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2008年1月 4日 (金)

安藤美姫の爆発力・浅田真央の茨の道

 波に乗ったときの安藤美姫を見ることができて満足だ。しかし、王道を行くのは浅田真央の方で、好不調の波を最小限に抑えてさらなる高みを目指す。それを知る観客は、彼女の演技には完全無欠を求める。…って、これが17歳の選手を語る言葉なんだもんなあ。
(2007年12月28日 第76回全日本フィギュアスケート選手権大会3日目 なみはやドーム)

 前夜22:30頃まで留まった「なみはやドーム」に12:00過ぎにまた来た。昨日より安いスタンドA席(3000円)だが、6列後退したもののリンク中央付近で、考えようによっては昨日よりも良い席といえる。
 開場直後に入場したので、女子シングル最終組の選手達が曲を流しながら練習をしている。滑走順を確認すると、ラスト6人は浅田真央、水津、村主、中野、鈴木明子、安藤という順番。優勝争いに着目しても、世界選手権代表争いに着目しても、どちらにしてもキーになる安藤美姫が最終滑走者というのは見る者にとっては悪くない。なんだか彼女の精神力を疑っているようで申し訳ないが。

 この日は、ついにシンクロナイズドスケートを見ることができる。例年、全日本選手権の3日目に競技が行われるのでチケット争いが激しく、縁遠かったのだが、やっと見ることができる。という私の思い入れとは関係なく、客の出足は鈍い。
 12:50からシンクロのショートプログラム。1分間のウォーミングアップというアナウンスで16人の選手がリンクに入り、4×4の隊列になってリンクを1周すると、あっという間に本番。とりあえず評価は保留するが、この種目はハードルが高そうだ。

 製氷作業を挟んでアイスダンスのフリーダンス。リード姉弟は上達したのだと思う。2人のスケーティングを揃えるのに四苦八苦していた昨年と比べれば、スタート地点に立てたといえそうだ。世界の中でどの程度通用するのかは上手く予想できない。それというのも今季はアイスダンスをあまり見ていないので(テレ朝このやろう)。

 また製氷作業をして、シンクロのフリースケーティング。アイスダンスが1組しかいないのでインターバルが短い。ショートとの違いは、時間が長いのと、演技開始時に任意の位置取りができることと、リフトなどの立体的な動きが入ること、なのかな。全然調べていないが、見ているとその辺りに違いを感じた。演技終了後すぐには採点結果が出ないのだが、東京女子体育大学が1位というのは印象批評的には納得。フォーメーションの変更や列になった選手の交錯などが比較的スムーズだったように感じたので。

 女子シングルのフリースケーティングが始まったのは、製氷作業を挟んで15:10分頃。ここまでの2時間は製氷作業の頻度が高くてマッタリ感が漂っていたが、ここからは急ピッチ。私の前列のドーナツを食べたりゴロゴロしていた少年もシャキッとする時間だ。
 フリーで滑ることのできる選手は24人で、ショートプログラムの下位6人は足切りされている。したがって、第1グループはショートで19位~24位の選手なのだが、カットされた選手との差はわずかなのだと思われる。素人目にはショートの滑走順の運不運も影響している気がする。
 第1グループ、第2グループの有名でない選手達の演技が続くが、男子とは違って眠くならない。その理由として考えられるのは、
・日本女子フィギュア界のレベルが高いから
・演技時間が男子より30秒短く退屈になる前に終わるから
・直前に食事をしていないから
・日没前にヒトはそうそう眠くならない
といったことだろう。
 さらに突っ込んで考察すると、前日のショートプログラムの演技を思い起こしながら見る、昨年も出場していた選手についてはその薄ぼんやりした記憶を呼び覚ましながら見る、曲の切り貼りの仕方にツッコミを入れながら見る、コーチのアクションを視野の片隅に入れながら見る、前列の少年が封を開けたチーズ風味のスナック菓子の匂いに閉口しながら見る、テレビ局の無関心ぶりに怒りながら見る、といった一歩踏み込んだ観戦手法を私が駆使したという側面もあるのだろう。
 第2グループの最後に浅田舞が登場すると、カメラクルーは全員スタンバイして撮影を始める。今までとの態度の違いは何なんだとムッとするも、昨日の重たい演技に比べて格段にスムーズなスケーティングで黙らされる。

 製氷作業を挟んで第3グループ。前半は若手選手で、上位争いに絡みそうなのは後半の3人か。
 太田由希奈はマニア評価は高いようだが、私にはもう一つ良さがわかりにくい。ただ、昨年に比べると力強さが増したというか、ひ弱な感じが薄らいだというか、コンディションが良いように思った。それと、他の選手が特に何もしないシチュエーションで手の振りがついていたりすることに、今回気づいた。
 澤田亜紀は勢いが欠けてきている気がする。成長途上において勢いだけではなく、上手さとかその他の要素にも気を配ろうとしているのだろうと推測はするが。
 武田奈也はその点、うまいこと乗り越えているのかもしれない。他の日本人選手にはあまりないチアガールっぽい明るさ、元気のよさ、というストロング・ポイントを前面に押し出すことなく勝負できている。フリーはかなり良い出来で、ショートの失速が悔やまれる。

