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2009年11月22日 (日)

魂揺さぶる男・坂本紘司の決勝ゴール

 勝点で並ぶ甲府を突き放す決勝ゴールを決めたのは、湘南ベルマーレの10年間をすべて知る、チームの顔・坂本紘司だった。大一番のロスタイムに主役に躍り出るのはさすが、というか、これはもう天の配剤だろう。
(2009年11日21日 ヴァンフォーレ甲府2―3湘南ベルマーレ 小瀬スポーツ公園陸上競技場)

 レギュラーのCB2人を欠いた甲府が、守備の不安を露呈しないためであろうか、試合開始から攻勢に出た。FW金信泳が身体ごと押し込もうとしたシュートを野澤洋輔がビッグセーブで防いだので事なきを得たが、湘南にとっては、後手を踏んだ形であった。
 しかし今季の湘南は、不本意ながらカウンターのチームである。4分にカウンターからアジエルがゴールポストにシュートをぶつけると、6分にはこれまたカウンターで中村祐也が先制ゴール。10分にもショートカウンターから寺川能人のクロスがファーに流れ、それをアジエルが拾うと、走りこんだ臼井幸平が2点目を決めた。

 鮮やかな速攻でアドバンテージを得た湘南だが、試合は相変わらず甲府ペース。
 それが原因ということはないと思うが、ホームの声援は無視できなかった。チャンスのときにはピッチの周囲320度(湘南サポ以外の全方位)が一斉に湧き上がる。チャンスのときばかりではなく、単にボールを奪っただけでもカウンターのチャンスのような盛り上がり方を見せた。「いやいや、DFの人数がそろってるからチャンスじゃないって」と思ったのだが、それでも湧き返るというのは、相手を慌てさせる効果があるのかもしれない。
 実際、甲府の1点目は、湘南DFの人数は揃っていたのに、ジャーンがインターセプトをしようとしてバランスを崩したところで金に決められたものだった。

 それと、ホームの雰囲気作りは審判にも影響を与えるのかもしれない。主審の西村雄一氏は、ホームチームの甲府が早々に2点リードされたことに罪悪感を覚えたらしく、少し匙加減を調整したように見えた。いやいや、2点差になったのはアナタ様のせいじゃないのに。
 このゲームは昇格争いの大一番であるから、J1・J2同時開催日であるにもかかわらず、審判界の精鋭たるスペシャルレフリー様、しかもAFC年間最優秀レフリー候補の西村氏を派遣していただいた。折角のお気遣いですが余計なおS…。24日にはマレーシアで栄えある表彰式なんだから、エステに行ったり、燕尾服を新調したり、旅支度に専念していただいてよかったのに。
 ただし、後半になって甲府が追いついたPKの判定は、ホームびいき云々ではないだろう。あれは湘南の左SB島村毅の若さが出た。ボールの行方の予測が甘くて棒立ちになっていたように見える。さらに、同点になってからは匙加減をやめたようだ。湘南サポ的には胸を撫で下ろすところだが、甲府サポにとっては理不尽に思えただろう。途中で判定基準が変わったから。かくして、気配り主審はホームもアウェーも敵に回したとさ。

 80分頃までは甲府ペースだったのが、ラスト10分頃からは湘南ペースになった。試合途中まで湘南のクリアボールは、甲府のアンカー林健太郎の的確なポジショニングによって拾われることが多かった。これが逆転した。甲府のクリアボールや前へ繋ぐパスに対して、湘南のアンカー田村雄三が鋭くチェックして奪い返すシーンが激増したと思う。それによってセカンドチャンスが一気に増えた。
 ロスタイムに入る間際に、足を痛めたというジェスチャーをしていた林健太郎がベンチに下がったが、林が負傷(?)したことで田村が前進できるようになったのかもしれない。さらに、甲府ベンチは林に代えてFW松橋優を投入した。このことも湘南の勢いを加速したのかもしれない。
 ただ、これを一概に失策ともいえない。4位の甲府にとってドローのもたらすダメージは湘南よりも大きいので、勝点3を狙うために、ロングボールで走らせる選手を投入するという策にも一理あるからだ。

 こうした伏線があって、あのゴールが生まれたわけだ。
 93分に右サイドライン際をドリブルしていたアジエルがファールで倒され、FKを得た。アジエルがファーサイドめがけて蹴った山なりのボールに対して、甲府GK阿部謙作が飛び出した。阿部は「ボールに触れるタイミングで出たが後ろから間に入られて触ることが出来なかった。(林が交代したことで)ディフェンダーの高さがなかったから自分が出るしかないと思っていたが、結果論として出なければよかったと思う」とコメントしている。そして、ジャーンがヘディングした。そのボールはこれも山なりにゴールへと向かっていき、クロスバーに跳ね返って、ゴール前に詰めていた坂本紘司の胸元に。胸トラップで落としたボールを坂本が左脚でシュート。右サイドネットに突き刺さった。
 湘南で10年間を過ごし、「緑と青の血が流れ」(本人談)、いまや「湘南の象徴」といわれる坂本のところにボールが行くというのは、なんともドラマチックだ。ジャーンのヘディングがそのままゴールインしても、ゴール前中央で待っていた田原豊のところにボールがいってもなんの不思議もなかったというのに、サッカーの神は坂本を選んだ。

 目の前のゴールに蹴りこまれたボール。そして目の前に駆けてくる坂本紘司の姿を見て、湘南サポーターは大絶叫。当たり前だ。
 でも、柵を倒したのはご愛嬌とはいえない。あの騒ぎのおかげで、ゴール裏は落ち着きをなくした。かくいう私は「あそこ、何かあったの?」という嫁を「うるせえ! ピッチに集中しろ!」と怒鳴りつけたらしい。だってそうでしょう? 度を失うのはまだ早い。

【キャプテンマーク予想ゲーム】
 5巡目は田村→坂本→ジャーン→中村→寺川→野澤ときた。残り2試合は臼井とアジエルだろうが、どっちが先かなあ? シチュエーション次第だろう。

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コメント

いやぁ勝ちましたねぇ。
2点取ってから追い付かれるのも、ベルマーレらしいというか…。
うちはいつもスカパー観戦ですがゴールの瞬間、大声で「よし!」と言ったら一歳の子供がビクッとして離れていきました。次の日は当然二日酔いで、うちでは逆に妻に「まだ昇格決まってないんだから…。」と言われる始末でした。
また、こういうビッグゲームの後にコロっと2連敗も十分あり得るなぁと、不安で仕方ありません。気を抜かず残り2試合走り続けてくれ〜。

ボス、おめでとうございます。
ワタクシは結果を知るや否や、昇格に向けての補強など考え始めておりましたが……。
試合、見たかったなあ。

>わっきーさん
こういうビッグゲームの後にコロっと……
ああああああああ、考えたくない。そういう光景は、何度も何度も見たからもう満腹ですよね。

>荒木さん
まだ決まっていませんが、ありがとうございます。
私も密かに補強については考えていますが、誰が獲れますかねえ。何人か考えている選手もいるのですが、予算が。

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高スポ執筆者

  • 荒木又三郎
    高スポ創刊者にして主筆。ACミランを愛する後天性フランス人。高スポ編集雑記に本音をぶちまける。
  • 三鷹牛蔵
    高スポの陰の支配者。湘南ベルマーレを愛する先天性ジャパニーズ。

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