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2009年9月 7日 (月)

必要なのはプレッシングの抜き差し――オランダ戦

 対抗する手段はプレッシングサッカーのみ、という結論は何も変わらないということだろう。日本が怒涛のボール狩りを仕掛けられたのは、前半30分まで。ハーフタイムまでは何とか優位に立っていたが、後半に入ると主導権はまったく握れず、建て直すことができぬままに失点を重ねた。しかし、約30分間とはいえ、オランダを戸惑わせたことにこそ、価値がある。最終的なスコアは実力の差を雄弁に物語るが、それは期待の持てないシュートを撃ち続けた前半の日本に対し、オランダは相手の守備を崩さずともゴールできるという当たり前の事実を示したに過ぎない。今後の岡田ジャパンには、プレッシングの抜き差しを誤らず、攻撃の精度を上げていくことこそが求められる。

 認めたくはないのだが、玉田が鍵だった。ワントップとは思えないような深いポジションを取り続けた男は、間違いなく前半のプレッシングを支えていたといえる。
 しかし、センターサークルまで戻ってボールを追い回すワントップには、せっかく味方がボールを奪っても、全速力で前線へ駆け上がることはできない。スペースに走り込むのは岡崎や中村堅剛ばかりで、効果的なカウンターは仕掛けられなかった。加えて、ゴールハンターとして振る舞うこともできなかったし、もちろん、ポストになってボールをさばくだけの強さも発揮できなかった。それでも、玉田が守備に貢献したからこそ、ボランチの遠藤や長谷部が的確なポジションをとれたのは間違いない事実だ。良くも悪くもこれが岡田監督の戦術であり、少なくとも選手の足が止まる前半30分くらいまではそれが成功していた。例えば、スナイデルが長谷部に喰らわせた危険なタックルは、自らの技術の見せ場を奪われ続けていた苛立ちを如実に示す。プライドの高い彼らは、明らかに苛立っていたといえる。

 試合を決定付けた最大の要因は、本田の投入だろう。後半に入って、日本は明らかにプレッシングのバランスを崩した。
 玉田に代わって登場した本田は、交代に合わせて1トップに入った岡崎のあとを受けるはずだったのだろう。試合の駆け引きとしては、開始直後から再びプレッシングを仕掛け、もう一度主導権を握る必要があったと考えるのだが、本田は自らがカバーすべきスペースを放棄した。いうまでもないが、オランダが巻き返しを図ってくるのは当然で、すでにガス欠気味だった日本は、最初にハッタリをかまさなければならなかったはずである。ところが、攻守に献身さを示した前半の岡崎に比べ、本田はあまりにも自由奔放だった。それが、岡田監督の意図したものだったかどうかは、わからない。わからないが、彼のポジショニングによって10番スナイデルはわずかに――しかし彼には十分に――自由になり、中盤の底からメンデスらが上がる余裕も与えてしまった。そして、日本はスタミナ切れによる最後の一歩の差を露呈し、立て続けに失点。前半のようなプレッシングは二度とみせられなかった。

 前半のようなプレッシングを90分間続けられるはずがない、という指摘は正しい。しかし、そんなわかりきったことを声高にいったところで、何になるのだ? プレッシングを加減して真っ向勝負をしたところで、結局は歯が立たないことも、後半をみれば明らかだろう。オランダは日本の守備を崩しきらなくとも得点できたわけだが、日本はそうじゃない。そしてこの事実はまた、守備を崩されなかったとしても、日本は失点してしまうという限界を意味する。まともにいって得点できず、失点も防げないのに、どうすればよいというのか? この理解があるからこそ、岡田監督は前線からプレッシングを仕掛け、高い位置でボールを奪おうとしているはずだ。それによって相手に窮屈な攻撃を強いて、あわよくばスピーディーなショートカウンターを狙う。この点に関する限りは、他のプランも示さずに批判する輩の神経こそ、わからない。
 例えば、日本にブラジル、アルゼンチンのようなテクニカルなサッカーができるのか? スペインのような華麗なパスサッカーができるのか? あるいは、欧州の中堅国のように低い位置でのプレッシングをメーンにして、失点せずにロングカウンターで得点できるのか? 
 岡田監督は、悩んだ挙句に現在の戦術を選んでいるのであって、「選手の力がすべて」といわんばかりに、初めからブラジル流を決めていたジーコとは違う。ディティールはともかくとして、プレッシング重視の本質自体は間違っていない、と個人的には考える。オランダ戦は、プレッシング重視の無謀さを示したのではなく、むしろそれによって30分間も主導権を握れることを明らかにしたのだ。

 岡田監督の戦術を前提にすれば、いま必要なのはプレッシングの“抜き差し”だろう。90分間にわたってやり続けるのではなく、効率的に相手のリズムを狂わし、できれば効率的に得点を挙げる。そのためには、試合の流れを読んでプレッシングを敢行し、それ以外の時間帯は守備の穴を徹底して埋めつつ、攻撃では無理をせずにFK獲得を狙う。勝負に徹する限りは、それしかないだろう――岡田監督は、そういうふうに考えているのだと思う。
 実際、日本の守備の綻びは相変わらずだった。失点シーンはもちろん、ところどころで危うさをみせたといえる。クリアボールを簡単に奪われるシーンは少なくなかったし、前半には内田が以前にもみせたような軽はずみなプレーで、ファンペルシーにシュートを許した。オーバーラップ後に背後のスペースを埋めようとする勤勉さは認めるが、彼はいかんせん、FWを見失いすぎる。中澤がもう一人いれば、3バックもありなのだが。
 そして何より、攻撃は致命的だ。ゴール前でのプレーの拙さは何ら改善していない。戦術上致し方ないとはいえ、チャンスの際にゴール前にいる人数が足りなすぎる。ボールを持ってから前を向けるフィジカルの強さがないために、あまりにも慌しく、芸がない。結果として、撃つ前から入るとは思えないシュートばかりとなってしまう。個人的には、もっと意識的にペナルティエリア外からのダイレクト・ミドルを狙うべきだと考える。そのチャンスはいくつかあったし、それができる人材も中盤には揃っているのだから。

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高スポ執筆者

  • 荒木又三郎
    高スポ創刊者にして主筆。ACミランを愛する後天性フランス人。高スポ編集雑記に本音をぶちまける。
  • 三鷹牛蔵
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