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2010年1月 4日 (月)

ガンバの勝負強さが示す格の違い――天皇杯決勝

 チームとしての格の差は明らかだった。優勝したガンバ大阪は、中盤でパスをつないでゲームをつくり、ときに鮮やかなカウンターを決め、相手のミスに依存しない試合運びをみせたといえる。これに対して名古屋グランパスは、パスコースを奪われてボールを失うシーンが多く、攻撃面では長身FWのケネディに依存せざるを得なかった。結局、シュート数ではグランパスがガンバを上回った(15対12)ものの、シュートに至る過程を一つひとつ思い起こしていけば、実力の差は歴然だったといえよう。

 ゲーム序盤に主導権を握ったのは、ガンバだった。3日前の準決勝で120分を戦ったグランパスに比べ、コンディション面でアドバンテージがあったのは確かだろう。しかし、コンディションの差以上に、チームとしての完成度の差を感じたのもまた事実である。
 前半6分の先制点は、久しぶりのタイトルを狙うグランパスの出足を挫くに十分だった。左サイドから始まった攻撃は、遠藤→二川→山﨑とショートパスをつなぎ、ルーカスがダイレクトで決めたもの。鮮やかな連携からのゴールは、VTRで振り返ってみても、グランパス側のミスを指摘するのは困難だ。両チームの選手に、力の差を再認識させるゴールだったと言える。
 ガンバの強みは、チーム全体が有機的に動ける点で、攻撃においてはパスコースを確保するため、守備においては相手のパスコースを切るため、労を惜しまずに選手たちが働く。その結果、グランパスはボールを追う時間が増えるし、何とか奪ったところで速やかにパスコースを切られてしまうため、ろくに前線へボールを運べない。せっかくキープしても縦パスが出せず、いつの間にかボール保持者がサイドで2、3人に囲まれるシーンがめだった。率直に言って、前半は老練なガンバの中盤が、教科書どおりのプレーでグランパスを手玉に取っていたといえよう。
 グランパスにしてみれば、何度かケネディのポストプレーが決まるシーンはあったのだが、タイミングよく彼の周囲に寄ってくる選手がおらず、せっかくの強みを生かせなかった。グランパスのアタッカーたちはサイドに開きすぎ、ボランチの選手には恐らくオーバーラップできる精神的な余裕がなかったというところだろう。
 一方、ガンバ側からみれば、再三のチャンスにもかかわらず、前半の段階でトドメをさせなかったことが、反省材料といえる。パスは回せていたし、ケネディへの不用意なクロスを奪って速攻を仕掛けるシーンも多かった。何より、自陣深くで得たボールをそのまま前線に放り込む展開でも、ルーカスはことごとくキープしていた。完璧にゲームを支配していた序盤に2点目を上げていれば、試合はあっけなく決まっていたことだろう。個人的には、このへんの甘さがアントラーズの天下を許している最大のポイントとも思うのだが・・・。

 しかし、誰の目にもガンバの優勢が明らかとなっていたなか、転機はあっけなく訪れる。
 前半40分、すでにケネディへの苦し紛れのロングボール以外に手がなくなっていたグランパスは、あっけなく同点弾を決めた。始まりはゴールから遠い位置でのFKで、このボールにケネディが競り勝ち、右サイドにいた玉田へとボールを落とす。受けた玉田は一瞬、縦への突破を試みるが、慌てて飛んで来た二川にあっさりと詰め寄られて、中へと方向転換する。そのまま右45度からループ気味にゴール正面へボールを送り込んだのは、苦し紛れ以外の何ものでもなかったろう。しかし、この無為無策のボールにケネディはまたも競り勝ち、中村のヘディングゴールを導いた。
 ガンバにしてみれば、ケネディ一人に奪われたゴールだった。守備を崩された覚えはなく、ただただ彼の高さと強さにしてやられたに過ぎない。結果論ではあるが、二川はあの時、あえて玉田に縦へ勝負させたほうが賢明だったろう。本来、縦を切るのは正しい判断だが、玉田は左利きである。わざと縦へ行かせ、無理な体勢から右足でクロスを放り込ませたほうが無難だったかもしれない。とはいえ、本当であれば安田が玉田をカバーしているべきであったろうし、二川が慌てたのも無理はないと思うが・・・。

 しかし、こんなゴールでも試合の流れが変わってしまうのだから、サッカーは恐ろしい。ハーフタイムまでの残り数分間、グランパスは人が変わったように攻勢に転じ、ガンバは守備に奔走した。最後の最後でガンバがカウンターを繰り出したが、焦りからプレーの精度を欠いていたのは否めない。ハーフタイムのホイッスルを聞いて喜んだのは、何とか追いついたグランパス側ではなく、前半のほとんどの時間帯を支配していたはずのガンバ側だったろう。

