« ドメネクの心中は終わらない~フランス対メキシコ | トップページ | 主審の無能さに盗まれた勝利~アメリカ対スロベニア »

2010年6月19日 (土)

捨て身の前線がもたらした勝利~日本対カメルーン

 初戦で勝ち点3を得た価値は、大きい。これで3戦目が消化試合になることはなくなった。しかし、カメルーンの草サッカー並みの攻撃を、前線3人の渾身のプレーで凌いだ日本にとって、2戦目をいかに戦うかは大きなターニングポイントとなるかもしれない。あの戦いぶりを3度続けさせるのは無謀かつ無情であり、それでオランダに負けないという保障もどこにもない。むしろオランダがあくまでグループリーグ最強と考えるなら、デンマーク戦に備えてメンバーを入れ替えるのも一つの手だ。

 率直にいえば、勝利という結果以外に成し遂げたことは何もなかったろう。唯一の得点は「ゴール前でDF4人がクロスにさわれもしない」という珍事の結果もたらされたものであり、ましてや、カメルーンにそのようなミスを犯させるほどに日本が次々と決定機をつくっていたわけでもない。無失点で耐え抜いた守備にしたところで、両ウイングばかりか1トップにまで、汚いプレッシングと次の展開のない無意味なボールキープを強いて得た結果である。厳しいようだが、試合内容において胸を張れる要素はまったくなかったといわざるを得ない。

 日本の最大の勝因を問うならば、それはカメルーンが「草サッカーをしに集まった連中」だったことに尽きよう。ボールを持ったら行き当たりばったりで前へ運び、周囲にいる味方はパスコースを確保しようとするでもない。連携などと呼べるものは皆無で、ついさっき集まった赤の他人の一団であるかのように、彼らは無為無策の攻撃を繰り返した。ワンツーもスルーパスもなく、ボールを奪っても前線に放り込むか前へドリブルするしかない相手に対して、日本はあらん限りの必死さで応じただけだ。オシムのサッカーに夢を見た者にとって、あの姿をみせられて勝利を喜ぶことは難しい。

 阿部にアンカーを託した新しいフォーメーションは、岡ちゃんなりの開き直りなのだろう。それは、守備的MFを3人並べたというより、2人の守備的MFの後ろにスイーパーを置いたに等しい。だからこそ、両翼に配した大久保と松井はウイングというにはあまりに守備的にならざるを得ず、時として自陣深くまで下がってサイドバックと一緒に敵の選手を挟み込む。彼らがサイドにいるのは、恐らくは敵陣を駆けるためではなく、守備時にサイドでの数的優位を確保するためなのだ。その前提があればこそ、中澤と闘莉王のセンターバックコンビは、心置きなく二人がかりでカメルーンの1トップに襲いかかれる。そして本田に課された役割は、ゴールを上げること以上に、前線で体を張ることだったに違いない。その大役が相応しい人材は、FW陣にはいなかったからだ。

 確かに、前線の3人の働きは素晴らしかったと思う。とくに、ボールを持てば相手にまとわりつかれ、失ったら逆にまとわりついていく松井の姿には、胸を打たれた。本来、攻撃を担う彼らにとっては決して楽しくない役割を、3人揃って賞賛されるべき集中力をもって果たしたと思う。
 ただ、それはワタクシが望んでいる姿ではまったくないし、オシムに期待したすべての人々が求めた理想像でもなかったはずである。むろん、「結果がすべてではない」などと言うつもりはまったくなくて、この4年間の「結果」があれであることが口惜しいのだ。たとえオシムが監督を続けていても、全く同じ選手で全く同じフォーメーションをとった可能性は十二分にあるが、その戦術はもっと心躍らせるものになったはずであり、あるいはスパレッティがローマで実現したゼロトップのようだったかもしれない。少なくとも、唯一のパスコースを確保できなかった右ウイングに対し、左ウイングが怒鳴りつけるような貧相な攻撃にはならなかったと思う。皮肉をいえば、カメルーン戦の日本代表は、中盤もサイドバックも「考えて」あえて「走らなかった」。

 そうはいっても、初戦に勝利したことの意味は決して小さくない。仮にオランダの実力がその他3チームを上回っているとするなら、日本はオランダに負けてもなお、グループリーグを自力で突破する可能性を残す。
 しかし、逆に考えれば、最終戦の相手となるデンマークにとっても、日本が直接のライバルとなることがハッキリした。オランダに負けた彼らにはもはや敗北は許されないし、恐らくはカメルーンに勝っても引き分けても、日本戦での勝利が求められることとなる。つまり、グループリーグ進出を賭けてデンマークと戦う可能性は一気に高まったといえよう。
 岡ちゃんがあくまで勝負師たらんとするなら、2戦目はメンバーを入れ替えてくるかもしれない。あの戦い方を続けて3度やるのは、体力的に厳しいだろう。仮に同じような戦いができたとして、オランダを無失点で抑えられる保障はないし、何よりも一生に一度かもしれないW杯で、攻撃陣にあのようなプレーを度々強いるのはむごいと思う。というか、一度でいいから森本を先発で出してほしい。次の大会に出場する可能性のある世代にこそ、出場機会を与えてくれ。あんなサッカーで勝つくらいなら、チリのようなサッカーをして敗れるほうがずっといい。

« ドメネクの心中は終わらない~フランス対メキシコ | トップページ | 主審の無能さに盗まれた勝利~アメリカ対スロベニア »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 捨て身の前線がもたらした勝利~日本対カメルーン:

» 【W杯】さてオランダ戦 [にたろうの退屈な日々]
今日は夕方から飲みです。神戸は三宮で軽く一杯というところ。そういえば、今日は日本−オランダ戦か。日本がボロ負けするイメージしか沸かないね。日本が勝つんじゃね?みたいなマスコミのヒートアップぶりには呆気にとられるばかり。この国には冷静な分析できるマスコミはいないの?日本は徹底的に引いても守備陣はボコボコに切り裂かれそうだし・・・また闘がお得意のOGしそうだな。闘をFWにして高さのある岩政をCBにしたほうが安心できるかもしれん。日本はカウンター攻撃もできないチームだし。どうしよ...... [続きを読む]

« ドメネクの心中は終わらない~フランス対メキシコ | トップページ | 主審の無能さに盗まれた勝利~アメリカ対スロベニア »

高スポ執筆者

  • 荒木又三郎
    高スポ創刊者にして主筆。ACミランを愛する後天性フランス人。高スポ編集雑記に本音をぶちまける。
  • 三鷹牛蔵
    高スポの陰の支配者。湘南ベルマーレを愛する先天性ジャパニーズ。

姉妹ブログ


三鷹牛蔵twitter

無料ブログはココログ