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2007年10月10日 (水)

ミランの憂鬱は続く

 現状維持路線を延々と続けてきたツケが、ミランを襲っている。点が取れないうえに、守りきることもできず、遂にはCLでも敗北を喫した。もはや欧州王者の風格はなく、応急処置の手段すら見出せない。

 最大の得点源がカカのPKだというのだから、頭が痛い。昨季も指摘したFWの人材不足は、ロナウドの離脱によって致命的な状況に陥っている。かつて、国内で最も期待されていたはずの若手ストライカーは、まるで透明人間になる能力を身につけたかのように、ゲーム中に消えまくっている。もはや、カカとセードルフの視界には、ジラルディーノの姿は映っていないのかもしれない。インザーギは孤軍奮闘を続けているが、悲しいかな、今のチームには彼の唯一の才能を生かすだけの余裕がない。そもそも34歳のベテランに、多くを求めるのは気の毒だろう。
 いずれにしても、稼動できるFWが2人しかいないこと自体、強豪らしからぬことだ。そもそも、元怪物の長期離脱は予測されてしかるべき事態だったし、にもかかわらず冬まで使えないパトを獲得するにとどまった移籍市場での失敗は明らかだ。オリベイラを放出した一方、新たにウインガーを獲得したわけでもない。ロナウジーニョだ、エトーだと大物ばかりを狙っては、失敗を続けた首脳陣の罪は重すぎる。

 移籍市場での失敗は、FW陣にとどまらない。ネスタ頼みのDF陣もまた、あまりに厳しすぎる。
 カラーゼはしょせん二流のストッパーであり、ミランのスタメンとしては物足りないといわざるを得ない。そしてボネーラは、あまりにも若すぎる。マルディーニのフル稼働が期待できない以上、是が非でも一流のセンターバックを確保すべきだった。最低限、スタメンのセンターバック2人には、DFライン全体をみて対応できる人材を揃えるべきだったのだ。
 また、サイドバックにしたところで、ヤンクロフスキーこそようやくマーキングというものを理解し始めたようだが、オッドはあまりに心細い。カフーを獲得して以来、ここはネスタがカバーリングすべきところなのだが、彼は今やカラーゼ(あるいはボネーラ)のフォローもせざるを得なくなっている。結果、敵の二の矢、三の矢には対応できていない。それでも、攻撃面で両サイドが貢献しているのならまだ良いのだが、オーバーラップは遅く、ピルロのパスが合うことはほとんどない。大きな期待とともに獲得したオッドにしても、まともなクロスを供給しているとはとてもいい難い。

 結局のところ、チームを支えているのは相も変わらず中盤だ。ピルロを底に置くイレギュラーなスタイルは、今も誇るに値するポテンシャルを持っている。しかし、現状の問題は、その中盤に手を入れてしまったことにある。
 昨季の成功?で自信を深めたらしいアンチェロッティは、本来は逃げ切り用のオプションだったはずの「プラス・アンブロジーニ」をメーンに据えている。FWを減らし、カカをセカンドトップ、セードルフをオフェンシブハーフに上げたものだが、これが攻撃の幅を狭めている気がしてならない。以前のスタイル(セードルフ、ガットゥーゾ、ピルロの3ボランチ)においては、左に張り付かざるを得なかったセードルフが、カウンターが機能しない場合の遅攻を実現していた。しかし、ここにアンブロジーニを当てはめた今、攻撃はあまりに中央突破に偏りすぎている。もっとも、FW2人ではワントップにせざるを得ないという事情もあろうが。
 今さらいうまでもないが、セードルフは中盤のオールラウンダーだ。無尽蔵のスタミナを誇り、攻守双方に貢献するだけのスキルを持つ。何より素晴らしいのはボールキープ力で、この点に関しては同タイプの選手たちに大きく水を空けているはずだ。彼のその能力こそが、ミランの緩慢なアタックを支えてきた。左サイドでタメをつくり、いささか不安定なヤンクロフスキー(かつてはセルジーニョ、カラーゼ)のオーバーラップを生かしてきた。しかし、新たによりオフェンシブなポジションを与えられた彼は、より中央でのプレーを謳歌している。本人が望んでいるのは分かるのだが、チームとしてはあまりにも攻め手がなくなっている。