 ところが、後半に入ってもグランパスの勢いは止まらなかった。序盤から選手の動きはよくなり、攻撃にも俄然、思い切りが感じられるようになる。試合は全体的にテンポアップし、平均年齢の高いガンバの中盤には酷な展開へ移行。グランパスが決定的なチャンスを作り出していたとは言い難いが、押し込まれていたのは間違いなくガンバのほうだった(もっとも、後半15分の遠藤のシュートは、明らかにハンドで防がれたものだったが・・・)。
 もしグランパスに勝利の可能性があったとすれば、この時間帯に逆転し、守りきることしかなかったろう。後半の半ばまでは2点目のゴールが生まれる可能性は十分にあったし、一方で、なりふり構わぬ攻撃をいつまでも続けられる保障はなかったのだから。
 昨年の天皇杯の記事でも書いたが、「ガンバは、ボールポゼッションを優先する攻撃的なチームでありながら、守備に回っても反転攻勢を期して耐え忍ぶことができる技術と経験を持つ」。いわばグランパスの攻勢は「手負いのトラの悪あがき」であり、ガンバのベテラン勢は虎視眈々とカウンターを狙っていた。32分の遠藤の勝ち越しゴールは必然であり、その後の2得点も同様である。正念場をモノにできる勝負強さこそ、グランパスとの格の違いだったといえよう。
 例えば勝ち越しゴールは、グランパスが守備を薄くして攻めかかっていたのを見越した遠藤が、ゴール正面で悠然と相手を交わしてみせたものだ。また3点目では、自陣で奪ったボールを三都主相手に明神がキープしきり、前へとつないで二川のゴールを生んでいる。ロスタイムの4点目に至っては、すでにサイドでのボールキープを優先して逃げ切りを図っていたなか、加地が中央でフリーになった遠藤を見つけ、すかさずパスしたことで駄目を押した。いずれのゴールも、ベテラン勢の好判断がことごとく結果に結びついたといえるだろう。

 これに対してグランパスは、正念場で働くべきだろう選手が、ことごとく期待を裏切った。例えば、後半28分に玉田がみせた下手すぎるシミュレーションは、チームの勢いに水を差すのに十分なものだったといえる。接触してもいないのにペナルティエリア内で倒れ、あまつさえ、にやつきながら立ち上がるなど、プロ選手としての意識を疑う。もちろん、ワタクシはフェアプレー云々について言っているのではなく、あの状況で、あのような行為をみせられて、チームメートが奮い立つだろうか?ということ。高卒ルーキーがやるならばともかく、チームの支柱であるべき選手が「審判をだましてでも勝とう」とすることは、味方を信頼していないことを示したに等しい。あくまでファウルを主張するのであればまだ分かるが、あそこで笑うのはつまり、「おまえら頼りないから、わざと倒れてみたけど駄目だったよ、ははは」と語っているのと同じである。
 また、追いつくための切り札として投入された三都主のプレーもひどかった。攻撃にはほとんど絡めず、ガンバに3点目を献上することになったのだから始末が悪い。後半40分過ぎ、1点差で負けているというのに、ピッチ中央のライン際で小兵・明神にキープを許すなど、あり得ないプレーだ。タッチに逃げても良かったし、ファウルでつぶしても良かったはずで、むしろそれができないのなら、明神へのプレスを他の選手に任せたほうがまだマシだった。試合全体を見渡せないセンスのなさは、年をとってもまったく変わらない。
 彼ら二人の低調なプレーぶりは、ポストプレーをし損なうたびにボールを追い回していたケネディなどと比べると、プロ意識の低さを批判されてしかるべきものだったと思う。

 はっきり言えば、玉田のような選手にレギュラーポジションを与える限り、グランパスがガンバに比肩する日は来ないと思う。チームの核となる選手を安易に買って来る戦略は、選手のプロ意識が低いJリーグでは通用しない、と個人的には考える。
 そのことは、ガンバの布陣をみれば明らかだろう。二川、橋本、安田などは生え抜きであり、遠藤や山口智にしても、期待されながら今ひとつ埋もれていたときに獲得した選手である。外様である加地や明神にしたところで、控えめな人柄とひたむきなプレーぶりを考慮しての買い物であることは、想像に難くない。しかも、二人はともに関西(兵庫県)出身者であり、単なる助っ人としての獲得でなかったことは本人たちも十二分に自覚しているはずだ。
 その点、グランパスとレッズは今や堂々たる反面教師となっている気がしてならない。グランパスは今回、皮肉にもそのレッズから闘莉王を獲得したが、単純な戦略アップにつながるかどうかは疑問である。W杯イヤーにケガがちの代表選手を買うなど、本末転倒だろう。短期的な結果を追い求める現状のよう戦略をとる限り、アントラーズ、ガンバ、フロンターレあたりの上位陣との格の差は永遠に縮まらないと思うのだが。

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高スポ執筆者

  • 荒木又三郎
    高スポ創刊者にして主筆。ACミランを愛する後天性フランス人。高スポ編集雑記に本音をぶちまける。
  • 三鷹牛蔵
    高スポの陰の支配者。湘南ベルマーレを愛する先天性ジャパニーズ。

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