも多く試合に出場し、2次リーグ以降には35分前後のプレータイムが与えられた。日本は、彼のリバウンド力、ローポストでの得点力に依存しきっていた。強豪国相手に日本のリバウンド数は劣っていたが、それでも桜木がいなければもっと酷かったであろう。
 ただし、メンバー発表時に期待された「ジェイアールはパスもうまい」という部分は、発揮されなかった印象だ。たとえば青野文彦がローポストでボールを持ったとき、その裏側に竹内公輔が走りこむような場面が、1次リーグでは見られた。それに対して桜木がローポストでボールを持ったときにはその動きはなかった。2次リーグの対戦相手が強いからではないだろう。もちろん桜木が1対1で攻めるためにゴール下のスペースを空けたという理由もあるだろうが、それよりも連携が取れていなかったと思われる。その傍証はアウトサイドの選手の動きだ。桜木がボールを持ったとき、外の選手が効果的に3ptポジションを取ることはほとんどなかった。ガード同士でスクリーンをかけてシューターをフリーにするような動きだ。
 桜木にボールが入ると他の4人が様子見になってしまったのだ。少なくとも私にはそう見えた。もちろん棒立ちだったわけではないが、一瞬の動き出しが遅れていたと思う。そのため、流れるようなパスワークにはならなかったし、桜木は多少無理でも1対1で攻めるのがベストになっていた。
 結局のところ、桜木をチームに組み込むには時間が足りなかったのだ。そして桜木の孤立によって、本来エース格の働きを求められていたはずの竹内公輔のプレーも制限され、大一番の韓国戦に至っては、15分程度のプレータイムしか与えられなかった。帰化日程をコントロールできなかった以上、やむを得ない部分もあるからチグハグとまでは言わないが、残念な内容だった。

●強みではないガード陣
 弱点とされるインサイドに桜木ジェイアールを加えて対処した日本だったが、ではアウトサイドはどうだったのかといえば、決してストロングポイントとはいえなかった。大一番の韓国戦で相手ガード陣に大量得点を許したことを考えれば、インサイドに負けず劣らず弱点だったのではないか。
 佐古賢一なんて年齢的にもう通用しないという声もあったようだが、では五十嵐圭と柏木真介が通用したかといえば、そうでもない。確かにスピードはあるし、速攻で走ればチームに勢いをつけられる。しかし、機を見て自分で得点することで相手にプレッシャーを与えられたとは思えないし、相手選手のペネトレイトには脆さを見せた。
 実際には個々の能力だけが問題なのではなく、チーム戦術の欠如が主な原因かもしれない。桜木を組み込んだチームオフェンスの戦術は間に合わなかったのだし、ガードが抜かれた後のカバーリングも大会中盤まではほとんど見られなかった。
 そういったエクスキューズがあるにしても、日本のガード陣はアジアの強豪に対してストロング・ポイントにはなっていなかった。インサイドで劣勢に立つのであれば、ガード陣だけでも優勢になっていなければ戦えないのは言うまでもない。
 日本ガード陣の劣勢は、よく考えれば国内リーグ戦でも露呈していたのだ。トヨタが連れてきたポイントガードのドロン・パーキンスやルイス・キャンベルの暴れっぷりを思い起こせば、今大会での劣勢も想定の範囲内といえよう。

●新JBLへの懸念
 弱点は弱点と認識し、対処するべきだ。その意味で、国内リーグ戦で優秀な外国人ガードと戦うということは、日本ガード陣の強化のためには有効な手段だ。従来の外国人獲得の常識(インサイドに外国人のビッグマンを入れる)を覆して、ガードに外国人選手を入れてリーグを制したトヨタの戦略は、日本バスケ界のレベルアップのためには効果的なもので、感謝すべきなのだろう。もちろん、日本人ビッグマンを持っているからできる策ではあるが。
 しかし、今後はトヨタといえども「ガードに外国人」という策はとれないかもしれない。
 2007年秋に開幕する新「JBL」は、外国人選手の起用を従来より制限する。「1チーム2人、オンザコート1人」である(初年度は経過措置で「1チーム2人、オンザコート2人」)。このルールでは、ガードの外国人選手を獲得するハードルが高くなる。日本のガード陣は、以前のようなぬるま湯に戻るのだろうか。
 
●今大会の男前大賞は…
 最後に選手をほめる。
 今大会の日本で最も好印象だったのは桜井良太。ゴールに向かって一直線に突進していくプレイを見せたのが彼だけだったから。チャージングを吹かれる場面もあったが、それにしたって、あの手のプレイは日本に必要だし、不足していた。今の日本に必要なチャレンジャーらしいプレイだった。
 川村卓也はシューターとして1ステップ上がった印象。「オオー!」っていう感じの距離の長いシュートや苦しい体勢のシュート、ファウルされながらのシュートなどを数多く決めた。課題は安定感か。チームとしてボールを回し、フリーになったシューターが淡々と当たり前のように決める、という場面では折茂武彦の安定感にはまだ及ばないように思われる。川村はどちらかというと北卓也の系譜に属するのかもしれないが、チームが強くなるためには折茂系のシューターが必要なのだ。
 番外として伊藤俊亮。メンバーから外れた際に自身のブログで状況を説明し、その後もチームを思うコメントが続いていた。彼が、敗退後も鈴木貴美一ヘッドコーチを擁護した意味は大きい。私としては韓国戦で伊藤の姿が見たかったのだが。

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高スポ執筆者

  • 荒木又三郎
    高スポ創刊者にして主筆。ACミランを愛する後天性フランス人。高スポ編集雑記に本音をぶちまける。
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