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2010年1月12日 (火)

2009年・湘南ベルマーレのセットプレー(守備編)

 これ以上は望み得ないほど見事だった。シーズン後のテレビドキュメンタリーなどで、昇格の要因としてセットプレーに対する守備が取り上げられたのは、数字上の向上が明確だから当然だろう。

 まず、湘南ベルマーレのセットプレイを起点にした失点についてまとめると、
  2000年 FK6 CK5 合計11(90分当たり0.27点)
  2001年 FK9 CK4 合計13(90分当たり0.28点)
  2002年 FK4 CK5 合計9(1試合平均0.20点)
  2003年 FK7 CK5 合計12(1試合平均0.27点)
  2004年 FK9 CK8 合計17(1試合平均0.39点)
  2005年 FK7 CK7 合計14(1試合平均0.32点)
  2006年 FK20 CK4 合計24(1試合平均0.50点)
  2007年 FK11 CK4 合計15(1試合平均0.31点)
  2008年 FK10 CK5 合計15(1試合平均0.36点)
  2009年 FK1 CK6 合計7(1試合平均0.14点)
という数字。2009年はパラシオスが弾きまくった2002年よりも優れた数字であり、激賞に値することは間違いない。特にフリーキックからの失点が1というのは超絶的。

 次に、セットプレイから得点に結びつけられた確率を見ることにする。手元にある資料でその近似値を得るために、次のような計算をした。
「セットプレイを起点にした失点÷(CK+直接FK+間接FK-オフサイド奪取数)」
 オフサイドで得た間接フリーキック以外のセットプレイのうち、ゴールにつながった率を出すという意図だ。仮に「純粋セットプレイからの失点率」とでもしておく。すると、
  2000年 1.26%
  2001年 1.15%
  2002年 0.85%
  2003年 1.18%
  2004年 1.72%
  2005年 1.47%
  2006年 2.34%
  2007年 1.62%
  2008年 1.79%
  2009年 0.70%
という数字だ。これについても2002年を上回り、過去10年で最も優れた結果を出している。ただし、上記のデータは「FKを与えた位置」について考慮していないので単純比較はできない。
 その点を考慮して、コーナーキックに限定して同様の数字(与CKのうち失点に繋がった確率)を出してみると、
  2000年 2.31%
  2001年 1.68%
  2002年 2.01%
  2003年 2.05%
  2004年 3.28%
  2005年 2.72%
  2006年 1.88%
  2007年 1.68%
  2008年 2.36%
  2009年 1.94%
となっていて、際立って良い数字ということはない。ということはFK守備の充実が大きかったのだろう。

 相手FKに対する守備についてはシーズン中にも少し考察したのだが、改めて数値をまとめてみる。
「FKを起点にした失点÷(直接FK+間接FK-オフサイド奪取数)」
をまとめると、
  2000年 0.91%(90分当たり0.14点)
  2001年 1.01%(90分当たり0.20点)
  2002年 0.50%(1試合平均0.09点)
  2003年 0.91%(1試合平均0.16点)
  2004年 1.21%(1試合平均0.20点)
  2005年 1.01%(1試合平均0.16点)
  2006年 2.46%(1試合平均0.42点)
  2007年 1.60%(1試合平均0.23点)
  2008年 1.60%(1試合平均0.24点)
  2009年 0.14%(1試合平均0.02点)
であり、確かに素晴らしい。

 ところで、湘南ベルマーレの総失点に占めるセットプレーの割合を見ると、
  2000年 15.5%(90分当たり平均失点1.71)
  2001年 21.3%(90分当たり平均失点1.34)
  2002年 20.9%(1試合平均失点0.98)
  2003年 22.6%(1試合平均失点1.20)
  2004年 26.6%(1試合平均失点1.45)
  2005年 23.7%(1試合平均失点1.34)
  2006年 27.6%(1試合平均失点1.81)
  2007年 27.3%(1試合平均失点1.15)
  2008年 31.3%(1試合平均失点1.14)
  2009年 13.5%(1試合平均失点1.02)
となっている。
 昨年の記事では、これについて「1試合当たりの平均失点は上下動しているのに、失点に占めるセットプレーの割合は上昇傾向といえよう。J2の各チームに優秀なプレイスキッカーが増えている証左なのだろうか? なんだか不思議な数字だ」と述べたのだが、テレビドキュメンタリーによると、反町はこの数値を重く見ていたらしい。2008年の数値が高すぎるとして円グラフを作ったりして選手に訴えていたという。
 正確には、反町が取り上げていたのはPKによる失点(2008年は3点)も含んだ数値18÷48=37.5%だった。「余計なファウルを減らす」ことを選手に要求するためには、こちらの数値を出すのが妥当だろう。

