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2008年5月 1日 (木)

赤い悪魔にみるクラブチームの理想型

 チャンピオンズリーグ決勝のカードが決まった。イングランド勢同士の対決は「プレミア強し」の印象を決定付けるもので、とくにバルサとローマを破ったマンチェスター・ユナイテッドは、賞賛に値するプレーをみせている。時に大量得点をもたらす攻撃力を維持しながら、弱点だった守備面の脆さを克服。若手からベテランまでがタフに働き、必ずしもスター選手に依存しない現状は、金に飽かしたチーム作りでは生まれないものだ。

 今回のCLは、4強のうちの3つをイングランド勢が占めた。リバプールはイタリア王者インテルを下し、チェルシーはリーグ戦での大一番(対マンチェスター・ユナイテッド)を挟みながら、そのリバプールを下している。惜しくも4強を逃したとはいえ、アーセナルも前回王者ミランを斥けており、負けた相手もリバプールというのだから恐ろしい。つまり、決勝がマンチェスター・ユナイテッドとチェルシーの戦いになったということは、イングランド勢はことごとく身内のイングランド勢に敗れた(敗れる)のであり、今大会でイングランド勢を斥けた他国のチームは皆無ということになる。「プレミアリーグ強し」の印象を決定的にする事実である。
 そうしたイングランド勢の活躍のなかでも、マンチェスター・ユナイテッドは最高の評価をされてしかるべきだろう。最もバランスのとれた戦力を持ち、無理のない戦いで決勝まで勝ち上がってきた。グループリーグは5勝1分で突破し、唯一の引き分けは消化試合となったローマでの最終戦である。トーナメントに入ってからは、1回戦でフランス王者リヨンを下し、準々決勝ではトッティを欠くローマに2連勝。そして迎えたバルサとの準決勝では、カンプノウでの初戦をスコアレスドローに持ち込んだ後、ホームでの決戦を1-0でものにしている。
 今季のこれまでの成功は、不慣れだったはずの「守備重視の時間帯」をしのげていることに尽きるのではないか。時に大量得点をものにする一方、守備面での脆さがチームの課題だった。しかし、ルーニー、テベスは日本人FWさながらに守備に貢献し、復帰したパクチソンは攻守両面にわたって広大なスペースをカバーする。縦ばかりでなく、チームのポジションチェンジに合わせて逆サイドまでフォローする奔走ぶりは、まさに縦横無尽との表現がふさわしい。スコールズ、キャリックの中央のコンビも、序盤の連携の拙さからは想像できないほどに隙がなくなった。
 準決勝の2試合では、ショートパス多用のバルサのアタックを見事に封じ込んだ。バルサは彼らのプレースピードについて行けず、中盤を支配することができなかった。ロナウジーニョ=デコ時代の終わりを印象付ける低調ぶりであり、打つ手がないままにメッシの突破頼みに陥っていたといわざるを得ない。ライカールト監督は、失策の謗りを免れないはずで、なぜ対戦経験が豊富なアンリを先発で使わなかったのかわからないし、オールドトラフォードでの決戦に1戦目の教訓を生かしていたとは言い難い。
 何よりマンチェスター・ユナイテッドが賞賛されるべきは、必ずしも彼らの戦力が金に飽かした陣容ではないことだろう。ルーニー、ファーディナンドこそ大枚をはたいて買ったかもしれないが、いまや飛ぶ鳥を落とす勢いのC・ロナウドは、チームに来た当初は無名の若造だった。ベッカムを売り飛ばして代わりに獲得したという背景から、あの頃はむしろファーガソンが批判の的になったものである。さらに、パクチソンやテベスは無理をせずに買えた選手であるし、生え抜きであるギグス、スコールズのベテランが健在なのは何より心強い。こうした現状は、近年、リーグ戦でチェルシーに遅れをとるなかで、無理のない選手補強を進めつつ新加入選手を定着させてきたからこそのものだ。スター選手を買い漁ってできたチームでは、まったくない。
 ボスマン裁決以降、欧州列強は即戦力獲得路線を続けているが、「適正価格で獲得した選手」を育て上げつつ、世代交代を図っていくことこそ、クラブチームの理想型だろう。長期政権であり、それゆえに監督が選手獲得に大きな権限を持つという事情もあろうが、マンチェスター・ユナイテッドやアーセナルこそ、あるべき姿を示していると思う。
 チェルシーとの決勝がどうなるかはわからないが、より優勝に値するチームはマンチェスター・ユナイテッドだ。

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  • 荒木又三郎
    高スポ創刊者にして主筆。ACミランを愛する後天性フランス人。高スポ編集雑記に本音をぶちまける。
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