東芝地味バスケの崩壊
地味な対戦カードだ。名の通った選手もいない、下位の両チームだ。フィギュアスケートの金メダリストが決まった金曜日の夜にこの試合をチョイスするとは、マニアックすぎるかもしれない。だって、試合会場は秦野だぜ。
(2010年2月26日 東芝ブレイブサンダース65―85パナソニックトライアンズ 秦野市総合体育館)
上位4チームがプレーオフに進出するJBL。10試合を残して勝率で4位と並ぶ5位のパナソニックと、2勝差で6位の東芝による「サバイバルマッチ」だ。
ただ、観戦するに当たって、そういう勝敗結果だけに注目するやり方だと漫然としてしまうことが多い。まして東芝は過去10年にわたって日本を代表する「地味キング」(私認定)だ。パナソニックにしても、現在は三菱電器、東芝と並ぶ「地味トリオ」(私認定)の一角だ。
なので注目選手を核にしつつゲームに入っていこうとするわけだが、いかんせん予習不足。とりあえず東芝は代表選手でもある石崎巧に注目し、パナソニックは青野文彦、を避けて永山誠を軸にした。
で、このゲームで最も目立ったのはパナソニックのPG木下博之だった。フィールドゴール9/13(3ポイント3/5)で25得点の大活躍。後でスタッツを見たら「いつもどおり」の活躍のようだ。シュート数もチームで最も多いのだが、そのことが不快じゃない。PGでシュートが多い選手は、得てして「持ちすぎ」だったり、イケイケドンドンでフロントコートに入るなりシュートを打ってしまったりするのだが、そういうプレーはほとんどなかった。いったんパスを出し、ポストにボールが入るや良いポジションに移動して、パスアウト→シュート、と持っていく。東芝の選手もシュートチェックに行っているのだが、ものともしないで決めていた。
永山誠も、同じようにアウトサイドで「なぜか」フリーになっているシーンが多く、要所要所でシュートを決めていた。
本当は「なぜか」じゃなくて、スクリーンなどを使ってフリーの選手を作っているのだが、東芝からすると、やられすぎ。こういうプレーは、私のイメージでは、むしろ東芝のお家芸だったはずなのだが。
認めたくないのだが(苦笑)、パナソニックのC青野文彦が効いていた。
高さと横幅で圧倒的なため、ポストの青野のところにボールが収まる。パスアウトも、ゴール下に飛び込んだ味方選手へのパスも思うように通っていた。試合序盤はローポストでの1対1もいくつか決めていた。これでは東芝は劣勢になるのも無理はない。
青野については、今までにも再三書いてきたが、私は買っていない。ただ、このゲームを見ると、ちょっと気の毒にも思えてきた。身体のサイズだけで「それなり」に通用し、「それなり」に活躍できてしまうのだ。普段のリーグ戦がその状態なのに、国際試合で通用しないからといっていきなり批判の対象になってしまうのだから。ま、そうはいっても私の基本姿勢は変わらないと思う。あの体躯をもって「それなり」しか活躍できない選手だというところに問題があると思っている。
この日も、相手選手のファウル気味(というか、ゴール下のあのプレーは、笛が吹かれなかったが実際ファウルだった)のプレーに対して「やり返す」ようなプレーをしてファウルトラブルに陥った。期待しないで見ていたはずなのにガッカリしてしまった。
東芝については「地味だけど堅実」というのが私の評価だったのだが、今やただの地味なチームになったように思えた。石崎巧がPGを務めているのだが、このゲームから判断すると、彼はPGに向いていないと思う。前半に目立ったのはシュートセレクトの悪さだ。パス回しもそこそこにシュートを打ってしまう場面が私の嘆きを誘った。このゲームに関してはインサイドでの劣勢が原因なのかもしれない(東芝のパスは3ポイントラインの辺りでしか回らなかった)が、ゲームの組み立てを意識する必要があるように思えた。
パナソニックの青野やジェラルド・ハニーカットの横幅が効いていて劣勢を強いられた東芝のインサイドだが、そういいつつも両外国人、コーリー・バイオレットとタイラー・ニュートンは頑張っていた。特にディフェンスとリバウンド。速攻にも走っていた。ただ、不器用だけど身体を張って頑張るというキャラクターが丸かぶりで、2人の交代は単にフレッシュな選手の投入ということにしかならず、戦術的な幅をもたらさない。
ならば日本人選手がよほど頑張るのかと思いきや、そうでもない。何人かの選手からは「シュートを打つのは自分の仕事じゃない」という雰囲気を感じてしまった。
試合は序盤から終始パナソニックがリードした状態で推移したのだが、見せ場がなかったわけじゃない。
後半になると東芝はフロントコートからのプレスを敢行し、ペースを奪った。いくつかの速攻も決めてゲームを盛り上げた。「早撃ち万歳」なゲームプランになり、石崎の能力の高さが存分に生きるゲーム展開だった。
パナソニックはファウルトラブルの青野をベンチに置き、外国人もエイドリアン・カスタスをコートに出して、「スモールラインナップ」で臨んでいたが、東芝のプレスをかわしきれない。ただ、ゲームの流れを失いつつも木下や永山が難しいシュートを決めて点差を維持する。そして青野、ハニーカットの横幅鈍足系プレーヤー2人を同時起用するという驚きの采配。ゲームを止めてしまおうという意図はわかるが、相手の速攻への対処という点では勇気の要る選択かと思ったのだが、東芝にもミスが増えて、あっさりと奏功。決着がついた。
1つの負け試合だけで判断するのは早計かもしれないが、東芝は危機的だ。曲がりなりにもプレーオフ争いをしているチームとは思えない。と思ったら、最近11試合で10敗目なのか。それまでの22試合で8敗なのだから、大変なブレーキだ。節政も折腹も去ったことで、チームの悪い流れを変えられなくなったのか?
それにしても金曜日の夜に秦野で試合を開催するというから、近隣工場に動員でもかけているのかと思ったら、客席は地元招待券で集まったと思しき中高生だらけだった。観客数は発表されないみたいだが500には達していないだろう。そのうち定価でチケットを買ったのは何人いたのだろう? 1階コートサイド席はともかく、2階スタンド席は悲しい数字になりそうだ。というわけで会場でのアンケートには「チケット→高い」と答えておいた。日本最高峰のリーグ戦なのだから2階スタンド席2000円は妥当かとは思うのだけど、なんかちょっとねえ。
でも、東芝は金には困っていないように見える。ユニフォームやジャージに各選手の名前が付けられているから。使い回しのことを考えてユニフォームにすら選手名を付けていないチーム(FC湘南)を見慣れているからねえ。私は。
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