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2010年6月26日 (土)

岡田ジャパンなんて存在しない~日本対デンマーク

 3戦全敗は必至ともいわれた岡田ジャパンが、まさかの決勝トーナメント進出を決めた。デンマーク戦の勝利は歴史に刻まれ、次の大会で指揮官が掲げるハードルはまた跳ね上がるのかもしれない。しかし、一つだけ確かなのは、我々がみているチームがこの間の集大成ではないことだ。岡ちゃんがつくったチームなんて、もうここにはない。


 決勝トーナメントに進出した岡田ジャパンの勝因のひとつは、土壇場で数々の問題点をクリアしたことにある。それを実現しているのは本田、松井、阿部の3人であり、そのことはまた、これまでのチームの過ちを証明するのに十分だろう。ついこの前まで、本田と松井は絶対のスタメンではなかったし、阿部に至っては完全なベンチ要員だったからだ。
 大会目前に行われた韓国戦において、我々はチームの抱える数々の欠点を改めて思い知らされたはずだった。5月末の原稿では、以下のように指摘したものである。

 ある意味、岡田ジャパンの抱える問題点がここまで明らかになる試合はこれまでなかった。この場で指摘してきた危惧の数々――①攻撃の軸となる選手(中村俊輔、遠藤)のプレースピードの遅さとフィジカルの脆さ、②それゆえにボランチに守備の負担を強いて攻撃参加を自重させる点、③カウンターの好機を生かせず、遅攻で満足してしまうこと、④スピードタイプに固執してポストプレー不在の攻撃、などを改めてさらけ出された感がある。1年前や半年前ならともかく、かような試合を本番目前に経験するというのは、あまりにも遅すぎたといわざるを得ない。(「岡ちゃんよ、12年前の想いを」

 攻撃の軸が本田、松井、大久保に移ったことは、今や誰の目にも明らかだ(というより、原則としてこの3人だけで攻撃しているわけだが)。中村俊輔の排除は、ボール保持者の遅さと脆さという課題を解決した。一方で、彼ら3人はサイドでの守備にも大いに貢献し、さらに阿部をアンカーに起用することによって、ボランチにかかっていた守備の負担を軽減した。結果として、リスクの高い遅攻という選択肢はなくなり、わずかではあるものの、遠藤、長谷部が上がれるチャンスも生まれている。そして前線の3人は、サポートの得られないポストプレーヤーのように機能し、中盤以下の体力の浪費を防いでいるといえよう。信じられないことに、岡田ジャパンは短期間で生まれ変わったのだ。

 ただ、すべての功績を岡田監督に帰するべきではない。本来、これほどの奇跡は起こり得ないし、起きるとしたらそれは、ここに至るまでの過ちがあまりにも大きかったことを示すものだ。今や欠かせない選手となっている阿部は、先月まで「使い勝手の良いベンチウォーマー」だったし、本田や松井にしてもこれまでは一貫して「中村俊輔との共存」を求められ、その前提でチームでの居場所を探していたはずである。だから、グループリーグでの彼らの活躍とチームへの貢献は、岡ちゃんにとって「想定外」でなければならない。「期待通り」というのなら、なぜ今までこうしなかったのかという謗りを受けるのはまぬがれまい。

 デンマーク戦の勝利は、大きな運がもたらしたものだ。直接FKから2点先取したのはもちろんだが、勝利を狙ったデンマークが先制を急いだのも大きい。彼らは、中盤でのプロテクトを怠って、序盤から日本に縦への楔を許しまくった。2点目となった遠藤のFKの位置を思い起こせば、そのことは明らかだろう。今大会では、多くのチームがあの位置でのFKを簡単に許すような守備はしていない。
 得点力不足の解消策として、「直接FKを得るために良い位置でファウルをもらう攻め方をすべき」とは、これまでも散々、指摘してきたことである。しかし、デンマーク戦で得た前半の2つのボーナスは、それを意図的にめざした結果、もたらされたものではないだろう。かような表現はあまり好みではないのだが、仮にサッカーの神様がいるとしたら、彼がボーナスを与えたかったのは岡ちゃんではなく、攻撃のセンスを発揮する場を与えられない本田と遠藤の2人だったに違いない。とはいえ、ソーレンセンを読みきった遠藤のFKは、幸運と表現するには申し訳ないほどの職人技だったと付け加えておきたい。

