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2009年11月23日 (月)

3強揺るがず、ベニテスは息切れ――プレミア指揮官の序盤戦の通信簿

 チェルシーがマンチェスターユナイテッドを降して首位の座を確かにする一方、気がつけば1試合少ないアーセナルが3位に浮上してきた。開幕前、マンチェスター・シティの大量補強で4強体制が崩れるといわれたプレミアリーグだが、蓋を開けてみれば結局、3強の争いに――。古豪トットナムが4位に食い込む活躍をみせるなか、リバプールは不振を極め、シティは下馬評を完全に裏切った。日程のおよそ3分の1が経過した序盤のリーグ戦を、頼まれてもいないのに振り返る。

 首位を走るチェルシーは、やりくり上手のアンチェロッティの手腕が光っている。本来、豊富すぎる戦力は諸刃の剣のはずなのだが、デコ、バラックを生かしつつ、ジョー・コールの復帰後も難なく収めており、ここまではめだった不協和音は聞こえてこない。ジョーコールの復帰戦では、絶対的なエースであるランパードに「ジョーにPKを譲るべきだった」と語らせるあたり、いかにも憎い演出だ。さすがミランで鍛えられた気遣いの妙は一味違う。
 問題は、年明け後に控えるアフリカ選手権で、フル稼働しているエシアンの穴をいかに埋めるかに尽きるだろう。最有力の代替要員であるミケルまで出払ってしまうため、ランパード、デコ、バラックで中盤の守備網を敷くというチャレンジに踏み切るかどうかの判断に迫られる。このへん、改めて無駄に豊富な戦力だと思ってしまうのだが、冬の補強でさらなる人材を獲得するという離れ業をやってのけることもあるかもしれない。
 もっとも、その前に来週末からアーセナル、マンチェスター・シティの2連戦が控える点を忘れてはならない。ファンペルシーを失ったアーセナルとやれるのはチャンスといえるが、CLのないシティはもはや目標(=リーグ優勝)を失っており、選手たちが首位との一戦に牙を研いでいるのは間違いない。ここを2連勝で乗り切れば、優勝は自ずと見えてくるだろう。

 C・ロナウドとテベスというジョーカーを失ったマンチェスター・ユナイテッドは、得点力の低下が著しい。1試合当たり2得点というペースは、2.5得点のチェルシー、3.0得点のアーセナルに大きく遅れをとるものだ。オーウェン、ナニ、バレンシアらが彼らの代役になれているとはいい難く、ルーニーへの依存度が高過ぎる。ロナウドはともかくとして、テベスの離脱は明らかにファーガソンのミスだった。逆転を狙うにはカンフル剤が求められるところであり、冬の移籍市場での戦力アップは欠かせない。
 とはいえ、ファーディナンドの不振を筆頭として、守備陣もぴりっとしていないのが本当のところだ。さすがのファーガソン王国も、世代交代の局面を迎えているという印象が拭えない。
 史上初の4連覇達成を成し遂げるには、アフリカ選手権の期間をいかに制するかによる。ライバルに比べればW杯に参加するメンバーも少ないはずで、大会前の怪我を恐れる選手が手を抜くことによるダメージも少ないないだろう。ギグス、スコールズが踏ん張れば、巻き返しの可能性は十分ある。