 結局のところ、今のミランは現状維持路線を続けてきたツケを払わされている。ピルロを底に置く中盤のスタイルは、02~03シーズンから続いているものだ。03~04シーズンにカカを獲得したものの、中盤の構成は何も変わっていない。セードルフ、ガットゥーゾ、ピルロの3人はこの5年間、不動のメンバーとしてDFの前に陣取っている。
 このことは、相手にとって長所も短所もすでに明らかだというのはもちろん、別の決定的な事実を示す。つまり、ここ数年、ミランの中盤における選手補強はことごとくムダだったということだ。ダッラボーナ、ドラソー、フォーゲルなどは、いずれもほとんど出場機会に恵まれず、チームを去っていった。
 確かに、近年のミランは相応の結果を収めているかもしれないが、ビッグクラブにとって選手の入替えは欠かせないものだ。常に一定レベルの成績を収めながら、世代交代を進めていかなければならない。また年間70試合近くを戦ううえでは、ターンオーバーを可能にする豊富な戦力を維持していく必要がある。さらに、純粋に戦術的な面からしても、新たなメンバーを獲得し、これまでとは異なる武器を持つことは有効だ。ハッキリいって、ここ数年のミランは、これらすべてを無視している。30歳前後の即戦力(フォーゲル、ドラソー)を獲得しては定着できず、反面、グルキュフのような未知数の若手を獲って持て余す。彼にセードルフの代役を期待するのは、そもそも間違っている。タイプが完全に異なるのだから。
 つまり、仮に必要最低限の人材獲得を果たしていたなら、今この時期にも打つ手はあったはずだ。マンネリでお疲れ気味の中盤を使い続けず、新しい血をもって臨めたはずである。しかし現実には、苦しみながらもこなれたスタイルに固執し、カカとセードルフの個人技に依存せざるを得ない。そしてまた、数年前のチームと比べれば、現状との戦力差は明らかだ。シェヴァの抜けたFW陣、スタムが去り、マルディーニのいないDF陣は、矮小化している。王者と呼ぶには、その攻撃は余りにも単調で、その守備は余りにも脆いのだ。

 7節のラツィオ戦では5-1の大勝を収めたものの、内容は結果にふさわしいものではなかった。序盤から相手に攻め込まれてうろたえ、何とかアンブロジーニの技ありゴールで先制したものの、あっさりと追いつかれた。その後、カカのPKで突き放したわけだが、次の3点目まではいつ試合がひっくり返されてもおかしくなかった。むしろ、序盤の果敢なカウンターを続けられず、失点に合わせて雑になってしまったラツィオに助けられた感は否めない。ボネーラのカバーリングとパスは相変わらずサイテーで、セードルフは中央に固執し、サイドバックのオーバーラップは機能しなかった。
 つまり、今季は我慢のシーズンにならざるを得ないだろう。というより、昨季だって実際にはそうだった。CLの優勝が問題を見えなくしてしまったようだが、リーグ戦での体たらくは目を覆いたくなるほどだった。ロナウド、マルディーニの復帰とパトのデビューが、事態を改善するとは思えない。必要なのはフル稼働が可能な優秀なセンターバックと、独力で突破できるサイドアタッカーだ。
 この際、ボネーラには我慢しよう。ここ数年の補強を考えれば、26歳の彼の獲得はまともな選択だった。伸びしろのないオッドやエメルソンよりずっといい。少なくとも、かつてのラウルセンよりはマシな人材だろう。
 サイドアタッカーに関しては、残念ながら30歳半ばのセルジーニョの復帰に期待するしかない。できればカフーと2人して5歳ほど若返ってほしいところだが……。仕方がないので、ロナウド、パトが加わって、前線が少しでもワイドになることを祈るばかり。ピッポとジラルディーノは、いかんせん直線的すぎる。
 もっとも、一番望んでいるのは監督の交代だ。少なくとも、アンチェロッティはフォーメーションの変更を試すべきだった。ヤンクロフスキーとオッドはどう考えても3-4-1-2の両翼のほうが活きるし、ピルロが使えない場合に備え、エメルソンを入れて2ボランチとする形もオプションに加えておくべきだった。昨季と違って今季はCLの出場は確定していたわけだし、ユーロ2008の予選もあるというのに、どうしたことか。選手のポテンシャル頼みの無為無策ぶりは相変わらずで、落胆させられることしきりだ。不振の理由を追求されると、「カカの動きが研究されている」と答えるのだから、やっていられない。
 だから、昨季のCL決勝前に遠藤ですら言ってただろ、「ミランなんてカカを抑えれば楽勝じゃん」って。誰か、イタリアまで言って伝えてやって欲しいもんだ。それでもたぶん、「勝ったのは我々だ」って答えるんだろうけどさ。

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高スポ執筆者

  • 荒木又三郎
    高スポ創刊者にして主筆。ACミランを愛する後天性フランス人。高スポ編集雑記に本音をぶちまける。
  • 三鷹牛蔵
    高スポの陰の支配者。湘南ベルマーレを愛する先天性ジャパニーズ。

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