清水の完璧な攻撃を防げたか?
シーズン前に想定していた大敗はこういう形だった。点を取るけどもっと取られる。別に1994年をなぞるということではない。2009年のストロングポイントを試し、弱点を的確に突かれた結果としての大敗という意味でだ。
(2010年8日1日 湘南ベルマーレ3―6清水エスパルス 平塚競技場)
エメルソンが高い位置でボールをキープし、時に突破を見せることが湘南にとってはストロングポイントになっていた。それと引換えに失ったのは、サイドに2人を配する守備だ。エメルソンは反対サイドの阿部吉朗ほどには守備に戻らないので、SB(主に臼井幸平)が相手の攻勢にさらされ、あるいはアーリークロスを入れられ、ミドルシュートを撃たれていた。J2であれば中央で跳ね返せばよいという割り切りも可能だが、J1上位相手ではそうも言っていられない。
以上のことは、エメルソンをアジエルに置き換えても全く同じことが言える。そう、2009年からわかっていた、予想できていた課題だ。
その点、ハーフタイムの反町コメント「最終ラインが深いのでコンパクトエリアをつくること」というのは、難しいことを言っているように思う。1年半にわたって最終ラインは常に低い位置にあったので、急に変えるのはハードルが高いように思える。CBコンビがJ2時代のように磐石ではないことから求められる宗旨替えなのだろうか。
CBコンビ(+アンカーの田村雄三)の跳ね返し力とともに、2009年のストロングポイントであったFW田原豊のボールキープも、J1上位相手では長所足りえていない。そのように個人能力をストロングポイントとすることが困難であることから、集団としてそれを作り出そうというのが、フィールドプレーヤー9人で自陣を埋める守備である。そうするとワントップは孤立しがちで、ますますもってボールキープは難しくなる。
田原に代わって先発起用されている194cmの長身FWヴァウドは、そうした悪循環を断ち切ることが期待されているのだが、そうはなっていない。というより、チームオーダーと彼の特長がミスマッチなのではないかという疑いもある。あれだけサイドに流れて中央を空けるというのは、その中央を突く選手がいることが前提なのであって、ポゼッションで劣勢な湘南とは正反対だ。まあ、それ以前に、この日のように苦しんで奪ったボールを前線に送ったときに、あっさりと戻りオフサイドを取られるようではお話にならないのだけど。
余談になってしまった。
当初私が思い描いていたのは、昇格の勢いを駆ってJ1に挑み、通用するところ・通用しないところを見極めながら修正するシーズンだった。その過程で喫する大敗のイメージが今日のようなゲームだ。ところが、アジエルがいなかったことで、そのプロセスを経ることなく「ワントップ以外守備」の布陣に移行せざるをえなかったわけだ。それは私には歪だと思えていたので、遅きに失したとはいえ、J1の洗礼を浴びつつ一太刀浴びせるようなゲームを経過したことに意義があると思うのだ。
実際、今日の清水はそれにふさわしい相手だった。
反町がどういうミーティングをしたのかは知らないが、現実問題として絞りどころはなかっただろう。サイドからのクロスも防がなければならないし、中盤からのミドルシュートも脅威だし、ヨンセン・岡崎のポストプレーにも手を焼く。どう止めろってんだ? 湘南の対応が不十分だからこそそれらが引き出されたともいえるが、それを割り引いても清水の攻撃陣は完璧だった。先制して清水のDF陣に精神攻撃を加えられれば、可能性が生じたかもしれないが。
清水の長谷川健太監督は、聞かれもしないのに「アントラーズとは違う」と述べたが、それは同感。あれだけリードしているのに、ゴールを奪われるとイライラして平静を失う(ボールを奪い合って小競り合いで倒されたと元気一杯にアピールした後で寝転んで駄々をこねたり、ゴールに入ったボールをコーナーフラッグ方向に蹴り出したり)のを見ると、優勝争いをしているチームとは思えなかった。
【キャプテンマーク予想ゲーム】
2巡目はジャーン→坂本→寺川→田村→阿部ときた。次は誰だろう? 都築か?
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