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2008年11月 9日 (日)

トゥットが王様だった、と言いたくない

 得点不足に悩む湘南にとって、今はゴールを決められる選手が欲しい。その意味で、虎の子の1点を挙げたトゥットはこのゲームの王様だったといえるだろう。皆の衆、ひれ伏して讃えたまえ。
(2008年11日8日 湘南ベルマーレ1―0水戸ホーリーホック 平塚競技場)

 水戸にとってはFW西野晃平のシュートがすべてだったろう。赤星貴文のシュートをGKが弾いたところに詰めた西野は1メートル前の無人のゴールに蹴りこむだけだった。しかしボールはクロスバーの上へ。この試合の中で両チームに訪れたチャンスの中でも最大のものだったが、これを逃し、その直後に湘南が先制した。
 もっとも、湘南にしたって再三のチャンスを生かせずにいた。高い位置で水戸DFにプレッシャーをかけてボールを奪ったチャンスも複数回逃しているし、坂本紘司の飛び出しに菊池大介からのピンポイントパスが通ってもシュートは枠を外す。リードを奪ってからもゴールライン際に切れ込んだ永里源気のクロスも得点には繋がらず、アジエル・トゥット・石原直樹の3面速攻も生かせない。
 トゥットの先制ゴールは、決してイージーショットではなかった。ゴール正面でボールを受けたトゥットから石原への楔のパスは相手選手の隙間を縫ったもので、パス&ゴーのダッシュもコースが空いていたわけではなく、相手選手と競り合いながら前に出たものだった。石原のリターンパスはダイレクトで撃つのに適したものだったが、シュートコースはゴール右下隅への「ここしかない」というものだった。
 サッカーが得点を競う競技である以上、ゴールを決める選手が王様だ。近頃の湘南の得点不足を鑑みれば、その感は強い。ポストプレーで起点になることも、相手DFを引き連れてスペースメークをすることも、前線から相手ボールを追い回すことも、ファンがその選手を評価する基準にはなる。しかしゴールに勝る価値がないということを痛感してしまった。
 
 こんなふうに、内容を度外視して結果にこだわった文章になるのは、私としては不本意だ。内容あっての結果だと思うし、湘南のようなチームで「ゴールさえ決めればよい」というわけにはいかないのだから。
 誤解のなきように付記するが、トゥットは「ゴールさえ…」という選手ではない。時には激しいスライディングも見せるし、チームメートやサポーターを鼓舞することもしばしばだ。まあ、ディフェンスに貢献するのは切れ切れの時間だし、歩くことも多いけれど。

 この日の内容についていえば、田村雄三のマンオブザマッチはまあ妥当だろう。ボールへのアプローチ、対人でのプレスともに際立っていた。攻撃面では拙いボールの奪われ方もあったが、本人も認めるように、自ら取り返して「自作自演」を完結させた。中盤右側での存在感が非常にあり、他の選手が依存しているような気配もある。
 水戸の攻撃は、序盤から左SH鈴木良和がウィング気味に高い位置をキープしたときにチャンスを作っていた。それゆえ「右サイドで攻めて押し込んでしまえ!」と念じていた。だが、試合が進むにつれて、どうも水戸の左サイドの攻撃が有効なのは、湘南の右側、田村―山口貴弘―ジャーンの三角形に問題があるように思えてきた。3か月ほど前には右SBとCBの連携に難があると思っていたのだが、今は問題はそこではない。田村のところで突破されたときにピンチになりすぎるのだ。どうも田村への信頼感がカバーリングの遅れに繋がっているように思えてならないのだ。

 坂本紘司はダイナモにふさわしい働き。前線からのプレスで2度もボールを奪ったのは水戸に問題があるのかもしれないが、それにしたって後半にも衰えない動きだった。元FWとして、あのシュートは決めてほしかったが。
 久々に出場した永里源気は非常によかった。攻撃面では、ドリブルで勝負してゴールライン際に切れ込んだプレーなど、持ち味を発揮した。ただし、この日のプレーで最も評価されるべきはポジショニングだろう。トゥットが下がってボールを受けにいったときは前に上がり、坂本が最前線でプレスをかけたときは下がってボランチのスペースを埋めた。戻りながらスライディングタックルで相手の攻撃を潰したシーンもあったし、この日の出来ならば、今後もメンバーに入れるべきだろう。

 アジエルの復帰にも触れねばなるまいが、まあ正直なところ試運転という表現がピッタリだった。4か月ぶりということで、試合での動きを身体が忘れていたようだ。2度ほど、アジエルからトゥットへパスを出し、トゥットからリターンパスが出たが反応し切れなかった。
 ただ、アジエルが出た瞬間から水戸の中盤はアジエルを警戒して攻め手を薄くしていたので、存在感だけでも価値はあるというべきだろう。

 それにしてもこのゲームは「経験上、連敗しているときは往々にしてこういう展開になる。なかなかカッコよくは勝てない」という斉藤俊秀のコメントを思い出した。追加点を奪えず、内容に応じた点差をつけられなかったので。もっとも、そのコメントは2007年5月のものだ。その後のリカバーを意図したシーズン序盤の発言が、残り3試合の段階で想起されてしまうというところに今の湘南の苦境が現されている。

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高スポ執筆者

  • 荒木又三郎
    高スポ創刊者にして主筆。ACミランを愛する後天性フランス人。高スポ編集雑記に本音をぶちまける。
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