世界の得点王とアシスト王を見てきた
メッシじゃないよ。大神雄子と吉田亜沙美だ。先週まで行われていた世界選手権で得点王になった大神と、アシスト王になった吉田だ。日本人がバスケの世界大会で得点王になる日が来るなんて、思ってもいなかった。水曜日にチェコから帰国して金曜日にはリーグ開幕戦。この凱旋試合には行かないと。
(2010年10日8日 シャンソンVマジック64―65JXサンフラワーズ 国立代々木競技場第2体育館)
大神雄子が得点王(1試合当たり19.1点)になったのは、本人も認めているようにプレイタイムの長さが原因の一つだ。1試合平均36.9分は全出場選手中1位だ。優勝したアメリカでは最長の選手でさえ22.4分、20分を超えた選手は2人しかいない。
このことは日本の課題とチーム編成の失敗を端的に表しているのだが、だからといって得点王の価値を貶めるものではない。総得点で大神を上回る選手は1人だけだ(大神は153点、スペインの選手は159点。ただし日本より1試合多い)。守備では、チーム事情もあって常に自分より10~20cm大きな選手を相手にしていたし、攻撃では試合終盤の勝負どころでエースの仕事を任されていた。堂々たるプレーだった。
吉田亜沙美のアシスト王は、まあなんというか、価値を否定するわけじゃないが関心が湧かない。吉田も大神と同じ出場時間で、つまり2人そろって全出場選手中1位のプレイタイムだった(繰り返すが、チーム編成の失敗を表している)し、コンビを組む大神が得点王である以上、吉田のアシストが増えるのは自明である。
吉田に関しては、アシストよりもリバウンドで5位(1試合平均8.1)ということを評価している。ランキング上位10人のうち、吉田を除く9人は190cm以上の長身選手である。その中にあって170cm(FIBAサイトによる。国内での登録は165cm)の吉田がランクインしているのは驚異的だし、ものすごく価値がある。背の低い選手にリバウンドを取られるのって、相手にとっては精神的に効くものだ。私にはよくわかる(泣)。自分より長身の選手の後ろから飛んで掴み取るシーンもあったように身体能力の高さが窺えるが、オフェンスリバウンドも結構取っているわけで、ポジショニングの上手さも見逃せない。
2人を祝福する簡単なセレモニーに辛うじて間に合ったのだが、それよりもコートが新ルールのものになっていることのほうが目を引いた。ペイントエリアが長方形だし、3ポイントラインが遠くなっている。
新ルールは2011年4月から採用されるはずだが。。。。帰宅後に男子のJBLの映像を確認してみると確かにどの試合も新ルールのコートになっている。JBLのサイトによると、競技ルールは「国際バスケットボール連盟(FIBA)の競技規則を採用する」とのことだが、新ルールを先行して採用するということは書いていない。WJBLのサイトには特に記載がない。
各チームに通達が行っているのであればよいのかもしれないが、そうなのか? それに、つい1週間前の世界選手権は現ルールで行われていた。代表選手はアジャストするのが大変ですね。
JXは、注目の大神・吉田、それにC諏訪も先発して代表選手そろい踏み。直前にメンバーを外れた間宮も含めて4人が代表クラスだ。ベンチにはベテランC山田がいるし、注目のルーキー渡嘉敷もいる。選手にサイズがあり、試合運びにもディフェンディングチャンピオンの雰囲気が漂う。無理はしないで淡々と進める感じ。
渡嘉敷については、確かにこれは期待する人の気持ちがわかる。191cmとのことだが、攻守いずれもゴール下にいるだけで威力バツグンだ。フリースローが上手なのも好材料。相手を背負ったポストプレーが見られなかった(ボールが入らなかった)ので判断しきれないが、ある程度の戦力になるのは間違いないだろう。ただし、日本代表チームでの期待値を考えると課題はある。日本代表チームには攻守の切り替えの早さが必須だということを示したのが今大会で、それに高さを加えることが期待されるわけで、渡嘉敷にはトランジションについていくだけでなく、速攻の先頭を走る走力が求められるだろう。
この日の大神は8得点と、数字は大したことがないが、4Qのラスト3分辺りからエースの仕事を見せつけた。ドリブルで切れ込んでレイアップを決め、さらにシュートチェックをもろともしないジャンプショットを決めて、残り24秒で2点のリードを奪う。シャンソンが同点に追いつくと、残り8秒からドライブしてファウル(フリースロー)を得る。残り2秒。ここでフリースローの1本目を決めてリードを奪うと、2本目は「きちんと外し」、試合を終わらせた。
シャンソンは、要所要所で3ポイントシュートを決めて追いすがった。まあ、3ポイントシュートに関しては、JXが新ルールに対応していなかったようにも見えたのだが。
3Qの終わり頃に大神が0度からリズムよく放ったシュート(外れた)は、本人的には3ポイントの感覚だったのではないだろうか。それはともかくとしても、JXは3ポイントシュートを6本しか放っていないし、しかも1本も決められなかった。内海亮子の不在が響いたのかもしれないが。それに対し、シャンソンは19本中7本を決めた。
シャンソン所属の代表選手・藤吉は6thマン的な起用をされた。緩急をつけたドリブルでペネトレイトしたり、マッチアップの兼ね合いからかボール運びに関与したりしていた。ポジションレスな感じのプレーで、ピッペン風? とか思った。世界選手権では短い出場時間で流れに乗り切れないでいたが、この日は堂々とした振る舞いで立ち姿も別人のようだった。まあフィールドゴールが欲しかったのだが。
最も共感したのは塚野。ペイントエリアで自分より背が高く幅のあるJXのフロント陣とマッチアップしながらも、「前に入るディフェンス」で対応してパスコースを限定していた。もちろん、完璧に相手を封じることは出来ていなかったし、ラストの大神へのファウルという痛恨のプレーもあった。それでも出来るだけのことをしていたと思う(もしかしたら過小評価なのかもしれないが)。
全体として、シャンソンは挑戦者らしいプレーが多く、好感を持った。3ポイントだけが武器というわけではなく、JXの長身フロント陣を向こうに回して果敢にポストアップして勝負していたし、ドライブして長身選手達をかき分けてゴールに向かう場面も多かった。
ライブで女子バスケを見るのは随分久しぶりなのだが、見応えが増したと感じた。機会があればまた観戦しようと思う。いや、だ、だ、断じて藤吉佐緒里の追っかけではない! ま、そう思いたければ思ってもらっても結構だがね。……このような軽口は不謹慎だと思わせるほど、シャンソンは真摯な挑戦者のバスケでした。
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