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2008年12月 1日 (月)

中野友加里はワシが育てた

 会場中が中野友加里に念を送った。かくいう私もその1人で、演技中にはエレメンツごとに「よし」と呟き、両拳を握り締めて脇が空き、徐々に首が前に出て下がった。立っていれば膝が曲がって腰が落ちていただろう。演技終了時に右手でガッツポーズを決めれば、おやまあモロゾフの出来上がりだよ。
(2008年11日29日 2008NHK国際フィギュアスケート競技会2日目 代々木競技場第1体育館)

 ショートプラグラムを終えて5位と、不本意な順位だった中野友加里には緊迫感が漂っていた。それを知ってか知らずか、演技開始前には「頑張れ」の掛け声が渦巻いた。国際大会というより全日本選手権みたいな雰囲気だった。それを聞きながら私は「根性見せろ」と念を送った(声にはしなかった。さすがに)。彼女には女子的なエールよりもそっちのほうが効果的かと思って。
 その私の念が通じて(?)、中野はすべてのジャンプを決めて根性を見せた。演技終了後は会場中がスタンディングオベーションで祝福し、盛り上がった。私もスタオベに加わったが、中野さんの場合、点数を見るまでは油断できないので、今度はジャッジ席に念を送った。案の定スコアは微妙。トリプルアクセルがなかったのはともかく、それ以外にも得点が伸びない理由があったのか。ステップはやや簡単っぽく見え、ラストのドーナツスピンは観客の期待を軽く裏切って淡白な印象だった。そのうえ回転不足のジャンプがあったらしいので、点数について文句を言うには当たらないか。念を送り足りなかったのかもしれない。スマン。

 ともあれ、まだあと4人を残して会場は異様に盛り上がった。後続の滑走者にはやりにくい状況だったが、鈴木明子はその流れに上手く乗った。ジャンプはオーバーターンなどがあって観客のため息を誘ったが、残り1分を切ってからのストレートラインステップは中野を凌駕し、スピンも良い感じでまとめ、前半の躓きを忘れさせる好印象で演技を終えた。これもスタオベ続出。結果、中野よりも点数が上だった。鈴木さんについてはポテンシャルを余さず発揮した印象だった。
 この2人の後で観客が一息ついてしまい、滑走順がディスアドバンテージになってしまったのがレピストとアシュリー・ワグナーだ。レピストはペースを乱し、ワグナーはジャッジがやや辛かった(と思う)。
 滑走順などは関係ないのが浅田真央で、ド迫力だった。最初のトリプルアクセルをクリアに決めて客席をドッと湧かせた後は次々とジャンプを決めて一気に押し切った。来賓席のカタリーナ・ヴィットもスタオベだった。それでも本人はダメだった部分もあると課題を口にするのだから恐れ入る。ま、今回はジャンプに専念してスピンなどはそれほど感心しなかったしねえ。いや、でもあのステップは余人の追随を許さない。フィニッシュ間際に突然ズルッと滑ったのはご愛嬌ともいえるが、私はむしろ惧れを感じた。あれは神がかっている。ほぼ完璧な演技かと思わせておいて、そうは問屋が卸さない。勝敗にはほぼ無関係なところで神が細工をしたのがあの滑りだ。意地が悪いというよりも、完璧な演技はもっと重要な時のためにとっておこうという配慮に思える。

