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2008年2月14日 (木)

菅野将晃監督の続投を支持しつつも不安

 自ら賭け金を吊り上げた湘南ベルマーレは、それに見合ったリターンを得ることが出来るのだろうか? シーズン終盤まで昇格争いに食らいついた2007年の主力選手を維持して臨む2008年について、明るい話題が目立つ中にあっても、私は懐疑論を捨てきれない。

 主力選手の大半が残留し、チームを去ったレギュラー陣(エドワルドマルケス、尾亦弘友希)に代えるべく実績のある選手(リンコン、三田光、臼井幸平)を加え、そのうえ浦和で出場機会の不足していた若手や大卒有望株まで獲得することで、戦力の維持どころか増強に成功したように見える湘南ベルマーレ。「強化費は昨年と変わっていない」ということだが、2007年の人件費比率はすでに高率であり、それを続けるというのは経営面でのリスクを負うことになる。単に昇格争いに絡んで入場料、広告料の増収につなげるだけではなく、昇格を果たすことによる乗数効果をも得なければ回収しきれないほどの投資に見える。

 一般的にいって、長年J2(しかも下位)にいたチームがJ1へ昇格するには段階を踏んだ強化が必要で、1年や2年で昇格を果たすことは難しい。過去の昇格チームの例を見ても、
 2007年札幌(9位→12位→6位→6位→1位)
 2006年横浜(12位→11位→8位→11位→1位)
 2005年甲府(12位→7位→5位→7位→3位)
 2005年福岡(降格→8位→4位→3位→2位)
 2004年大宮(4位→5位→6位→6位→2位)
 2004年川崎(降格→7位→4位→3位→1位)
 2003年新潟(4位→7位→4位→3位→1位)
 2002年大分(3位→3位→6位→1位)
と、ほぼ必ず中位で足踏みするシーズンがある。一気に駆け上がった横浜FCはむしろ例外なのだ。10位→10位→7位→11位→6位ときた湘南が2008年に昇格するというのも、過去の例に照らせば例外的な動きに当たるだろう。

 2007年の主力選手の多くが残留したといっても、6位から3位以内にステップアップしなければならないのだから、湘南にとっては戦力の維持ではなく向上が必要だ。
「今年は本当にいいチームのベースができたと思います」
 2007年に引退を発表した際の外池大亮の言葉だ。翌年のチームのさらなる向上を示唆するこのような言葉を、選手や監督、コーチ陣、チーム関係者が口にするのは当然であるし、シーズンチケットを売るためには必要なことでもある。が、だからといって私は無邪気に信用することはできない。
 警戒感を募らせる原因の一つとしては、2003年のシーズンのトラウマがある。

 ワールドカップによる中断期間に吉野智行、熊林親吾を補強して復調を見せた2002年シーズンは、昇格争いには遠かったものの5位でフィニッシュ。天皇杯ではパラシオス不在の中でFC東京を撃破してシーズンを終えた。成長を期待された若手中心のチーム構成も相まって、翌2003年シーズンへの期待が膨らんでいた。ところが、2003年は低迷。その後数年間のどん底への第一歩になったのだ。
 2003年はギャンブルに打って出たシーズンだった。2年間の任期で8位→5位とステップアップを果たした田中孝司からサミアへと監督交代をし、無謀といわれたフラットスリーで臨み、シーズン序盤に欠場したパラシオスの復帰を待たずにサミアは辞任した。プレミアリーグでの実績を引っさげて期待されたストライカー、ハミルトン・リカルドは不発に終わり、若手選手は伸び悩み、チームはほとんど崩壊し、その後数年にわたる迷走へと突入したのだった。
 もちろん、2003年と2008年とでは事情が違う。2008年は計算できるベテラン選手がチームの中核をなし、主力選手の多くも残留したことでチーム作りに継続性がある。戦術は前年のものを踏襲した上で上積みを図る。菅野将晃監督の続投がその基盤だ。

 しかし、それで楽観できるのだろうか。このチームにはもう伸び代がないという可能性もあるし、ベテラン選手達は確実に年齢を重ねて衰えていくという見方もある。2007年の躍進は選手の入れ替えによるもので、監督の力で戦術が進歩したからではない、という疑いだってあろう。
 昇格の可能性が潰えたホーム最終戦・福岡戦の失点シーンで、その疑いは浮上した。
 1点目は左サイド(湘南から見て)から右へ流れていった田中佑昌にDFラインを突破されてのもの。その田中の動きに尾亦はついていっていたのに、まさに突破される、そのタイミングで尾亦は迷いを見せた。そのまま(自陣左サイドを空けたままで)ついていくのか、CBの選手に受け渡すのか。実際には迷ったのではなく尾亦自身は受け渡したつもりになっていたのかもしれないが。
 2点目はカウンターでアレックスに抜け出されての失点。斉藤俊秀が猛抗議をしたように、あれはオフサイドだった。それはそうなのだが、誤審を招いたのは湘南の甘さゆえだとも思う。つまり、右サイドにいた選手(ジャーンだったのか山口だったのか)が斉藤よりも下がった位置取りになっていて、ラインが崩れていたことで線審に「微妙」と思わせる材料を提供していたのだ。
 細かい話かもしれないが、どちらもバリバリのレギュラー選手達が47試合目にするようなプレーではない。しかし、2008年のベルマーレはそういった細部のブラッシュアップでチーム力を上げようとしているのではないか? 47試合でディテールを作れない監督は、さらに42試合(ってそれではシーズンが終わってしまうが)を与えられても、やはり出来ないのではないか?

 監督を代えてガラリと戦術を変えるのは、2003年よりもむしろ2008年にふさわしい。サミア、いや彼はしょせん代役だからトルシエを招きフラット3をやらせるならば、今のほうがよっぽどふさわしい。

 しかしこれは第三者的、鳥瞰的な意見であって、当事者の有する感情やリスク、恐怖心を無視しており、いまひとつ現実的ではない。サポーターにとってだけでなく、株式会社湘南ベルマーレにとっても2003年の監督交代がトラウマになっている以上、菅野続投以外の選択肢は選びにくかったはずだ。
 かく言う私も、結局のところ、菅野続投を支持している。2007年のチーム作りは戦術面の疑問があって満点ではないにしても、心理的なマネジメントの面では評価できるものだったと思う。冒頭に述べたように、高木琢也の即効性は稀な事例であるのだから、2年がかりでもよいのだ。2年目には戦術面の徹底もして、昇格を果たしてくれるはずだ。それにしたって、反町康治や大木武よりも短期間での成果を求めているわけで、高いハードルであることに違いはないのだけど。

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高スポ執筆者

  • 荒木又三郎
    高スポ創刊者にして主筆。ACミランを愛する後天性フランス人。高スポ編集雑記に本音をぶちまける。
  • 三鷹牛蔵
    高スポの陰の支配者。湘南ベルマーレを愛する先天性ジャパニーズ。

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