 しかし、話はそう簡単ではない。
 2009年の湘南について見ると、確かに「警告」や「退場」は減っている。しかしながら「反則」は減っていない。2008年には1試合平均17.10だったが2009年は17.16であり、微増である。Jリーグ全体の傾向として反則を吹かなくなっている(スペシャルレフリーを通じてリーグの意向が伝わりやすいJ1では一貫して減少していることから明らか)なかにあって、わずかとはいえ増えている。

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 ここでいう「反則」と「相手に与えたFKの数」は、ほぼ同じ数値になっている。確認していないが、PKを与えたファウルや、試合が止まっている時の反則(審判への異議とか?)、ピッチ外での反則(ベンチの反則とか?)といったものが差になっているのだろう。数値的にわずかなのでここでは無視する。
 数値的に大きいのはオフサイドによって相手に間接フリーキックを与えた回数。相手陣内で間接フリーキックを与えても大して脅威ではないし、反町的には「チャレンジしての失敗は咎めない」ということだろうから、オフサイドの数は除外してみる。上図のグリーンの線が「相手に与えたFKの数からオフサイドに引っかかった回数を引いた数の1試合平均」の推移だ。これを見ると、ようやく「脅威になる与FK」をリーグ平均以上のペースで減らすことが出来ていたと推測できる。

 2009年の湘南がセットプレーからの失点を減らすためにファウルを減らしたことについて苦心して述べてきたが、実際には私は「ファウルを減らしてセットプレーの失点を減らした」ことをあまり信じていない。話半分に考えている。これはたぶん反町も選手達も同じだろう。もちろん、余計なファウルを減らすに越したことはないし、その心構えは必要だ。しかし、減らすべきは失点であって、ファウルではない。
 セットプレーからの失点を減らした最大の要因はファウルを減らしたことではなく、スカウティングの成果だろう。このことはシーズン中にも仮説として提示したが、上記のように数字をいじくりながら、ますますその観は強まった。

 で、シーズンが終わった後に某コーチに話を聞く機会があった。
 やはり相当にスカウティングをしたらしい。FKからの失点が1点しかなかったことはもちろん承知していて「あれは神のコースだったからしかたないですね」。富山の姜の直接FKのことだが、姜についてはスカウティングが薄かったのではないかと水を向けると、それには直接には答えてもらえなかったが「選手達は○○○○や□□□□から点を取られる気はしていなかったと思います」という自賛の言葉が返ってきた。ここでは伏せるが、○○○○や□□□□はもちろん実名だ。
 それ以上に印象的だったのは「サッカーは11対11の勝負だけど、フリーキックだけは個人プレーだから、それで失点するのは悔しい。だから防ぎたい」という言葉。正確にはこういう言い回しではなかったけど、まあ大筋こういう内容。これは非常に納得しやすい。「失点に占めるセットプレーの割合が高い」なんていう総失点を無視した円グラフなんかよりもずっと、選手を刺激すると思う。
 たぶん、反町がパソコンで作った円グラフはテレビ用のハッタリで、実際にはこういう「選手の負けん気を喚起する言葉」を用いて鼓舞していたのだろう。根拠のない勝手な推測だけど。

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コメント

グレートですね。しかも、取材付き?。

ドキュメンタリー見ていないし、今シーズンのベルマーレもほとんど知りませんが、「反則で相手を止めるのを意図的に減らすこと」は、カウンターの機会を増やすのにも有効でしょう。思うにモウリーニョなどはそういうことを狙っていて、笛の鳴りにくいイングランドで多大な成果を収めた背景には、それがあったとも思っております。彼のチームは概ね引きすぎるわけですが、それでいて効果的なカウンターを頻繁に繰り出せるのは、そういうことではないか、と。

 バスケでいうところの「ターンオーバー」と考えれば、カウンター=速攻機会の増加に直結するというのはなるほど論理的ですね。
 ただ、実は「反則で相手を止めるのを意図的に減らす」ことについては深入りを避けたい気分もあります。
 私はプロフェッショナルファウルを肯定する立場なので(バスケ野郎なら当然)、伊東輝悦のように「ファウルで止めるなんて馬鹿らしい」とうそぶかれると「それは力関係が上ならそうかもしれないけどさあ」と反感を覚えてしまう。
 その意味では、湘南が力をつけたからこそファウルに頼らずに守れるようになった、とは言えるのかもしれないのですが。

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高スポ執筆者

  • 荒木又三郎
    高スポ創刊者にして主筆。ACミランを愛する後天性フランス人。高スポ編集雑記に本音をぶちまける。
  • 三鷹牛蔵
    高スポの陰の支配者。湘南ベルマーレを愛する先天性ジャパニーズ。

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