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2009年8月11日 (火)

カカとベッカムとマルディーニを失ったミランに求められる“大幅な出直し”

 カカを失い、ベッカムは去り、そしてマルディーニはスパイクを脱いだ。監督交代という事実を持ち出すまでもなく、今シーズンのミランには“大幅な出直し”が求められる。移籍市場でのもたつき、プレシーズンマッチでの苦戦が伝えられるなか、何とかチャンピオンズリーグ出場権を獲得した昨シーズンを振り返っておく。近日中にとっておきの新戦力が加わることを期待しつつ・・・。

 昨シーズンのミランは、開幕前の予想よりも遥かにうまくやったといえる。期待された主力FWの獲得に失敗したうえ、ネスタ不在のDFラインもどうにかこうにか持ち堪えた。プレシーズンマッチの緊急事態――使えるFWが一人もいないため、アンブロジーニが度々、前線に立った――を思えば、最終戦までもつれ込んだとはいえ、チャンピオンズリーグ出場権を獲得できたことは、、十分に満足のいく結果だったはずである。

 しかし、そんなふうに思えるのも、しょせんはここ数年の度重なる「失敗」に慣らされてきたからなのかもしれない。なんといっても、これほど多くの新戦力が活躍したシーズンは、えらく久しぶりだ。中途加入したベッカムは、正確なクロスとサイドチェンジでカカに依存しきっていた攻撃を変革したし、いうまでもなく、そこにはザンブロッタ、フラミニの献身的な動きがあった。カフーが去って以来、長く機能不全に陥っていた右サイドは活性化し、カカが不在がちだった後半戦を引っ張った。また、数年ぶりにチームに復帰したGKアビアーティにしても、負傷するまでは抜群の安定感でゴールマウスを守ったといえる。ただし、これら新戦力のうち、フラミニ以外はすでにベテラン選手という点は玉に瑕だが・・・。

 とはいえ、昨夏の補強がリーグ優勝を狙うクラブの水準に達していなかったのは、間違いない。大型FWの獲得に失敗し、てんやわんやでレンタル先から呼び戻したボリエッロは、チームにフィットする前に早々と負傷離脱した。8試合で1ゴールという成績では、評価できる要素はまったくないといえる。まともな出場機会を与えられなかったシェフチェンコに関しても同様で、試合数はともかくプレー時間があまりにも少なかったという情状酌量の余地はあるものの、リーグ戦で無得点という結果ではチームへの貢献度ゼロといわざるを得ない。さらに、アーセナルから急遽借り受けたセンデロスは、予想どおり、目も当てられないほどにひどかった。プレミアリーグですらプレーの雑さがめだっていたDFが、セリエAで通じるはずもない。個人的には、レンタル先から呼び戻されたのにほとんど出場機会の与えられなかったアントニーニには、かなり同情するが・・・。

 しかし、何より問題だったのは、落ちぶれたスーパースター・ロナウジーニョの加入である。いささかのゴール数以外に彼がチームへもたらしたものは、混乱のみだった。カカを頂点にしていた攻撃陣のヒエラルキーは崩壊し、母国の先輩の存在はパトにもカカにも足枷となった。さらに、よせばいいのに王様然として左サイドでパスを待ち続けるため、アンブロジーニとヤンクロフスキーが飛び出すスペースは奪われてしまう。そしてまた、彼にとっては守備の約束事などないに等しいらしく、敵のカウンター成功率を上げるのにも大いに貢献した。結局のところ、序盤に重ねたゴールにしたところで、前線で最も動きが少ないがゆえにフリーになれるケースが多く、労せずして功をなしたというのが正しい解釈だろう。バルサ時代のように、自らゴール前に切り込んでシュートした得点は、皆無だった。
 こうしたロナウジーニョの姿は、シーズン途中から加わったベッカムのそれとは正反対であり、むしろ金髪の貴公子が反面教師にしていたのではないかとすら思わせた。シーズン後半にベンチスタートが増えると、さすがに守備に戻ったりもするようになったのだが、気まぐれに発揮される勤勉さは却って周囲の選手を困惑させていたように映った。率直に言って、ボリエッロやシェフチェンコはもちろん、生粋のゴールハンターであるインザーギと比べても、守備への貢献度は低かったといえる。10ゴールという結果が真実を覆い隠すベールになっているが、そもそもボリエッロやシェヴァとは与えられたチャンスが異なるわけで、彼こそが新戦力のワーストだったといわざるを得ない。

 結局、なんだかんだ言っても、ミランを救ったのはベッカムだろう。デビュー後、速やかにチームの戦術に馴染み、正確無比なキックでチームの戦術の幅を広げた。中・長距離パスの出どころがピルロと2つになり、だらだらと攻めあぐねる時間帯は大幅に短縮。ひたむきなランニングで攻守に大きく貢献するパフォーマンスは、闘犬ガットゥーゾの不在を埋めるに十分なものだったといえる。
 また、表面的にはめだたないものの、永遠の青年・マルディーニのフル稼働こそが、チームの安定を支える原動力となったのは間違いない。ネスタはもちろん、カラーゼ、ボネーラが相次いで負傷するなか、ファヴァッリと2人でディフェンスラインを献身的に支えた。致命的な判断ミスを繰り返すセンデロスの拙さを見せ付けられるたびに、40歳の鉄人の凄さを思い知らされた。マルディーニの貢献がなければ、ベッカムをはじめとした新戦力が「プラスα」になることもなかったろう。
 もちろん、中盤戦以降、ゴールを量産したインザーギの活躍も忘れられない。ユーロに呼ばなかった代表監督リッピをあざ笑うかのように活躍し、驚異的な得点力を発揮した。試合の趨勢を無視して得点できる彼の持ち味は、老いてもなお頼もしい。

 こうしてみてくれば明らかなように、今シーズンのミランには“大幅な出直し”が求められる。変革をもたらしたベッカムはアメリカへ去り、屋台骨を支えてきたマルディーニは選手生活にピリオドを打った。それは、アンチェロッティからレオナルドへ監督が交代したという以上に、大きな意味を持つだろう。しかし、にもかかわらずクラブ首脳は最強のカードであるカカを売り払ってしまったのだから、まずは彼ら中心選手の代わりになる新戦力の獲得が欠かせない。仮にリーグやCLでの優勝を狙うというなら、さらに上乗せ分の戦力が必要になろう。
 クラブ首脳はロナウジーニョを核に据えたチームの構築を標榜しているが、プレシーズンマッチではすでに6敗とか。新戦力の獲得も思うように進んでいるとはいい難く、前途多難とはこのことだ。
 近日中に新たな戦力の獲得が発表されることを期待し、今季の展望については改めて筆をとりたい。

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高スポ執筆者

  • 荒木又三郎
    高スポ創刊者にして主筆。ACミランを愛する後天性フランス人。高スポ編集雑記に本音をぶちまける。
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