bjリーグは意外と良かった
bjリーグはエンターテイメント性を志向しているというので、湘南ベルマーレが参考にすべきところもあるかと思って視察してみた。…なんてね。バスケファンとして気になりつつも、有明の不便さに機会を逃し続けていたので一念発起したのだ。今さらながら。
(2008年12日28日 東京アパッチ77―67富山グラウジーズ 有明コロシアム)
富山グラウジーズが最下位のチームだったとは意外だ。首位を行く東京アパッチよりもむしろ富山の方が、私にとっては好感を覚えるチームだった。
チーム得点王・リバウンド王はロドニー・ウェブ(#0)だが、この日はババカ・カマラ(#1)の存在感が際立っていた。19得点13リバウンドという数字もさることながら、攻守において要だった。オフェンスではローポストのカマラにボールが入れば東京がダブルチームにいくので、周りの選手が合わせのパスを狙ったりアウトサイドでフリーになったりした。ディフェンスでもゴール下で最後の砦になっていたので、ガードの選手は後ろを信頼して、抜かれることを恐れすぎずにいた。
褒めすぎかも。シュート力はちょっと物足りないし、守備でもゴール下から離れないので相手の3ポイントを許す原因になっていた。まあ、欠点のない選手であれば違うリーグでプレーしているだろうが。
とはいえ、彼の長所をチームとして生かそうとしていたことは伺えた。チームとしての狙いが見えたのは東京よりも富山だったのだ。それゆえ、カマラがファウルトラブルでベンチに下がると東京に引き離されたし、カマラにボールが入る時間帯は追い上げることができた。
対する東京は、個々の選手のクオリティと選手層の厚さで富山を上回った。カマラやウェブに手こずって外国人選手がファウルトラブルに見舞われた(2人が5ファウル退場、もう1人も4ファウル)ものの、特定の選手の存在・不存在がチームに与える影響は、富山に比べれば小さく、安定して力を発揮できていた。その中で最多得点だったのは、ジョン“ヘリコプター”ハンフリー(#35)で21得点。彼はダイジェストで見るとダンク自慢野郎にキャラ付けされているが、実物は外角シュートも撃つし、バランスの取れた良い選手だった。
ただまあ、この東京アパッチは、富山に比べると私の好みではなかった。チームとしての狙いが明確でなく、個人技の集合体でしかないという印象なのだ。1対1が大好きでも構わないのだが、自チームのストロング・ポイントにも相手のウィーク・ポイントにも無頓着に見えた。なにしろPGの青木康平(#11)が20得点0アシストという数字だ。確かに彼は試合を決定付ける3ポイントシュートも決めたし、1対1を挑みまくっていてうまく得点する場面も多かった。日本人には珍しいアグレッシブな選手という評価もできるのかもしれないが、相手のディフェンスが整っていても1対1に持ち込もうとするあたり、戦術眼が不足しているのではないかと疑われた。PGなのに「0アシスト」ってなによ。
両チームとも、もう少しディフェンスを頑張った方がよいのではないかと思った。ただ、エンターテイメント、娯楽として考えるのであれば、守り合いの渋い試合を志向するよりはよいのだろうな。その辺は好みの問題か?
娯楽性の重視ということは、プレー面ではそれほど前面には出ていなかった。アイソレーションでエース外国人に1対1をさせたりするのかと思って(懸念して)いたのだが、そういうことはなく(イリーガル・ディフェンスのルールがないみたいなので当然か)、至極真っ当なバスケの試合だった。
娯楽性はコートの外での演出によってもたらそうとしていたのだろう。
一番特徴的なのは、「ブースターMC」の存在だ。試合中もずっとしゃべって観客を煽っている。ビジターチームのブースター(サポーターのこと)にも配慮して言葉を選んでいるし、プレー中は控えめなので、悪い印象は別になかった。「アウトオブバウンズで富山ボールです」などプレーの内容を軽く説明するのも悪くないと思うが、肝心な場面では説明しきれない。「今のプレーのどこがファウルだ?」と思ったときにも「ファウルで東京ボールです」程度の説明なので。まあ、客席に入っていてモニターを見ているわけではないので難しいとは思うが。
ただし1つだけ耳障りだったのは、たびたび「ベースラインからのリスタートです」と言っていたこと。「リスタート」は一般名詞として受け入れてもいいが、「エンドライン」のことを「ベースライン」と言い換えるのは気になって仕方なかった。別に独自ルールというわけでもなく、bjリーグでもエンドラインはエンドラインなので。
bjリーグ開始当時に見られたMCへの不評は改善したのだろうと思うが、湘南ベルマーレ放送部を聞き慣れている私からすると、好みじゃない部分がいくつかあったというところだ。選手紹介を巻き舌でコールされても聞き取れないので、「ここは日本じゃ」と思ってしまう。
子供達のダンスチームが演出に寄与しているのだが、これにも違和感を覚える部分があった。
プレー中に曲を流して「ゴー!アパッチ!」とか「ディーフェンス!」とかいうのは構わないが、ゴール裏で子供らが飛んだり跳ねたりしている。反対側のゴール裏から見ていたので、これが実に目障り。味方のシュートが決まったときに盛り上がるとかいうのではなく、絶え間なくだから。
それに、彼女らは試合開始前のアトラクションではボール拾いをし、選手入場では花道を作り、試合開始前にダンスを披露し、タイムアウトごとにダンスを披露し、ハーフタイムのアトラクションでもボール拾いをし、残りのハーフタイムにもダンスをし、オフィシャルタイムアウトではスポンサー看板を持って場内を跳ね回り…と3時間以上に渡って動き続けている。このうえプレー中にも意味なく動き回っているのを見ると、ちょっとした児童虐待に加担しているような気分になる。タダ同然なんでしょ? どうせ。
リーグが始まった当初はJBLとの差別化のために意識的に「エンターテイメント」を強調していたのだろうが、この日の印象では、プレー面でのアピールにシフトして良いと思う。この日の両チームぐらいの力関係で拮抗したゲームをできるのであれば、過剰な装飾をしなくても楽しめると思う。たぶん、私が言うまでもなくそういうシフトを行っているのだろう。
以下はメモ。
・「フリースローゲーム Presented by 月島もんじゃ」というイベントはバスケならではで面白い。月島もんじゃを連呼するのも悪くない。
・でも参加者は本当に靴をちゃんと拭いているのか? この後、試合開始までモップがけもしていなかったが。
・モップがけは本当に少なかった。試合中もことあるごとにダンスチームが出てくるので、ハーフタイムまで全面モップをする機会がなかったように思う。
・ティップオフの時間がズルズルと遅れたのはルーズな印象。
・試合時間も妙に長かった。2時間を超えるとは予想外だし、疲れた。
・オフィシャルタイムアウトがあるからか。これはスポンサーへの配慮という点では悪いことではない。
・スポンサーに産業能率大学さまが。
・東横線沿線の商店街がスポンサーに名を連ねている。商店街ね。なるほど。これ湘南もやってみたら。
・チームのサイトを見たらスポンサーじゃなくて「パートナー」なんだ。
・「オフィシャルLEDビジョン」ってなんだ? 画像の映るモニターはなかったから天井から吊り下げられた得点ボードのことか?
・富山のユニフォームの背中には「読売新聞」の文字が。ビッグスポンサー? これってやっぱり正力一族の地元だから?
・有明はやっぱり私にとっては不便。
・コミケの日には2度と行かない!
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