 もしグループリーグ3戦でのMVPを問われるなら、松井を推したい。チームのハードワークを最も軽減しているのは彼であり、フランスリーグでの経験が実を結んでいるのは間違いない。09~10シーズン、早々に2部降格を決めた所属チームにおいて、彼は同じ仕事を全うしてきたのだろう。味方のサポートが期待できないなか、それでも違いを生み出そうとする松井の粘りは、スコットランドでいい想いをしてきたどこかの10番には決して真似できないはずだ。カメルーン戦の決勝点にしても、得点した本田ではなくアシストした松井こそ、賞賛されるべきだと考える。だからこそ、オランダ戦の攻めなければならない時間帯でよりにもよってかの10番と交代させた指揮官の所業には、納得がいかない。

 何より、この日のデンマークの拙速さをもたらしたのは、日本が初戦でカメルーンを下した点が大きい。オランダ対カメルーンの結果によらず、彼らは勝利をねらうしかなかった。
 今大会のデンマークは、エースのトマソンと中盤の守備の要であるイエンセンが負傷を抱え、すべての試合においてベストな布陣で臨むことはできなかった。オランダに敗れた初戦では2人揃って使えなかったし、カメルーン戦では攻撃的な布陣を敷かぜるを得なかった。エースのトマソンを先発させた上でグロンケアとロンメダールを併用したのは、カメルーンに勝利した日本を最終的に上回るためだったろう。イエンセンは後半開始から出場したが、3戦目のスタメンには名を連ねることがなかった。彼の状態は知る由もないが、オルセン監督はセーフティに試合をコントロールするための布陣を選択できず、あえて先制して主導権を握ろうとするしかなかったのではあるまいか。この点からも、岡田ジャパンはツキまくっていたように思えてならない。

 パラグアイ戦に勝てるかどうかによらず、世間は「よく頑張った」とばかりに岡田ジャパンを誉めそやすのだろう。というか、日刊紙レベルではもうそうなっているのかもしれないが、ワタクシはそのような意見には与しない。日本は弱いし、それを自覚してこそのローリスクな戦術を敷き、しかも一生懸命「頑張って」いる。しかし、日本のすべてのサッカー人口の代表である彼らが、「頑張る」のは当たり前のことだろう。そんなことを褒めるのはむしろ、プロフェッショナルである彼らには失礼だ。
 みてきたように、岡田ジャパンの好成績は幾多の幸運によって導かれた結果である。内紛を抱えたカメルーンは草サッカーに集まったかのようだったし、中心選手が負傷を抱えるデンマークはベストを尽くせたとは言いがたい。オランダ戦だって、ロッベンが出てきていたら0-1のスコアで済んでいたかどうかは疑問だ。
 しかし、これらにも増して幸運だったのは、日本がこの期に及んで不要な中心選手を効果的に排除できたことにあろう。岡ちゃんは、これまでの3戦すべてにおいて同じメンバーをスタメンとして送り出しているが、1年前、いや半年前でもいい、彼ら11人の先発を予想できた人間がいただろうか。
 我々が目にしているのは、この4年間の集大成などではない。今、必要なのはその点を自覚することで、そうでなければ今後も何も変わらないだろう。もっとも、現在のチームの姿が日本の理想だというのなら、仕方がないが。

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  • 荒木又三郎
    高スポ創刊者にして主筆。ACミランを愛する後天性フランス人。高スポ編集雑記に本音をぶちまける。
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