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2010年4月14日 (水)

川村卓也の勝負強さでひっくり返った劇的決勝

 あとはアイシンがゲームを閉じればよいだけだった。それを阻み、逆転勝利をもたらしたのは川村卓也の恐るべき勝負強さだった。こんな劇的なゲームでシーズンが終わるとは! こういうゲームを観戦できた幸運を素直に喜びたいね!
(2010年4日12日 JBLプレーオフファイナル第3戦 リンク栃木ブレックス71―63アイシンシーホース 国立競技場代々木第二体育館)

 1分20秒ほどを残してアイシンの6点リード。あとはどう時間を使うかが焦点だったはずだが、ここから川村卓也のショータイムだった。まず速攻に走りファウルを受けながらレイアップを決め、バスケットカウント1スローも沈める。これで3点差。
 しかしこの後、アイシンの柏木真介と川村がお互いに3ポイントを外して、この時点で残り16秒。アイシンボールになったことで栃木はファウルゲームを始めるが、1つ目の川村のファウルではフリースローにならず(チームファウルが少なかった)、スローイン後に田臥勇太がファウルをすることでようやく時間が止まるフリースローになった。このフリースローを柏木が2本とも決め、残り14秒で5点差。万事休すかと思われた。
 栃木のタイムアウトが明けた後、スローインからリターンパスを受けた川村が相手選手の頭越しに3ポイントを決める。2点差。
 この後のアイシンボールで田臥が桜木ジェイアールにファウル。桜木はフリースロー2本中1本を外す。残り7秒で3点差。
 再び栃木のタイムアウトの後、スローインを伊藤俊亮に入れ、リターンパスを受けた川村はコート中央にドリブルで進み、相手の2選手が伸ばした手を逃れるべく右後方に流れながらの3ポイントを沈める。ここでタイムアップ。延長へ。

 延長はもうアイシンの集中が切れていたので省略するが、とにかく敗色濃厚の試合を延長に持ち込んだ川村の2本の3ポイントシュートは、どちらか片方を決めるだけでも賞賛に値するのだが、それを2本とも決めてしまうのだから恐れ入る。
 この日の主役の座は川村に譲ったものの、プレーオフMVPの田臥はネームバリューにふさわしいプレーを見せた。私からすれば、やっと彼を認める機会を得たということになる(偉そうだが)。彼の速攻は小気味良くて好感が持てる。マイボールになった瞬間に、ボールを受けることを考えずに飛び出していくのは、相手にとって脅威だ(五十嵐圭もこうすればいいんだと思う。今シーズンは見ていないけど)。

 この3連戦は一貫して「栃木の2―3ゾーン対アイシンの攻撃」が焦点だった。
 栃木からすれば、サイズのなさという自らの弱点と、田臥・川村という武器を考えたうえでの作戦だろう。ローポストで桜木ジェイアールが1対1を仕掛けてくると劣勢は免れない。そのため「3」の両サイドを広く位置取りさせて、桜木がパスを受ける位置をフリースローレーンから離れたところに押し出すという狙いだろう。すると相手の45度のシュートに対して守備が薄くなるのだが、そこは田臥・川村の能力でカバーするということだろう。はっきりいってマンツーマンでは守れないことを白状しているわけで、弱者の戦術であることは間違いない。
 これに対してアイシンは、ハイポストの竹内公輔にボールを入れることから打開しようとしていた。これには田臥・川村が挟み込むことで対処しようとしていた。「3」の中央の選手が前に出て応対するとゴール下に桜木などが飛び込んでくるので、それは避けたかったのだろう。
 ただアイシンはあまり徹底できなかった。パスを回して左右に振ろうとすることのほうが多かったが、そのことでシュートチャンスを作れなかった。むしろ栃木の思う壺だったのだろう。それならいっそジョシュ・グロスのドライブに活路を見出してもよかったと思う。あれは効果的だったのに、ダンクを失敗してから消極的になったのだろうか? 終盤にはあまり見られなかった。

 弱者の戦術だろうと、選手層がはっきり薄かろうと、栃木は持てる力を十二分に発揮したわけで、その価値は揺るがない。
 とはいえ、やはりアイシンが王者らしくなかった。相手の同じ戦術に3日連続でハマってしまったこと。そして、些細なことだが、第4ピリオド開始時のディフェンスに集中を欠いていた場面が非常に気になった。
 それでもアイシンはリードを維持していたし、オフェンスリバウンドを連続奪取してセカンドチャンス、サードチャンスを得たあたりは貫禄だった。この日の内容がイマイチであろうと、とりあえず逃げ切って第4戦に立て直せばよかっただけだ。それなのにリードを守れなかったのだが、選手起用にも疑問がある。川村の2本の3ポイントの時間帯、川村にマッチアップすべき網野友雄はベンチにいた。この日の網野は川村に対して厳しくディフェンスをしていたし、相手の速攻に戻ってブロックショットをするなど気迫も前面に出ていた。そしてこのチームのキャプテンだ。
 そしてコートにいるのが誰であろうと、川村に3ポイントを打たせるということ自体がチャンピオンチームらしくない。他の選手が、それがたとえ田臥でろうと、3ポイントシュートを決めても仕方ない。川村がドライブして2点シュートでもやむを得ない。とにかく相手のエースに3ポイントだけは打たせちゃいかんでしょ。

 まあアイシンに同情する点もある。栃木は先週まで地元にいたのに対してアイシンは地元愛知を離れて2週間目の東京だ。そしてリーグは栃木の優勝を望んでいた。審判の笛は3試合を通じてアイシンに辛かった。穿ちすぎかもしれないが、桜木のフリースロー1本目が決まったところで審判が時間を止めて床を拭かせたりしたのもどうかと思った。
 あと、最後のタイムアウトの際、スピーカーから「ゴー ブレックス!」と連呼する声が鳴り響いていた。セントラル開催じゃなかったっけ? 栃木のタイムアウトだったからきっとルール上は問題ないのだろうが「掟破り」な印象だ。
 
 ウネウネ書いてきたが、私としては伊藤俊亮が優勝できてよかった。以前から私は彼を買っているし、この試合でも渋く存在感があった。スタッツにはまったく表れていないが、勝負どころの時間帯には彼抜きではお話にならなかった。栃木に移籍してからは東芝時代とは違って攻撃面でも力を発揮することが増えているし、喜ばしい。
 栃木の優勝は日本バスケのためには良い結果だった。栃木はバックコートの派手な日本人スターが大暴れするし、速攻も多い。今までバスケに縁遠かった人を呼び込むのに最適だ。
 ただし、川村がいつまで日本にいるかなあ。石崎巧がドイツに行くらしいが、川村こそ海外に行くべき選手の筆頭だから。古いルールで育った私には川村のダブルドリブル癖が気になるが、そんな少数派の戯言は気にしなくてよいでしょう。

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高スポ執筆者

  • 荒木又三郎
    高スポ創刊者にして主筆。ACミランを愛する後天性フランス人。高スポ編集雑記に本音をぶちまける。
  • 三鷹牛蔵
    高スポの陰の支配者。湘南ベルマーレを愛する先天性ジャパニーズ。

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