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2008年8月 4日 (月)

バスケ・アメリカ代表のバンザイアタック

 アメリカ代表は「万年優勝候補」の座を確立するのだろうか? NBAのスター選手を集めたアメリカ代表が最後に金メダルを得たのは2000年のシドニー五輪で、2002年の世界選手権は6位、2004年のアテネ五輪で3位、2006年の世界選手権でも3位と、看板倒れの結果が続いている。今回の北京五輪でもまた金メダルを逃すように思えてならない。

 レブロン・ジャームズ、コービー・ブライアント、ドウェイン・ウェイド、クリス・ポール………といったスター揃いのアメリカ代表だが、今回もまたメンバー構成に難がある。
 毎度のことだがセンターをはじめとするフロント・コート陣に不安がある。ドワイト・ハワードもカルロス・ブーザーも、クリス・ボッシュも、もちろんすばらしい選手だが、世界で戦える保証はない。3人ともかつて敗者になったことがある。高さが不十分ということもあるし、NBAとは異なるルール、審判に対応できていなかった面々だ。「今回は大丈夫」と言える材料を私は持っていない。
 ピュア・シューターがいないのもいつも通り。マイケル・レッドがその役割を担うのかもしれないが、彼もやはりチームの中心として多くのシュートを打つことでペースをつかむタイプであって、ひたすら3ポイントシュートを打つような役目には向いていないような気がする。
 練習試合では無敵っぷりを発揮しているが、どこまで信用できるものか。勝負がかかったとき、強豪国はアメリカのやりたいようにはさせてくれない。それを示したのが、2006年の世界選手権でアメリカがギリシャに敗れたゲームだった。

 何よりも問題なのは、毎回毎回、アメリカが同じような過ちを繰り返しているように見えることだ。
 人が同じ過ちを繰り返すのは、心理学的には防衛機制によるのだという。過ちのもたらした苦痛から自らを守るために、その過ちを「なかったこと」にしてしまうのだ。いわゆる「抑圧」で、つまり記憶の消去だ。過ちの記憶を消去してしまうのだから反省などできようはずがなく、同じ過ちを繰り返すことになる。
 アメリカ代表には、このメカニズムが働いているのではないか。傍から見れば「また同じような作戦で無為に突撃するのか」「どこの万歳アタックだよ」と見られているにもかかわらず、同じようなことを繰り返すのだ。
 当事者たちは「今回は違う」と考えているのかもしれない。今回はコービーがいる、レブロンも経験を重ねた、ドワイト・ハワードは一皮むけた。確かに素晴らしい選手揃いなので、今回は勝てるのかもしれない。だがそれは、ドメスティックな希望的観測にすぎず、彼我の能力を検討して導かれた対応というわけではない。
 そんな粗雑な対応策でも奏功しかねないだけの選手達ではある。そこにアメリカの落とし穴があるのだろう。

 良くも悪くも、アメリカ人の「オールスター信仰」は根強い。世界最高峰のリーグの、最高の選手達を集めるのだ。多少のポジションバランスの欠如なら気にする必要なんてないし、全員がオールラウンダーなのだから適材適所を気にするなんて馬鹿げている。
 全米の俊英たち、「ベスト&ブライテスト」を総結集させたケネディ政権がアメリカをヴェトナムの泥沼に導いたと、デイビッド・ハルバースタムが指摘したのはもう30年以上前の話だ。優秀さの判断基準は一つではないことは明白だと思われるのに、それでも依然として能天気に「オールスター信仰」を貫くアメリカの国民性は、それはそれで見所がある。
 全員がオールラウンダーというのはともかく、40分間にわたってオールコートプレスを貫いて、バックコート陣の能力で勝ち進むバスケを見せてくれるのならば、それは新時代のバスケと呼ぶにふさわしいし、楽しみだ。このメンバーならば実現できるかもしれない。
 …でもそうやって、前回も前々回も裏切られたんだよなあ。

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コメント

タイトルからして、サイコー。

でも、なんでハルバースタム。
まあ、読んでないんだけど。

お褒めにあずかり(そうなんですよね?)光栄でございます。主筆様!
湘南について書くときは対戦相手に遠慮したりして奥歯に物の挟まったような書き方になっているのに対して、アメリカ相手だと遠慮がないからでしょうかねえ。
ハルバースタムについては元の原稿ではあれこれ書いたのをバッサリ削ったので、確かになんか突出してますね。アップしてからそう思った。でもまあ、人の世についていろいろ示唆するところの多い良書なのでまあいいかなと。

主筆様にあらせられても、古い話題とか気にせず遠慮なく投稿してくださいませ。縮み志向のACミランとか。

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  • 荒木又三郎
    高スポ創刊者にして主筆。ACミランを愛する後天性フランス人。高スポ編集雑記に本音をぶちまける。
  • 三鷹牛蔵
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