 アーセナル=ベンゲルには、頭が下がる。開幕前にアデバヨールとトゥレを失い、さらにウォルコットとナスリがろくに使えなかったにもかかわらず、3位に滑り込んでいるのは賞賛されるべきものだろう。凡百の指揮官であれば、今頃はその座を追われ、来季の契約に向けてメディアに耳障りな言い訳をしているところである。昨季1月から加入したアルシャービンの大ヒットが効いているのは事実だが、デニウソンまでが負傷する事態に至っても、ソング、ディアビが主力として活躍。毎年、主力を引き抜かれる中で、着々と若手を育ててきたベンゲルの功績は大きい。アヤックスから獲得したベルメーレンがすっかり最終ラインに定着している点も、相変わらずの相馬眼の高さを物語る。
 後半戦に向けて気にかかるのは、時に決め手を欠く試合運びに尽きる。そのへんが若さなのかもしれないが、好機を逃し続けて勝ち点を失うゲームは少なくない。大勝も多いが、自滅による取りこぼしという展開もめだち、頂点をめざすチームとしては大きな不安材料となっている。
 しかし、ウォルコット、ナスリらの復活で状況は改善してくるはずだし、一足先に合流したロシツキーが復調してくれば、さらに心強い……はずだった。ここに来てチーム内得点王のファン・ペルシーを失ったのは、あまりにも痛いといわざるを得ない。しかも、オランダ代表の親善試合での負傷というのだから、ベンゲルにとってはどうしようもない。
 所属メンバーをみる限り、彼こそは最も代わりのいない選手だった。エドゥアルドは未だチームにフィットしているとはいえないし、ベントナーのシュート技術に大きな期待を寄せるのは冒険だ。この期に及んでアデバヨール放出の代償を支払わされるとは、指揮官もよもや思わなかったに違いない。そもそも、ベンゲルのチームはテクニック面で二極化するのが常であり、今後はエブエ、ディアビ、復帰間近のデニウソンあたりのシュートが枠を捉えるかどうかが、問われるだろう。

 リバプールの現状は、もはや「4強」という表現を使うことをためらわせるものだ。リーグ戦で首位争いに絡めないのはもはやいつものことなのだが、CLでもリヨン、フィオレンティーナの後塵を拝し、予選リーグ突破は絶望的となっている。ここ数年は、内弁慶ならぬ外弁慶ぶりを発揮して何とか名門の体面を保ってきたわけだが、このままでは指揮官ベニテスも転職先を探すことになるだろう。13試合を消化して6勝5敗2分けという成績は、保有する戦力にも、シーズン前の出資額にも、まったく見合わないといえる。
 シャビ・アロンソのレアル移籍が想定外だったとしても、9月末以降のブレーキには同情の余地はない。ホームでマンUに勝ったとはいえ、それ以前は4連敗、それ以後は1敗3分け(CL含む)となっており、チームがリニューアルしきれていないのは明らかだ。そう思えば、右サイドバックのグレン・ジョンソンに28億円も払ったのはまったく馬鹿げているといえる。そもそも、メンバーがW杯予選で酷使されるのはわかりきっていたことであり、主力不在時のプランはしっかりと立てておくべきだった。確かに、シャビ・アロンソの代役として獲得したアクイラーニが離脱してしまった点に同情の余地はあるものの、他の3強の指揮官をみれば、ベニテスがやりくりに失敗したのは認めざるを得ない。例えば、アーセナルが見舞われた事態と比べれば、リバプールの現状は十分に安泰と呼べるものだろう。選手から不穏な発言も聞こえ始めており、ベニテスが求心力を失っているのは想像に難くない。

 最後に、マンチェスター・シティについても一言。ネームバリューばかりで人材を集めても、チームは機能しない。開幕当初から、レアルの買い漁り方に比べると、彼らの買い物は相手が要らない選手ばかりを掻き集めた感が否めなかった。例えば、DFダンをアストンビラへ放出してまで同じポジションにレスコットを獲得したことは、明らかな失敗だろう。彼らはアストンビラからバリーまで奪っているわけだが、にもかかわらず後塵を拝しているのは愚の骨頂だ。サンタクルス、シウビーニョ、コンパニーの獲得も、ここまでは無駄な投資となっている。
 結局のところ、ロビーニョ獲得の失敗から、彼らは何も学んでいないと言わざるを得ない。獲得した選手たちは、いずれもチームの屋台骨になれるような選手ではなかった。個人的には、馬鹿げたフロントの下でマーク・ヒューズはよくやっていると思う。最近になって、ガットゥーゾや愛弟子ベントリー獲得の噂が出ているが、少しはヒューズのリクエストも聴くことになったということか。
 いずれにしても、これから上位に絡んでくるのは無理だろう。

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高スポ執筆者

  • 荒木又三郎
    高スポ創刊者にして主筆。ACミランを愛する後天性フランス人。高スポ編集雑記に本音をぶちまける。
  • 三鷹牛蔵
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