湘南の「青春サッカー」は快進撃を続けるか
開幕から4連勝を果たした湘南ベルマーレであるが、若い選手たちが躍動している試合内容は実に魅力的である。この10年ほど模索してきた、「青春」を感じさせるサッカーが実現したような感じを受ける。
(2012年3日20日 湘南ベルマーレ2―1FC岐阜 ShonanBMWスタジアム平塚)
もちろん、選手の平均年齢の低さや全選手の運動量が前面に出ているのは確かだ。ボールを失うと即座に近くの選手がプレッシャーをかけにいき、高い位置でボールを奪い返すと一気に人数をかけてゴール前に攻め込む。小気味よい、という表現がマッチする。
そのことは十分わかっているが、それを踏まえたうえで、今の湘南を語るキーワードは均質性かなと思う。運動量、走力に限らず、フィールドプレーヤー全員が同じようにボールを扱えることが大きい。そのためポジションにあまりとらわれないサッカーを実現できている。
ボールに近い者から順にプレスに向かうということは述べたが、そのほかにも、速攻の場面でチャンスと見れば3バックの選手であっても躊躇なく前線に駆け上がるし、WBの選手が平気で逆サイドまでクロスしていく。そもそも最前線は1トップというよりは「ゼロトップ」の動きをしているので、こうした選手たちの行動は織り込まれているものだ。
一言でいえば、全員がヒーローになる可能性をもったサッカーである。絶対的な選手がいて、それを生かすために周りが下僕になるようなスタイルとは真逆である。もちろん、局面によってチームメイトを生かすための動きはあるのだけれど、それが特定の選手のためだけに行われるのではなく、「生かし、生かされ」の相互関係が張り巡らされている。
全員が走りまくって誰かがヒーローになる、というといわゆる「部活サッカー」が想起されやすいのだが、ちょっとニュアンスが違う。私が湘南サポだからネガティブ色の着いたその言葉を使いたくない、ということもあるけれど、それだけではない。
全員が一定レベルのスキルを持っているのがその理由だろう。やってることは部活っぽいが、スキルが伴うのでキラキラ感がある。青春っぽいサッカーだと思うのだよね。
さて、この日のゲームについて。
運動量がカギになるサッカーであるので、連戦や夏場に弱いのではないかという懸念があるのだが、それを実証したような試合になった。先制するまでは良い内容だったが、その後はペースをつかめずに苦しい内容だった。
全体的に運動量や動き出しの鋭さが不足していたと思うが、DFラインの押し上げが鈍いように見えたのが一番気がかりだ。前線との間隔が広く、ボランチの周辺にスペースが広がっていた。
その原因がどこにあるのかは、イマイチはっきりしない。岐阜が前線に長身のターゲットを置いたからジリジリと下げられたと思えなくもないが、どうだろう。
ただ、いずれにしても今後は湘南の「均質性」の泣き所が突かれることになろう。同じような身長の選手ばかりなので高い選手を使ってくるチームもあるだろうし、自陣に引いてカッチリ守備ブロックを作ることで「個の突破力の欠如」をあぶりだそうとするチームもあるだろう。
そういった課題に直面することは初めからわかっている。だからそういう障害に直面してからが本当の勝負の始まりなのだろう。あのキラキラした青春サッカーが障害を乗り越えるのを見るのは楽しみだ。
« 2012年のJ2を予想 | トップページ | 今さら2011全日本フィギュア観覧記 »
コメント