 そしていよいよ最後の第4グループ。6分間練習から場内はヒートアップし、浅田真央や安藤美姫がジャンプを決めるたびに大歓声が沸く。浅田真央は直後の滑走なのに構わず飛びまくる。
 いきなり浅田真央の登場。序盤のジャンプがすっぽ抜けて1回転(?)になるものの、その後は快調に飛ばす。いつまでたってもスピードが衰えず、ジャンプもこれまでの選手とはレベルが違う。アクセルジャンプから着氷してのフィニッシュは楽しみにしていたのだが、バックスタンド側から見ると期待していたほどインパクトがない。残念。
 会場内は「今日はミスがあった」という残念ムード。確かにその通りなのだけど、あんだけの演技なのだからもっと遠慮なく盛り上がってもよいのではないかなあと思う。それが素人の特権じゃん。本人が課題を持つことは大事だけど、それはそれとして、見る者は自分の感じたように反応すればよいでしょうに。浅田真央本人はいつも自分に厳しくあるように見受けられるけど、その言動に観衆が感化されて厳しい目で見るのだとしたら、けっこうシンドイな。これが第一人者の通る道といえばそうなのかもしれないが。
 それでも135.50点で総合205.33でダントツの1位に躍り出る。

 続く水津瑠美は浅田の直後で呪いがかかったようにペースを乱され、ミスが多く不本意な出来。浅田真央はいつの間にか、村主ばりの呪文をマスターしたか。
 その村主章枝は3番手。ショートではグランプリシリーズの不調から見事な復調を見せたので、今年も全日本選手権に照準を合わせてくる恒例の末足が炸裂するのかと期待されたが、ジャンプのミスが目立つ。この時点で2位になるものの浅田真央からは40点以上引き離され、世界選手権の出場には黄色信号が灯る。
 中野友加里。ショートに続いてフリーでも村主の直後だが、呪文を意に介さず快調な演技。ミスらしいミスもなく村主の上にいく。
 鈴木明子。ショートでもフリーでも5位と、立派な内容だが、上位選手に食らいつくには何か武器が必要か。

 大会のラストを飾る最終滑走者は安藤美姫。村主が低い得点にとどまったので、大崩れをしなければ世界選手権の出場は固い。とはいえ、同じような状況のNHK杯で逆噴射をしたから安心して見ていられない。本当なら浅田真央との優勝争いに注目して見るべきなのだろうけど。
 しかしこの日の安藤は凄かった。浅田真央にひけをとらない高さのジャンプから3回転・3回転の連続ジャンプ、両足着氷かと思った瞬間に片脚を上げる力業、着氷の体勢が崩れかけたところを強引に持ち直しての3連続ジャンプ。スピードがあり、振り付けの勢いも衰えずに一気に駆け抜けた。最終滑走にふさわしい見事な滑り。技術的なことはともかく、誰よりも勢いがあったので、私にはそれで十分だった。
 結果、フリーでは浅田を上回る高得点。総合では僅差で及ばなかったものの2位であった。
 
 19:30頃から表彰式。シンクロ、フィギュアの新人賞、アイスダンス、女子シングルと進む。いったん選手達が引き上げた後で世界選手権派遣選手の発表。男子の高橋、小塚、南里を含む7組が氷上に登場し、抱負を語る。
 記念撮影やらなんやらで、終わってみれば20:30過ぎになっている。長い2日間だった。

 私なりにこの2日間をレポートしてみたが、覚悟していた以上に平凡になってしまった。その理由は、この全日本選手権という大会の性格だろう。 
 この大会に出ている選手達は、各地域での大会を勝ち上がった国内上位選手で、私などでは到底及びもつかない運動選手なのだ。しかしながら、トップ選手と比べれば明らかに差がある。トップ選手たちの輝きは圧倒的で、その輝きだけに注目する気持ちもよくわかるが、私はそれをよしとしない。少なくとも現地で全日本選手権を楽しむには、全選手への関心と感心が欠かせないと考える(部活の大会的な雰囲気の会場で、選手の家族・関係者の座るべき座席を埋めたような気分になる引け目があるから)。
 なのに私はここまでのレポートで、著名選手にばかり触れてきた。出場選手の大半は学生生活とともに競技生活を終えるわけで、そういった選手の名前を挙げて論評することに抵抗を覚えるのだ(まあ一部は触れているけど)。観戦しているときには非著名選手の中にも贔屓の選手を作っているし、その演技に地団太を踏んだり喝采を上げたりしていたのだけど、その内容をここで言及するのは憚られる。
 非著名選手に対する思い入れこそが、全日本選手権を生観戦する意味だし、レポーターの個性が現れる部分だ。そこをカットして面白いレポートにするのは至難の業だと思う。
(お、うまいこと筆力がないことを誤魔化したよ)

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高スポ執筆者

  • 荒木又三郎
    高スポ創刊者にして主筆。ACミランを愛する後天性フランス人。高スポ編集雑記に本音をぶちまける。
  • 三鷹牛蔵
    高スポの陰の支配者。湘南ベルマーレを愛する先天性ジャパニーズ。

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