スポーツ界の日程回復問題――やっぱり野球は特別ですね!
東北地方太平洋沖地震がもたらした惨禍には言葉を失う。地域こそ違えど海のそばに住む親戚もいる者としては、他人事ではない。そうはいっても、すでに私は日常に回帰している。誰もが時期の早い遅いはあっても、日常生活に戻り、スポーツに一喜一憂する日が戻ってくる。
というわけで、スポーツ界の日程回復問題について概観してみた。
やっぱり野球は特別ですね! いや、もちろん「特別であるべき」ということではない。
23日から選抜高校野球大会が始まるのだが、これはかなり特異である。プロ野球の開幕日程に関連して「(プロ野球の)開幕は遅らせた方がいいと思う。高校野球とは違い、プロ野球は興行という面があるので」というような意見をけっこう目にしたが、そういう意見を述べた人々が考えるほど、選抜高校野球大会の開催は自明のことではない。
高体連のホームページを見ればわかるが、3月下旬に予定されていた高校生の「選抜等大会」は軒並み中止されている。25競技中、開催されるのは1競技だけである。北海道富良野市で開催されていた第23回全国高等学校選抜スキー大会は日程の途中で中止されたし、関西以西で開催される多くの大会も中止が決まった。高体連傘下で唯一開催される第33回全国選抜高校テニス大会も、個人戦は中止されて団体戦のみになり、東陵高校(宮城県気仙沼市)と日大東北高校(福島市)は出場を辞退している。
こうした中で、野球だけがほぼいつも通りに開催される。
「一生に一度かもしれない選手たちの機会をなくしたくない。高校球児の真剣なプレーが被災地の方々のみならず、全国の人々の一筋の光となるのではないか」
という開催理由も、他の競技の高校生に対しては特に説得力を持つものではない。
ここまで批判的なトーンで書いてきたが、実のところ、開催自体をとやかく言おうとは思っていない。
結局のところ、個々の大会主催者がそれぞれに置かれた事情を考慮して、レギュレーションを変更するなり、開催方法を工夫するなどして、可能な限り開催すればよいと思う。
その意味では、高校野球の「入場行進取りやめ、ブラスバンドや鳴り物、チアリーダーのボンボンを禁止」という措置は、なんだかアリバイ的な言い訳がましさを感じさせる。後ろめたいと思っているのなら大会そのものをやめちまえばいい。大会自体がすでに華やかな晴れ舞台なのに、枝葉の華やかさを取り除こうとすることに何の意味があるのだろうか。高校生たちの元気な姿が全国の人々の一筋の光になるというのが開催の意義だと思うのだが。
さて、プロ野球について。
もちろん、東京ドームでナイター開催など馬鹿げていると思うし、「監督官庁に怒られたら止めるよ。テヘ」とかいう子供じみた態度も腹立たしいのであるが、開催自体にはあまり違和感がない。事情の許す範囲で開催すればよいのであって、本拠地に大きな被害のないセ・リーグは開幕できるという考え方も間違っていないと思う。
いずれにしても、プロ野球は1シーズンで100試合以上をこなし、平日でも連日試合を行うという点で他のスポーツとは異なる特別な存在である。そして、試合をしなければ収益があげられない興行団体であるわけで、なるべく早い平常化を目指すのは当然だ。
その意味では、この週末にリーグ戦を再開したbjリーグの判断も批判しようとは思えない。bjリーグは、仙台、さいたま、東京の3チームの今季の活動を終了しながら他のチームはリーグ戦を続行するという変則的な形であるが、試合をしなければ収入が途絶えてしまうことを考えれば、やむをえないのだろう。
同じバスケットボールでもJBLやWJBLは今季の残り日程をすべて中止としたのだが、その潔すぎる決定の背後には、親会社からの資金で成り立っている実業団リーグという事情があろう(プロチームであるリンク栃木ブレックスは苦しいはず)。
それぞれの事情に基づいて判断すればよいというのは、そういうことだ。
Jリーグはハードルが高い部類に属す。昇格・降格のあるリーグであるから、仙台と水戸と鹿島と栃木を抜かしてリーグ戦を始めるというbjリーグ方式は論外だし、それだけでなく被災地のチームが著しく不利になるような状況での再開もできない(多少であれば目をつむることになるだろう。新潟のときのように)。
ともかく、できるだけ早く各スポーツ大会が開催できるように、多くの人々の生活が日常化することを祈念するばかりだ。
ベルマーレを応援している私ができる被災地への支援としては、ユアスタや、ケーズスタや、カシマサッカースタジアムや、栃木グリーンスタジアムのアウェイゲームに行ってお金を落とす(代わりに勝点はもらう)ことがある。リーグ戦が再開したら、それを実行しようと思うのだが、そういえば今年は仙台や鹿島との対戦はないのであった。ぐぬぬぬぬ。悔しい。
« 佐々木竜太の存在感が際立った開幕戦 | トップページ | 志高く前のめりに突き進むのが湘南の新目標 »
コメント