« 前近代的ギリシャに攻め手なし~韓国対ギリシャ | トップページ | メッシは世界最高の10番か?~アルゼンチン対ナイジェリア »

2010年6月13日 (日)

知将にも荷が重いか~イングランド対アメリカ

 初めてW杯に臨んだカペッロは、思いもよらぬ果敢さをみせた。前半31分にショーン・ライト・フィリップス(以下、SWP)を投入し、相手の攻撃に遅れをとっていた左サイドで主導権を握り返す。痛恨だったのはGKグリーンのファンブルで、攻めあぐねていた感の強いアメリカに同点ゴールを献上してしまう。結局、混戦には持ち込んだものの再び突き放すことはかなわなかった。思えば、キングの負傷により後半開始の段階で2枚目のカードを使わざるを得なかったのが誤算であり、最後のカードをクラウチの投入に使わざるを得ないあたりが、今のイングランドの限界だ。一部のメディアはイングランドを優勝候補に挙げているが、この戦いぶりでは先が思いやられるといわざるを得ない。

 後半開始の段階で交代枠を1つしか残さないのは、あまりに潔い采配と思ってみていたのだが、どうやらキングの交代は負傷によるものだったらしい。とはいえ、前半の半ばにドリブラーであるSWPを投入するのは、十分に早い見極めだったといえるだろう。
 序盤のイングランドは、長身のへスキーへ単純にボールを放り込むという無理のない戦術を展開していたが、アメリカはその勤勉さをもって徐々に主導権を握り始める。ゲームメーカーのドノバンが右サイドへ流れ、攻撃的SBチェルンドロのオーバーラップを引き出す場面が増えていき、イングランドの左サイドは押し込まれる格好になった。武器の一つである左SBのコールが生かせず、終いにはミルナーがイエローカードをもらうに至って、カペッロは痺れを切らしたのかもしれない。
 アメリカにとってもイングランドにとっても、攻撃に厚みをもたらすためにはこちらのSBのオーバーラップこそが鍵となる。守備面を考えるならSWPの能力はミルナーを上回るものではなく、押し込んで主導権を握る意図だったと考えた方が素直だろう。「このサイドで負けては全体のバランスを欠く」という判断はわからなくもないし、実際、交代が功を奏して後半はチェルンドロのオーバーラップが抑制され、ドノバンも左サイドに張り付くように――。アメリカがチーム戦術を発揮できなくなってゲームは混戦ムードに変わったし、個人の能力差が際立つ展開はイングランドの望むところだった。ただ、選手たちが自らでプレーを修正できず、こうした“梃入れ”を必要とするあたりが、現在のイングランドの限界に思えてならない。
 今にして思えば、キングの交代がカペッロから采配の自由を奪ったことこそ、彼らが勝ちきれなかった最大の理由だろう。交代枠が2つ残っていれば、早めにジョー・コールやバリーを入れる選択もあったし、キャリックに中央を託してジェラードをサイドないし前に出すこともできたはず。残り10分まで待って、「長身なだけで必ずしもヘディングの上手くないクラウチ」を送り出さざるを得なかったことには、カペッロも口惜しさを感じているに違いない。
 終了直後に引き分けを喜んだアメリカには、違和感を覚えた。彼らはコンフェデでスペインを倒して準優勝しているのであり、むしろイングランドよりよほど優勝候補の名に相応しいはず。試合展開からしても十分に勝てる試合だったと思う。選手たちの意識がプレミアリーグでの序列に甘んじているとしたら、上位進出は望めない。個人的には、韓国やアメリカのように労を惜しまないチームがサプライズを起こすのを期待しているのだが。

« 前近代的ギリシャに攻め手なし~韓国対ギリシャ | トップページ | メッシは世界最高の10番か?~アルゼンチン対ナイジェリア »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 知将にも荷が重いか~イングランド対アメリカ:

« 前近代的ギリシャに攻め手なし~韓国対ギリシャ | トップページ | メッシは世界最高の10番か?~アルゼンチン対ナイジェリア »

高スポ執筆者

  • 荒木又三郎
    高スポ創刊者にして主筆。ACミランを愛する後天性フランス人。高スポ編集雑記に本音をぶちまける。
  • 三鷹牛蔵
    高スポの陰の支配者。湘南ベルマーレを愛する先天性ジャパニーズ。

姉妹ブログ


三鷹牛蔵twitter

無料ブログはココログ