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2010年3月27日 (土)

解任論すら盛り上がらない岡田監督の信念とは

 南アフリカW杯まで、残り2カ月を切った。ベスト4を目標に掲げた岡田ジャパンはしかし、まったく注目を浴びない存在になってしまっている。これまで、“代表”と呼ぶのがためらわれるようなパフォーマンスを繰り返してきたのは確かだが、一方で最新のバーレーン戦では会心の勝利を収めたはずなのに……。もはや、メディアが盛り上げようとした解任論にすら火がつかない有り様は、指揮官が官僚さながらの能面で“信念の人”を演じるからだけではないだろう。それはたぶん、彼のめざす代表チームの完成形が、必ずしも胸を張れるようなものではないからに違いない。

 不甲斐ない攻撃が槍玉に挙がるなか、岡田ジャパンは相も変わらずワンタッチ、ツータッチでボールを回す練習を続けていたらしい。しかし、ポゼッションを優先して無難にボールを回す戦術は、守備から攻撃へ移行する速度を著しく遅らせる。確かに、自陣でボールを失うリスクは低減するし、結果として攻撃に多くの人数をかけられるのかもしれないが、それゆえに却って積極的な仕掛けが求められるのはいうまでもない。つまり、守備の態勢を固めた相手に対し、正々堂々と崩しにかかるだけの実力が強く求められる。
 多くの関係者が指摘するように、だからこそ前線の選手は1対1の場面で勝負に行くべきだし、ゴールを奪うためにはそうせざるを得なくなる。敵陣に敵味方合わせて20人近くが密集するなか、パスワークのみで数的優位の状況をつくるのは難しい。それこそ、「メッシやイニエスタにドリブルを禁じたバルセロナ」でも思い浮かべてみればよいだろう。
 仮に1対1の勝負を重視しないのであれば、少なくともスペースを生み出す手立てが必要だろう。そうでなければ、密集したゴール前でパサーが持ち味を発揮するのは難しい。ところが、遠藤や中村憲剛を重用しているにもかかわらず、岡田ジャパンにはそうした狙いがほとんどみられない。敵を崩しきれない攻撃を延々と続けるだけだ。見ている者にとっては、面白いものではまったくない。
 一方、こうした「攻めきれない攻撃」は、守備面にも大きなリスクをもたらす。敵陣深くでボールを失う機会が増えるため、そのたびに広大無辺な自陣をさらすことにつながる。率直にいって、キャプテン中澤にスピード面の衰えを感じる今、チームの抱える不安は非常に大きい。そもそも、両サイドバックには守備時のポジショニングに難があるし、闘莉王には守備の統括者としての意識がないのだから。

 ただ、岡田監督はこうした問題を「わかっていない」のではないと思う。彼の目標は、W杯で勝ち上がっていくことであって、誰もが認める強いチームをつくることではない。今さら言うまでもないが、4年に1度しか開かれない世界一の大会では、取っても取られても1点ないしは2点という試合が続く。弱者は予選リーグに持てる力のすべてを注いでくるため、実力で上回るチームが勝ち切れないケースは頻繁に起こる。正々堂々たる勝負に固執するオランダやスペインが勝てないのは、まさにそれゆえである。
 結局、岡田監督の考える最も危険な場面は、「自陣で不用意にボールを奪われること」なのだろう。安全だが緩慢な攻守の切り替えは、その面でまったく正しい選択といえる。そして何よりも、オランダ戦でみせた果敢すぎるプレッシングサッカーを実現するためには、チームには「休息」が必要ということなのではないか。例えば王者バルセロナであれば、敵陣でパスを回しながらその時間を確保できるのだが、日本にはそれだけの力はない。だからこそ岡ちゃんは、カウンターアタックの好機を最大限に生かすよりも、休息を優先しているように思う。むろん、彼が考える最大の攻撃パターンはセットプレーであり、これに次ぐのがプレッシングからのショートカウンターだ。ただし、その意に反して選手は良い位置でファウルをもらえていないし、プレッシングを試すほどに果敢な対戦相手にも恵まれていないということなのだろう。好意的に考えれば。

 今から思えば、岡ちゃんがビエルサ監督率いるチリ代表との再戦を望んだ背景にも、その点が少なからず関係していたのではないだろうか。周知のようにビエルサはプレッシングサッカーの信奉者であり、チリ代表もご多分に漏れず中盤からのボール狩りを実践している。つまり岡ちゃんにとっては、彼らの激しいプレッシングにあってもなお、緩慢な攻守の切替えを実現し、相手を上回るプレッシングを披露できるかが、ポイントだったのだろう。結局、及第点を取るには至らなかったのだろうが。
 そして、この仮説を前提とするなら、バーレーン戦の勝利もまた、さしたる価値を持たない。このチームは典型的な中東勢とは異なり、カウンター狙い一本やりではないからだ。中村、本田、松井の同時起用がそれなりに成功したといえようが、他の相手にどこまで通用するかは未知数である。彼らの個人能力がW杯での相手国に通用する保障はどこにもないし、そのときにどうするかの算段はまったくついていない。

 この段階で解任話が出るのにはいささか閉口したが(サッカー協会には、残り2カ月で監督を受けて結果を出せる人材を連れて来れるほどのコネクションはないからだ)、かといって岡ちゃんと心中するのもどうかと思う。彼のプランがここで述べてきたような仮説どおりなのだとしたら、その戦術は決してワタクシの好みではないし、チームがプランに応じた成長を遂げて来たとも思われない。世間の注目度が上がらないのも、誰もが似たような感じを抱いているからだろう。
 だいたい、本田についての報道などをみていると、ロシアリーグあたりで少々活躍したからといって騒ぎすぎではなかろうかと思う。仮に本田が相応の実力を持っていたとしても、スター選手が実力どおりの活躍ができるとは限らないのがW杯である。メディアの意図的な盛り上げにも世間が動じないのは、3大会連続の出場により、ファンでなくともそういうことが分かってしまったのかもしれない。
 だって家電量販店、「W杯を大画面テレビで!」とか言ってないし。

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  • 荒木又三郎
    高スポ創刊者にして主筆。ACミランを愛する後天性フランス人。高スポ編集雑記に本音をぶちまける。
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