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2011年2月27日 (日)

ティム・ダンカンは優勝リングを増やせるか

 4月には35歳になるティム・ダンカンにとって最後のチャンスが訪れている。“新ビッグ3”を擁するマイアミ・ヒート、名将フィル・ジャクソンのラストシーズンを飾りたい王者・レイカーズなど、本命視された各チームを尻目にサンアントニオ・スパーズが突っ走っている。全30チームの中で唯一8割を大きく上回る勝率でトップをひた走る出来過ぎのシーズン前半であるが、スパーズファンである私は不安を募らせている。

 サンアントニオ・スパーズはもはや下り坂にあると思われていた。過去2シーズンのプレーオフではレイカーズへの挑戦権すら得られずに敗退しているし、ダンカンをはじめとする主力選手の高齢化も目につく。2009-10シーズンに加入して期待されていたリチャード・ジェファーソンは(ルーキーシーズンを除けば)キャリア最低の成績に終わった。シーズンオフの補強にも派手さはなく、中心的な顔ぶれに変化はなかった。
 にもかかわらず、この快進撃だ。

 今季の復調に関してはすでに各所で分析されているが、ピックアップしておく。
 まず何と言っても大きな怪我人がいない。そのために、各選手のプレータイムを厳重に管理している。ダンカンはもちろん、ジノビリも、パーカーですら「出しすぎない」ようにしている。40分以上出場した試合はパーカーが3試合、ジノビリが1試合あるだけだ。
 それとリンクして、脇役選手の充実が挙げられる。ジョージ・ヒルはいつでもパーカーに取って代われる雰囲気だし、2年目のジュアン・ブレアは先発メンバーに定着しているし、ゲイリー・ニールやマット・ボナーの3Pは安定している。
 コストのことを考えれば、リチャード・ジェファーソンに触れねばなるまい。ショット数、平均得点ともに昨シーズンすら下回っているが、3ポイントシュートを撃つ本数は昨シーズンの通算をすでに超えており、成功率はキャリアで初めて40%を超えそうだ(現時点で43%)。本領発揮と言ってしまっては彼に失礼だが、このチームでの役割を果たしている。

 こうした好調要因はしかし、不安要因と表裏一体だ。
 プレータイムを制限してリスクを抑えたとしても、怪我を完全に避けることは不可能だ。そして脇役選手がプレーオフでも同じように活躍できるかは予測が難しい。そもそもプレータイムが減る可能性が高い。プレーオフを勝ち進むためには、最終的には中心選手、とりわけエースの力が重要になるわけで、その意味では不安が大きい。
 そもそも今季のスパーズのエースは誰なのか。昨シーズンまでは明らかにダンカンがエースだったのだが、今季は違う。明らかにダンカンのシュート数が減っており、「力をセーブしている」というだけでは説明がつかないほどだ。「ダンカン1人エース体制」には限界がきたという判断で、名実ともに「エース3人体制」に移行しようというのだろう。そこに不安がある。エースを固定しない戦い方は、理想像としては理解できるが、現実問題としてプレーオフには向いていないと思う。
 要するに、私が抱く不安の原因は1994-95シーズンのトラウマだ。62勝20敗のシーズン最高勝率で、提督ロビンソンがシーズンMVPになりながら、プレーオフではロケッツに敗れたあのシーズンの記憶だ。ロビンソンが絶対的なエースだったあのシーズンと今シーズンでは事情が違うが、「レギュラーシーズン横綱」なんじゃないかという恐れは同じだ。

 対戦相手に目を向けると、スパーズにとってライバルになるのは、昨季まで2連覇を果たしているレイカーズだ。私はいまだに本命はレイカーズだと思う。レイカーズはここまで調子が上がっていないが、オールスター明けに復調しさえすれば、レギュラーシーズンの成績にかかわらず本命に躍り出るだろう。ここまでの不調と好転への期待度は、スパーズとポジ・ネガの関係にさえ見える。そして、1995年のロケッツがまさにそうだった。プレーオフに入れば本来の能力を発揮する。
 何しろレイカーズには、コービー・ブライアントという絶対的なエースがいる。ああそうだ。ロケッツにはオラジュワンがいた。……95年の話はもうやめよう。
 さらに具体的に考えると、フロントコート陣の安泰ぶりも挙げられる。パウ・ガソルとアンドリュー・バイナムのツインタワーに、ベンチから現れるラマ―・オドムという顔ぶれだ。バイナムがピリッとしないでいるが、彼が梅雨明けすれば止めようがない。対するスパーズはダンカンを中心にして、ブレア、アントニオ・マクダイスという顔ぶれ。ちょっと盤石感が足りない。
 バックコート陣はスパーズに分があるとは思うが、私はちょっと信じきれない。特にジェファーソン、ボナー、ニールの長距離砲はプレーオフの激しい守備を相手にして命中率を維持できるのだろうか。

 悲観的な材料ばかりが思い浮かぶのだが、しかし私はスパーズの、ダンカンの勝利を願っている。
 スパーズは、あらゆるスポーツチームの模範になりうるのではないか。ダンカンやロビンソンという大黒柱を得られたのは幸運の賜物だが、その幸運を最大限に生かし、彼らに愛想を尽かされるようなことはしない。プレーオフ出場権を逃さない強豪チームゆえに上位指名権のないドラフトにおいても、全体57位でジノビリ、28位でパーカーを指名してきた。ドラフト戦術も巧みで、ジェファーソンを獲得するための代償が引退目前のブルース・ボーエン、カート・トーマス、ファブリシオ・オベルトだ。巨額の資金を要する大物FA選手には手を出さない。

 そして、ダンカンは本当に素晴らしい、称賛されるべき選手だ。たとえエースの座から降りたとしてもその評価は揺るがない。基本に忠実で、言い換えれば地味なプレーぶりであるだけに、彼の偉大さは表現しづらい。映像を見ても華やかさに欠けるのは否めないし、スタッツ的にも派手さがないし…。
 ティム・ダンカンは「チームメイトに欲しい選手No.1」だ。この説明が一番しっくりくる。勝負所、チームが苦しいときに本当に頼りにできる選手だ。エースでありながらリバウンドやスクリーンといった地味な仕事にも全力を尽くす。単なるポイントゲッターではなく、自分がシュートを撃てないとヘソを曲げるような選手ではないから、どんな選手とも共存できる。ポジションの近い選手同士の組合せは、えてしてお互いの良さを消してしまうことになるが、センターでもパワーフォワードでも機能するダンカンにはそういう心配もない。ロビンソンとのツインタワーは言うに及ばず、シャックと2人でオールスターのMVPを獲得したこともある。チャールズ・バークレーやカール・マローンとだってうまくやれただろう。
 そうした意味合いでいえば、ダンカンに比肩しうる現役選手は、ケヴィン・ガーネットやパウ・ガソルあたりだろう。ここにティアゴ・スプリッターを並べられればスパーズファンとしては言うことがないのだが、まだまだ時間がかかりそうな感じだ。ジノビリのように、1年目のプレーオフでブレイクしてくれると悲観する必要がなくなるんだけどな。

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  • 荒木又三郎
    高スポ創刊者にして主筆。ACミランを愛する後天性フランス人。高スポ編集雑記に本音をぶちまける。
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