田原豊の異能FW力をロジカルに消化?
こういう勝ち方をした以上、昇格しなければならないと思います。後半ロスタイムに決勝ゴールを決めた田原豊のコメントだ。伸びきった長髪姿でそれを言われると「おお、あなたが預言者ですか」と思ってしまう。この日のゴールと勝利は、まったく必然ではなく、論理的な帰結でもなく、「勝つ意志が強いほうが勝った」というような精神面で語るのも違うと思う。シーズン終盤らしく、人知を超えたものが蠢き始めている。
(2009年10日21日 湘南ベルマーレ1―0サガン鳥栖 平塚競技場)
試合開始から攻勢をかけてチャンスを作り出した湘南だったが、ゴールを決められないうちに徐々に鳥栖がペースをつかんだ。
鳥栖がペースを取り戻した原因は、鳥栖のターゲットマンであるハーフナー・マイクと湘南DFジャーンのマッチアップにある。序盤はジャーンの完勝だったが、時間が経つうちにハーフナーがハイボールに触れる回数が増えていた。完璧な「合わせ」こそなかったが、十分脅威だった。
そしてもう1つ。鳥栖のボランチ・ホベルトへの対応が徐々に甘くなっていたことも見逃せない。鳥栖の隠れキーマンであるホベルトに対しては坂本紘司と寺川能人が目を配っていたのだが、そのマークが時間の経過とともに外れることが増えていた。そのことで直接的にピンチを招いたわけではないが、鳥栖にとっては「自分たちのペース」と思えるようになっていたはずだ。反町康治の「相手のストロングを強調しすぎて守りに入ってしまうのは面白くない」というのは、こういうところを指すのだろうけど。
ただ、相手の長所云々は別としても、試合終盤は中盤の守備で後手を踏む場面が多かった。坂本・寺川は攻撃に転じたときの迫力こそ残していたが、守備時には運動量の減少が見えた。私は鈴木修人を投入すべきだと考えていた。それは決して守備だけを強調しての意見ではない。彼は流れの中でのミドルシュートを持っているし、この試合展開であれば彼のプレースキックが試合を決める公算が強いと思ったのだ。
そもそも私は鈴木修人の先発起用を予想していたのだが、アンカーの位置で起用されたのは永田亮太だった。その永田は、守備にウエートを置いたというコメントを残しているが、その守備意識は過剰だったと思う。走りこんでミドルを狙うシーンがあったが、始動地点が低すぎた。それ以上に気になったのは、相手FWの前進を気にするあまりバイタルエリアを空けてしまう場面があることだ。上がってくる相手FWをチェックするのはよいのだが、受け渡さずにDFラインまで付いていってしまう。DFラインの人数が余ってから本来の位置に戻るのだが、それまでの間、DFラインの前のエリアがポッカリと空いていて危なっかしくて仕方ない。鳥栖の攻撃がサイドからハーフナーへのクロスを狙っていたので事なきを得たが、山瀬幸宏あたりが中央突破を狙ってきたらと私は怖れていた。
そんなわけで私は中盤守備にヒヤヒヤしながら見ていたのだが、反町はそこには手を打ってこない。唯一の交代策は76分に中村祐也を下げて1か月半ぶりのアジエルを投入したことだけだ。結果的にはこれが的中。寺川からのパスを受けたアジエルが前線の田原豊にラストパスを送り、その田原が決勝ゴールを決めたのだから。
結果だけから判断するなら「反町はよく耐えた」といえるのかもしれないが、どうも釈然としない。「フリーズ」していたのではないかという疑念は残る。中盤の運動量の補完をしなかったのは納得できない。坂本・寺川をピッチに残したいというのはわからないでもないが、それならば阿部吉朗を外して坂本を前線に上げるという手段もあったはずだ。反町が右手に持っているはずのロジックは、一体どのように発揮されたのだろうか。
この日好調だった中村祐也を下げて、今ひとつ輝きの見えなかった阿部吉朗をピッチに残したというのがポイントなのかもしれない。阿部の守備力を評価してピッチに残したのかと思っていたが、違ったのかもしれない。
中村がたびたびスタイリッシュなシュートを放ちながらGKの正面をついた。美しさや上手さではない何ものかが必要な試合だったのかもしれない。そう考えると、田原・阿部という「異能のFW」たちの言語化できない力を頼みにしたのだとしたら、それがロジックなのかもしれない。
【キャプテンマーク予想ゲーム】
5巡目は田村→坂本→ジャーンときた。次は順番どおりに寺川だろう。もはやこの予想がゲームとして成り立つ時期は終わったか。
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