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2009年7月 4日 (土)

ドゥンガの強運はいつまで続くのか

 ドゥンガというのは、ツキのある男なんだろう。ブラジル代表の監督に就任した直後はシャツのセンスにまで批判を受けたわけだが、コンフェデレーションズカップは失地回復の絶好の機会となった。アメリカとの決勝戦では前半のうちに立て続けに2失点しながら、怒涛の大逆転劇をかます。振り返れば綱渡りの勝利が多かったにもかかわらず、そんな記憶は今やファンの脳裏から吹き飛んだはず。キャプテンとして優勝した94年W杯に続く勲章を、いかにもあっさりと手にした印象は否めない。

 ドゥンガの立場からすれば、なんてったってトーナメントでイタリア、スペインと戦わずに済んだのは大きかった。場合によっては、イタリアのしぶとい守備を崩せずに敗れる可能性もあったはずだし、あるいは、スペインとのテクニック勝負に負けるという最悪のシナリオもあり得たはずだ。準決勝で南アフリカ、決勝でアメリカという対戦相手の組み合わせは、監督にとって望み得る最高のものだったかもしれない。
 だいたい、チームの戦力からして運に恵まれていたことは否めない。未だルッシオ、フアンに依存せざるを得ないセンターバックはともかくとしても、右サイドバックにマイコン(インテル)とダニエウ・アウベス(バルセロナ)の2人を抱えているのは心強かった。現在のサッカーにおけるサイドバックのオーバーラップの重要性はいうまでもなく、他チームの監督からは垂涎ものの戦力だったに違いない。また、ミランで交代要員に落ちぶれるロナウジーニョを望む声はもはや聞こえず、迷うことなくカカにエースの座を与えられた点も大きなアドバンテージだったろう。おかげでカカの盟友ルイス・ファビアーノをFWに重用できたわけだし、自己中心的なプレーに終始するロビーニョを平然と放置する余裕もできた。度々、苦戦を強いられながらも、最後の最後で戦力の差がモノを言ったのは、D・アウベスのFKなどが証明しているところだろう。

 そもそもコンフェデレーションズカップは、ヨーロッパ勢と他の地域とではモチベーションに大きな差がある大会だ。欧州でプレーする選手にとって、この時期はバカンスのためにあるのであり、シーズンの疲れを押して身命を捧げてプレーするなどあり得ない。また、移籍話の騒がしさから逃げるのに格好の場となっているような選手だって少なくないわけで、番狂わせや世界市場への売り込みを狙ってやってくる他地域の選手とはしぜん、気持ちに差が出てくる。その意味で、ブラジルは欧州勢より優位だった。ビッグクラブに所属するスター選手は決して多くなかったし、そうではないカカやルッシオも今シーズンはリーグ優勝とは無縁だった。

 しかし、それにしたってイタリアの低調ぶりは非難されてしかるべきだろう。世界王者という立場で出場しながら、1勝2敗、5失点という不甲斐なさは、ノルマを果たしたとはいい難い。思えば、ユーロでリニューアルに失敗し、たいした考えもなくリッピを呼び戻したわけだが、お家芸の手堅い守備はまったく機能しなかった。中盤でまったく包囲網を張れず、仕方なくラインを崩してボールに向かうカンナバーロは度々かわされ、しかもキエッリーニのフォローはあまりにもお粗末。攻撃陣の人材不足も深刻であり、未だカモラネージのドリブルに頼らざるを得ないのには呆れてしまう。本大会に向けて、リッピがこの一年でどう建て直すかが注目される。

 一方、初のW杯優勝を狙うスペインも、不安を残す結果に終わったといえよう。粋人・イニエスタと大黒柱・セナが不在のなか、相変わらずリアリズムとは無縁のプレーに終始し、伏兵・アメリカに足元をすくわれた。大会を通じて最も良いサッカーをしていたのは間違いないのだが、準決勝では先制されているというのに「このままいけば当然、点が取れる」といわんばかりに手数の多い攻撃を繰り返した。逆サイドでフリーの選手をつくり、そこへ見事なサイドチェンジを繰り出すものの、ワンテンポ置いて放り込まれるクロスはしょせん、ゴール前に陣取ったアメリカの選手に跳ね返される。かといって、良い位置でFKを得ようなどというプレーは選ばず、結局のところ、期待を抱かせるのはビジャの強引さくらいだった。勝負に徹しきれない甘さは、大規模な大会になるほど命取りになるのは間違いない。

 とはいえ、優勝したブラジルが南アW杯優勝の最有力候補に躍り出たかというと、そうではないだろう。南米予選でトップを走るとはいえ、勝率は5割(7勝1敗6分)。予選が再開する9月5日にライバル・アルゼンチンとの直接対決を控えており、早くも真価が問われる。コンフェデで優勝したことで、たとえ引き分けても国内から厳しいバッシングを受けるのは免れないだろう。運に恵まれた感のある国際大会での優勝が、逆に重荷となることはあり得る。むしろドゥンガの正念場は、これからなのかもしれない。

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  • 荒木又三郎
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