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2008年7月 6日 (日)

「昇格候補」のプライドを欠いた湘南

 集中力を競う競技を見てきた。サッカーボールを使った根性試しにも見えた。連敗中で追い込まれていた水戸が、前節に久々の勝利を挙げてホッとしていた湘南を撃破したということなのだろうか。しかし、精神論で片付けるのではなく、この日の状況に適した戦術を水戸が採っていたと考えるほうが私の好みだ。
(2008年7日5日 湘南ベルマーレ0―1水戸ホーリーホック 平塚競技場)

 気温23.5℃、湿度86%という記録は試合開始時のものであろう。試合中は湧き出る靄が続々と競技場の中に流れ込んでおり、湿度はさらに上昇していたのではないかと思われる。この蒸し蒸ししたコンディションの中で、集中力を持続させることを意図してかどうかは知らないが、水戸ホーリーホックはシンプルなプレーに徹していた。
 水戸は序盤から左サイドで攻めた。アジエルの裏を狙うという意図だったらしいが、ひたすら湘南右SB臼井幸平との1対1を作り出していたので、むしろ臼井を狙い撃ちにしているのかと思った。ともあれ、徹底していたことは確かだ。左サイドにボールを置いて攻撃を始め、ワントップの荒田智之へのクロスを狙う、あるいは中央に戻して2列目からの飛び出しへスルーパスを狙う、あるいは荒田のポストプレーを使う、だいたいこれが水戸の基本パターンだったと思う。
 そういったパターンの中から幾度かチャンスの芽を作った水戸だが、いかんせん精度がない。湘南はそれに助けられていた。ただし、水戸が臼井サイドを攻めたので、アジエルのポジションが下がった。ボールを奪ってもアジエルの位置が低すぎる場面がいつもより多かった。よって、カウンターで攻めようにもアジエルと2トップの距離が長く、チャンスを作るのは難しかった。個人的には、なんだって今日に限ってアジエルと永田のポジションチェンジが影を潜めたのか謎だったのだが。

 水戸の守備は、長身の2CBが湘南2トップを高さで封じ、ビジュを中心とした中盤の選手がアジエルを封じた。それゆえ湘南は両SBの攻め上がりなどで左右からクロスを入れることが増えたが、中央の高さが不足するのでフィニッシュに持ち込めない。跳ね返されたセカンドボールも思うように拾えず、攻めあぐねている印象。
 そこで湘南は55分に前線の阿部吉朗に代えてリンコン、左SH永田に代えてスピードスター・鈴木将太を投入した。
 が、その直後に湘南は失点。水戸の中盤・赤星貴文(登録上はFWだったがMFのプレーだった)が湘南の右ボランチ田村雄三をひきつけておいて右のスペースでフリーになった村松潤にパス。村松からワントップの荒田へスルーパスが通ってシュートまで持ち込まれた。
 私の位置からは遠かったので、なぜ最後のスルーパスが通ったのかがわからない。湘南のCB山口貴弘がクリアできそうに見えたのだが。いずれにせよ、荒田の動きは終始2CBが見ていたはずで、そこからの失点は集中力を欠いていたのではないかと疑われる。CBを牽制するような2列目からの飛び出しもなく、前線には荒田しかいなかったのだし。

 とはいえ湘南の攻撃はこの後改善する。リンコンの高さが脅しになっていたし、彼のポストプレーでアジエルが再生した。水戸の選手は中央に集まらざるをえなくなり、湘南はサイドからのクロスも増えた。この攻めをしていれば1点は奪えるだろうと見ていたのだが、77分にリンコンが1発レッドで退場(あからさまな相手DFへの突き押し)。
 苦しくなったものの、87分にはアジエルがDFラインの裏に飛び出してシュートを放つ。GKが弾くものの、詰めるべき他の選手は足が止まって「見ていた」。集中の欠如。

 ということで、思わず集中力に話が還元しかけているが、実際にはフィジカルコンディションがその原因かもしれない。序盤から、味方パスへの反応が一歩出遅れるシーンが多かったし。
 まあ、原因が精神面にあるにせよ肉体面にあるにせよ、表現されたものは物足りなかった。上位を窺おうというチームであれば、単調な攻撃を跳ね返し、こちらは技巧的に崩さなければならない。気候条件が悪くても、審判の調子が悪くても。
 そう、審判だって集中力を欠く時はある。ハイボールを争ってGKと接触しただけの選手にイエローカードを出してしまったり、相手選手を振り切ってドリブルで抜け出して前方の視界が開けた瞬間に流せばいいのに思わず笛を吹いてしまったり(しかも相手にカードが出るでもなく)、明らかオフサイドなのにそこにいなくて判定できなかったり、GKがさんざん寝転がっていたのにアディショナルタイムへの算入を忘れたり、そういうことは起こりうるのだ(誤解のないように付け足すが、今日の審判団を非難しているわけではない。今日のレフリングは概ね首肯できるが、その中にいくつか間抜けなものが混じっていたと言っているだけだ)。
 自他ともに認める昇格候補であるためには、そういったあらゆる障害を乗り越えなければならない、と言いたいだけだ。この日の湘南からは、そういうプライドを感じにくかった。

 …と、珍しくサポーターっぽい熱いことを書いてみた。が、私の中の醒めている部分は違うことを考えている。いつでも100%の集中力を発揮できるチームなんてないのだから、欠ける部分をどう補い、誤魔化すかが問題なのだ。そのために戦略があり、戦術があり、細かな作戦がある。身も蓋もないことを言うが、こういう、コンディションが揃わずに落とす試合もシーズン中にはあるのだから、他でちゃんと勝っておけばよかったのだ。

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高スポ執筆者

  • 荒木又三郎
    高スポ創刊者にして主筆。ACミランを愛する後天性フランス人。高スポ編集雑記に本音をぶちまける。
  • 三鷹牛蔵
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