 その他の印象はざざっと箇条書きで。
・ペアの前半は正直眠い。テレビではそうは感じないのに。リフトはそう大きな差はないけど、ソロジャンプとかスピンで思いのほか差がある。
・怜奈&ジョンはさすが。というか、彼ら2人を無意識のうちに基準にしているので下位のペアを見るのが辛いのか? そう考えると、鈍感になっているけど、あのレベルを頻繁に見ることができることに感謝すべきなのだろう。来週もよろしくお願いします。
・チン・パン&ジャン・トンは順当な優勝。女性が回した脚の下を男性がくぐるというのは多くのペアが行うが、この2人の場合は、回し蹴りをかいくぐる男性という感じで迫力がある。あの蹴りは当たったら大怪我しそう。
・アイスダンスは逆に、テレビよりも現地が好印象。下位のカップルでも見応えがある。なんでだろう。
・中国カップルの女性は、不出来に不満だったらしい。現地で見ていたら相方への不満表明かと誤解したが、映像を確かめたら自分への叱咤みたい。でも自分の両腿を叩いたりする動作が可愛らしい。てへ。
・リード姉弟の演技はリンク南西上方から見た。リンクとモロゾフを視野に入れられるように。後半のストレートラインステップの辺りから膝が曲がり、首が前に出始めた。終了時にはちゃんとガッツポーズ。うーむ。私などとは力の入り具合が全然違う。
・アイスダンスで一番盛り上がったのはフランスのカップル。ナタリー・ペシャラ&ファビアン・ブルザ。アップテンポなコミカル系の演技で、男性の袖の早変わりも印象的でよかった。会場もノリノリ。
・優勝はイタリアのフェデリカ・ファイエラ&マッシモ・スカリ。この日のフリーダンスは道化師風の衣装。フランスペアに食われた感じになってしまったが前日までの貯金で逃げ切り。ああ、オリジナルダンスで中学校の赤学年のジャージみたいな衣装だったカップルね。あれはよかった。
・結果、グランプリファイナルにはイタリアの2人。フランスの2人は出場を逃した。お、2週間後の韓国行きがキャンセルですか。どうです? 来週辺り新横浜で滑ってみては。
・女子シングルは日本勢のメダル独占はよいのだけど、外国の有力選手が来てくれなくなることが心配。ちょっとジャッジもホームリンクアドバンテージがあったような気もするし。気のせいですね。そうですね。
・ウズベキスタンのギマゼトディノワさんは好印象。とはいえ後半はバテバテだったのだけど。キス&クライで1人切りながらも愛嬌を振りまくところもよい。
・彼女に限らずスタミナが課題の選手が多いなあ。その点浅田真央の後半のステップは同じ人類とは思えないほどのスタミナ魔人ぶりだ。
・カトリーナ・ハッカーにはアメリカの底力を見た。サーシャ・コーエンを思い出すスパイラル。どんだけ層が厚いんだよ。
・表彰式に橋本聖子がいないと物足りない自分は正常なのだろうかと自問自答。でも彼が表彰状を読み上げるのはかっこいいんだよね。
・そうそう、2位以下の選手はちゃんと上位の選手を祝福しようぜ。アイスダンスではさすが欧米人ばかりだからなのか、頬を摺り寄せて祝福してた。女子シングルも握手してた。問題はペア。そこは欧米人代表としてジョンがリードしないとね。
・女子の3選手が表彰台でヴィットから祝福されて握手するときに、浅田真央は膝を曲げて頭を下げながら握手した。鈴木明子は頭を下げながら握手した。中野友加里は手だけ差し出して握手した。いや、中野さんが正しいのですよ。握手するときにお辞儀するのは日本人の悪い癖なので。でも中野さんがそれをすると男前といわれちゃうよ。私に。
・ああ、要らぬ心配ですが、私はタラソワのチュー攻撃は勘弁。

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コメント

数は少ないけど、いつもフィギュアの記事楽しみにしています。素人目線ながら(失礼!)、的を射た文章で、思いっきり共感できることばかりです。また生観戦した際には記事書いてください!

okapiさん
コメントありがとうございます。球技好きの三十路リーマンが戯れに書いているエントリーなのに、身に余るお褒めの言葉で恐れ入ります。
次はクリスマスオンアイスです。こう言ってはなんですが、素人目には微妙なメンツで切り口が見つからない可能性もあります。が、自分へのメモ代わりに何か書く予定です。その程度の意識なので何を書いても、怒らず・煽らず・期待せずの気持ちで生暖かくご覧いただければ幸いです。

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  • 荒木又三郎
    高スポ創刊者にして主筆。ACミランを愛する後天性フランス人。高スポ編集雑記に本音をぶちまける。
  • 三鷹牛蔵
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